菊地栄一×川村光大郎 クリエーターズクロストーク【ヴァルケインfeat川村光大郎編】

ヴァルケイン代表・菊地栄一。ボトムアップ代表・川村光大郎。エリアトラウトとブラックバス。魚種の壁に阻まれて、今まで接点がなかった2人は、偶然にも同世代。モノ作りに対する熱い思い、魚釣りに対する情熱。こだわり強め…という同周波数を有する2人のクロストークが炸裂! この前編は、バス釣りをフィールドとする川村光大郎さんが、菊地栄一さん率いるヴァルケインプロダクトに迫る!

【Profile】
菊池栄一(きくち・えいいち)
ヴァルケイン代表。エリアシーンのトップを突っ走るエリアトラウトメーカー・ヴァルケインをゼロから作り上げた、業界のレジェンド。栃木県と静岡県にて『アルクスポンド』という、大人気エリアの運営も行っている。こだわり強めのタックルクリエイターとしても支持されている。

【Profile】
川村光大郎(かわむら・こうたろう)
ボトムアップ代表。情熱のすべてをバスフィッシングにささげる、岸釣りのスペシャリスト。独創的な釣りスタイルもさることながら、作りあげるルアーやフィッシングギアも唯一無二の存在感を放つ。作るからには「今までにないアクション」&「他との明確な違い」を追及。妥協なきモノ作りの信者も多い。

菊地「エリアトラウトの主流はスプーンとハードプラグです。最初にスプーンで表層〜ボトムまでを探って、反応が強いレンジをざっくり把握します。スプーンは着水と同時に沈下が始まります。 つまり、一定のレンジを巻くためには最低限の速度が必要。ですが、状況は次第にスロー方向へ傾きます」

例えば、同じカウント5のレンジで釣れている場合、そのレンジを次第にスローに攻めます。次第に軽いウエイトのスプーンで通すことになります。そして、スプーンではもうこれ以上スローに引けない、となった時にハードプラグの浮力を利用して、さらにスローに引きます。

川村「クランクの方がスローに引ける分、フォローベイトのような役割で使うことが多いのですか?」

菊地「まさに、その通りです」

川村「そのあたりの感覚はバスとは違いますね」

菊地「エリアに求められるのはスローで巻いても、より強く動くこと。元々ウォブリングが強いクランクでも、低速にしたらロール寄りになることが多いですよね。でも自分が求めるのは、ウォブリングの場合、低速になってもゆっくりのウォブリングで泳いでくれること。バスのクランクとは求める要素が違いますよね」

川村「確かにそうですね」

ヴァルケインを代表するルアーたち。ひとつずつ目の前のプールで動きを確認する。

菊地「コレがクーガというウチ(ヴァルケイン)の主力クランクです。攻略レンジは60cmくらい。ちょっと泳がせてみますね(菊地さんがプールでルアーを泳がせる)」

川村「コレは凄い! 確かに低速になっても、動きの質は変わらないですね。普通はここまで低速になると動きは弱くなりますよね」

クーガ(ヴァルケイン): 低速でも安定したワイドウォブリングでトラウトを惹きつける。既存のクランクベイトの常識の枠を突破した、ヴァルケインを代表するクランクベイト。現在では、エリアクランクの指針となる存在感を放つ。

菊地「クランクの特性として、低速になるとロールが入るのが普通ですよね。でも、その普通をなんとか突破して作りました(笑)。低速でも可能な限りアピールを落とさない。それがエリアクランクに求められる条件です」

川村「巻き速度の感覚がバスとは違いますね。エリアで言う速めのリトリーブが、バスで言うスローの印象です。つまりは、バスで言う、超デッドスローでも、アクションを落とさず…という認識ですよね」

菊地「エリアのファストリトリーブが平均すると、ハンドル1回転1秒程度だとすると、エリアのデッドスローはハンドル1回転6秒くらい。それでもしっかり動いてくれるクランクが重要です。ちなみにクーガのボディはミノーなんです」

川村「あ〜、確かに。クランクとしては細身ですね。ミノーにワイドリップが付いている感じ」

菊地「そうなんです。それで動きの振り幅を出しています」

捕食か? リアクションか? バイトに至るメカニズム

川村「そもそも、トラウトはどういう要素でバイトするんですか? 捕食ですか? リアクションですか?」

菊地「両方です」

川村「バスとも通じますね」

菊地「ただし、完全なるフィッシュイーターではありません。雑食の捕食とリアクションです。バスは吸い込み系ですよね。でもニジマスは、くわえて持って行きます。ニジマスは基本的には直線的に泳いでいるモノにバイトする傾向が強いです。でも、イワナやブラウントラウトはミノーのランダムな動きで、リアクションで食わせることが多いです。ヤマメはその両方です」

川村「なるほど。ニジマスは一定のリズムで泳ぎ続けて、デッドスローでもある程度パワフルに泳いでくれる。そんなルアーが好きなんですね。イワナは確かにルアーの後ろを首振って追ってきますね。あの光景には野生を感じます」

