短縮シーズン濃厚のMLB サービスタイムの扱いが争点に

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メジャーリーグには「サービスタイム」という概念がある。これは簡単に言えば「メジャー登録日数」のようなもので、ある選手がアクティブ・ロースターまたは故障者リストに登録されている日数がカウントされる。サービスタイム172日が1年に相当し、基本的にはこれが3年に達すると年俸調停の権利を獲得。6年に達するとフリーエージェントになる。新型コロナウイルスの感染拡大により開幕が延期となり、試合数を減らした「短縮シーズン」での開催が濃厚となるなか、メジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会の交渉のなかで、サービスタイムの扱いが争点となっているようだ。

この件については、ジ・アスレチックのケン・ローゼンタールが詳しく伝えている。ローゼンタールによると、ジョン・レスター(カブス)、チャーリー・ブラックモン(ロッキーズ)、カルロス・カラスコ(インディアンス)らの代理人を務めるセス・レビンソンは、新型コロナウイルスの感染拡大により選手たちが貴重なキャリアのなかの1シーズンの一部あるいは全部を失ってしまう可能性があることを懸念。野球選手としてのキャリアは有限であり、仮にシーズンが短縮または中止になったとしても、選手たちには1年分のサービスタイムが保証されるべきだと主張する。

「短縮シーズン」で開催される場合、サービスタイムの扱いはそれほど難しくない。たとえば、昨年は移動日も含めて186日間でシーズンが開催され、サービスタイムは172日=1年という計算だった。もし100試合の「短縮シーズン」となる場合、同じ比率で計算すると115日間でシーズンが開催されることになり、サービスタイムは106日=1年となる。1年未満の端数についても、比率で計算して昨年までのものと合算するのは容易なことだ。

しかし、完全にシーズンが中止となった場合は話がややこしくなる。ニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマンによると、メジャーリーグ選手会はシーズンが中止となった場合、昨年60日以上のサービスタイムがあった選手には1年分のサービスタイムが保証されるべきだと主張しているという。一方、メジャーリーグ機構(要するに球団側)がどのような主張をしているかは明らかになっていない。

今季終了後のフリーエージェント市場において最大の注目選手となるムーキー・ベッツ(ドジャース)は、予定通りシーズンが開催されれば28歳でフリーエージェントとなり、超大型契約を得ることが見込まれていた。ところが、サービスタイムの扱い次第では、29歳になるまでフリーエージェントとなることができない可能性がある。野球選手のキャリアが有限である以上、この1年の違いは決して小さくない。

ただし、シーズンが中止となれば、各球団の財政事情にも大きなダメージを与えるのは確実であり、ベッツが28歳でフリーエージェントになったとしても、期待していたほどの契約を得られない可能性もある。しかし、フリーエージェントの権利を手にしていれば、市場の様子を見ながら1年契約で妥協し、翌年のオフに改めて大型契約を目指すという選択もできる。選択肢が増えるという意味でもやはり、選手側はサービスタイムの保証を主張し続けるだろう。

もちろん、サービスタイムの扱いが影響するのは、ベッツのような今オフにフリーエージェントとなる予定のスター選手だけではない。サービスタイムが3年未満の選手にとっては、年俸調停の権利を獲得する時期に影響を与えることになり、3年以上6年未満の選手にとっては、フリーエージェントとなる時期に影響を与えることになる。つまり、これはすべての選手のサラリーに影響を与える問題なのだ。

試合が行われなかったとしても、選手たちの有限なキャリアの一部は消費されてしまう。その「失われる時間」の重要性を最も認識しているのは選手たちであり、メジャーリーグ機構との交渉においてメジャーリーグ選手会が妥協することはないだろう。