雲仙温泉「上質化計画」 景観改善へ新年度から本格始動

むき出しのままの配管=雲仙市、雲仙温泉街

 雲仙市の雲仙温泉街の魅力を高める環境省の「雲仙天草国立公園雲仙温泉集団施設地区上質化計画」が新年度、本格始動する。本年度から5カ年の計画で、雲仙地獄内の源泉から引かれた配管の撤去や整理、老朽化した休憩所の改修、公園の整備などが柱。国や県、市、民間の計約10事業からなり、総事業費は約7億6500万円を見込む。ハード、ソフト両面から景観を整え、観光地としての魅力アップにつなげたい考えだ。
 各旅館や温泉施設に供給する源泉が至る所に湧く雲仙地獄。多くの旅行客が訪れる観光スポットだが、源泉と施設を結ぶ配管は長年、むき出しの状態で地獄内に張り巡らされている。市によると、源泉や配管の数について過去に調査した記録はなく、中には使われなくなったまま放置されている配管もあるという。
 市は、2020年度中に全体の調査に着手。21年度からは、調査結果を基に配管の集約、整理ができないか各施設と協議して撤去工事に入りたい考え。地獄内にある老朽化した休憩所の改修、撤去も進め、景観改善を図っていく。
 地獄の整備と並行し、県は国の委託で、温泉街にある二つの公園を整備する。小高い丘にあり、荒れ地状態だった児童公園は展望所として改修。中心部にあるけやき広場は、旅行者や市民の周遊拠点として生まれ変わる。いずれも20年度中の着工を目指す。その後は、多言語の案内板設置なども進める計画だ。
 同温泉街では市や県、国、民間が一体となった観光戦略策定の真っただ中。ハード整備をどう生かしていくかも重要なテーマで、上質化計画の方向性を握る。まち歩きなどアクティビティーの充実や発信力強化など、ソフト面を含めて21年度までに戦略を定め、未来像を描く方針。同省雲仙自然保護官事務所は「地元や民間と協力しながら景観改善を図り、地域振興策を探っていきたい」としている。

長年放置されたままの児童公園

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