お互いが開発した、ルアーアクションを確認し合う2人。魚種こそ違うが、学ぶべき点は多い。

菊地「一方、ニジマスをミノーで釣ろうと思ったら、少し難しいです。ニジマスはダートしない直線的な動きの方が釣りやすいです」

川村「魚種によって違うんですね」

菊地「ちなみに、このルアーがウチの代名詞的なミノーです。カテゴリーはシャッドですが…。名前はシュヴァーンシャッド。ニジマスの直線的な動きにも反応するように設計したミノーです。泳がせみますね」

川村「おっ〜! 一般的なミノーと全然違う」

菊地「ハンドルだけで、ダイビングさせて浮上させて…の繰り返しで釣れるように設計しました」

川村 クランク的なミノーですね。バスにも効きそうだ。

菊地「バーチカルなダイビングと浮上です。その繰り返しで食わせることが可能です。このコンセプトに特化したエリアミノーは、現在のところコレしかありません」

川村「コレはおもしろい。ボディをより強く動かす作りになっていますね。一見すると、ボディとリップがアンバランス」

シュヴァーンシャッド(ヴァルケイン):ダイビングからの浮上。左右へのダートではなく、バーチカルな誘いを駆使して、直線的な動きを好むニジマスを魅了。既存のミノーの枠にとらわれない革命的シャッドミノー。ハンドル操作のみでトラウトを誘いだす逸品。

菊地「そうなんです。ちなみにクーガナノというクーガの小型版を作ったときには、ボディよりもリップが大きくなりました。小さいボディでウォブを強く出したかったので」

川村「トラウトはスローでもボディを強く動かす必要があるから、リップとボディの関係性が特化していますよね」

菊地「それはあるかもしれません」

川村「バスにも使えそうなルアーが結構ありますね」

菊地「エリアはその時々の状況によって釣れるルアーがコロコロ変わります。つまり、いつでも釣れる最強のルアーは生まれにくいのです」

クーガナノ(ヴァルケイン):エリア・クランクベイトの王様『クーガ』のサイズダウンバージョン。ボディよりもワイドなリップが装着されているため、超デッドスロー時でもアクションは完璧。マイクロクランクの見本のような存在。

川村「ちなみに、ホームページで拝見したのですが、ジョイントのルアーは今ありますか?」

菊地「ハイドラムですね」

川村「凄く気になりまして」

菊地「どうぞコレがそうです」

川村「三連結。つまり4ピース」

菊地「エリア独特のルアーです。エリアでS字を描く動きが低活性のトラウトに効くので、ハイドラムを作りました。泳がせてみますね」

ハイドラム(ヴァルケイン):独自路線を突っ走るヴァルケインの中でも、ザ・ヴァルケインと呼べる、超個性派ルアー。独自のジョイント技法で、まるでワームのような艶めかしいアクションを実現。今回の対談で、川村光大郎さんも感嘆の声を上げた。

川村「お〜! 動きがワームみたいに柔らかい。この動きはバスも興味示しそうです。ちょっと水槽の下側から見ます(水深約5mのプールの下へ移動して、ルアーの動きを下から確認する光大郎さん)」

川村「ルアーは魚目線で下から見ることも大事ですよね。上から人間目線で見たときには魅力的な動きでも、下から見上げると硬い物体が動いているだけに見えたり。でも、このハイドラムは凄い。上から見ても艶めかしいけど、下から見るともっと艶めかしい。ワームが動いているようです。柔らかい生命感がある」

菊地「ナチュラル側の動きに振り切ったルアーです」

川村「柔らかいだけではなく、動きが立体的なくねりですね」

菊地「ボディに対して、可能な限りウォブリングを引き出しました」

川村「この動きはジョイント幅が広すぎたら、出ないですよね。繋がりのある一体感を維持した、くねりアクションを出すのは難しい」

菊地「ジョイントの幅を徐々に狭くしています」

川村「なるほど! 確かにそうなっていますね。これは素晴らしい発想だ!!」

菊地「同じ間隔で作ってしまうと、硬い動きになってしまいます。魚で言う筋肉部分を計算しました」

対談は、デュオ社の巨大水槽を借りて行なわれた。ジャパンクォリティを追求する釣り界のトップファクトリーだ。

川村「ちなみにコレ、トレブルフック乗せたら動き変わります? バスで試したい!」

菊地「若干、動き幅が狭くなりますが、大きくは変わりません。開発段階で試しましたから(笑)」

川村「バスで使ってみます。楽しみだ! バスにもジョイントはたくさんあるけど、こういう動きはありません。バスとトラウトでは反応するツボは違うけど、新しいアクションに対する、フレッシュな反応は十分にあると思います」

菊地「ハイドラムに関しては、エリアの新しいジャンルを開拓できたかな〜という自負があります」

川村「エリアの世界でも唯一無二の存在ということですね」

菊地「ここまでライブ感がある、艶めかしいモノはないです」

川村「すでにあるモノは、それを買えばいいですからね」

<後編に続きます>

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