読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、貯められないと焦り、パートを2つ掛け持ちしているという40代の主婦。収入を増やし、支出の見直しもしたはずなのに貯金は増えず、ボーナスも生活費の補てんなどに消えてしまうといいます……。FPの横山光昭氏がお答えします。
お金が貯められません。このままでは家のローンも教育費も老後資金も、どれも用意ができない気がして心配です。
何かを変えなくてはいけないと思い、収入を増やすために掛け持ちでしている私の2つのパートのうちの1つを転職しました。結果的に収入が2万円増えました。支出も減らさなくてはいけないと思い、今年になりようやく、夫婦ともに格安スマホに変え、保険も見直しました。
収入が増え、支出が減り、貯金に回せるお金が増えるはずだったのですが、どういうわけか毎月赤字ぎりぎり。足りないときはボーナスから補填していますが、そのボーナスから支払わなければならないものもあり、まったく残りません。
これではいけないと思い、先取り貯金を始めました。それでも最終的にはお金は残らず、もしもの時に当てにできるお金がないことが不安です。実際、少し前に私が入院した時はカード払いでなんとかできたという状況でした。カード払いを始めてから家計はさらに危うくなり、きちんと改善しなければと強く思っています。
<相談者プロフィール>
・女性、42歳、既婚(夫:45歳、会社員)
・子ども2人:長女(8歳)、次女(6歳)
・職業:パート(2つ掛け持ち)
・毎月の手取り金額:31.6万円
(夫:32.3万円、妻:9.3万円)
・年間の手取りボーナス額:約110万円
・貯金:なし
【支出の内訳(42.4万円)】
・住居費:9.2万円(住宅ローン)
・食費:6.8万円
・水道光熱費:2.2万円
・生命保険料:3.3万円
・日用品代:1.5万円
・通信費:1.5万円
(スマホ2台、ネット回線、固定電話)
・車関連費:3.9万円
(ローン、ガソリン、保険)
・教育費:4.6万円
(給食費と幼稚園代、習い事)
・お小遣い:2万円
・カード支払い:5.4万円
・その他:2.1万円
【ボーナスの使い道(106万円)】
・住宅ローン:14万円
・自動車ローン:20万円
・車税や通信教育代、固定資産税などの年払い:27万円
・生活費の補てん:45万円
横山:ご相談ありがとうございます。ご家族4人暮らしで貯金ゼロ。毎月の収入でなんとか暮らしているという状況ですね。自覚されている通り、万が一のことがあると対応できないでしょうから、少しずつ貯金を作ることができるように、家計を改善していきましょう。
自分の首を絞めることに…借りる習慣を見直して
収入を増やし、支出を減らしても家計が改善されないことの原因は、クレジットカードの使い方に原因がありそうです。入院されたことをきっかけにカードを使いはじめ、家計がさらに危うくなったのですよね。毎月ギリギリの暮らしの中で、クレジットカードの請求が5万円以上あり、それを毎月支払っていれば、無理もないと思います。まずはこの支払いがなくなることを目指しましょう。
とはいっても、簡単にはいかないものです。利用残高がどれほどあるのかはわかりませんが、金額によってはボーナスから家計に補てんする金額を返済に充てて強制的に毎月の支払いをなくしてもよいでしょう。その代わり、クレジットカードは使わず、毎月の支出を見直して収入の中で生活ができるように工夫をしていかなくてはいけません。
また、住宅ローンはやむを得ませんが、できればマイカーローンもできるだけ利用しない方がよいでしょう。マイカーローンもクレジットカードも借金の仲間です。借りる時は問題ないように思えても、後に支払いが苦しくなるのであれば、返済計画が十分ではなかったということです。
ローンやクレジットカード自体は、きちんと返済計画があり、支払いが無理なく継続できるのであれば利用してもまったく問題はないものです。ですが無計画に利用してしまうと、自らの首を締めることになります。収支のバランスを考えて利用できるようになるまでは、一度見合わせたほうがよいでしょう。
支出を収入内に収めるためには?
今回のご相談にあたり、相談者さんは家計状況だけではなく、ボーナスの使い道まできちんと書き出すことができています。そのボーナスから毎月の家計の補てんに充てている金額まで把握されているのですから、もう一度支出の見直しをされてみると、削減すべきところが見えてきそうです。
格安スマホへの変更、保険の見直しなど行動はされていても、見直し方が少し甘いようにも見受けられます。スマホ契約を見直すのであればご自身の使い方、つまり通話が多いか、データ通信が多いかなどにより契約の仕方も変えたほうがよいでしょうし、固定電話の必要性やネット環境も現状でよいのかなど、総合的に見直すとさらなる削減につながる場合があります。生命保険も、お子さんがまだ小さい現状から、必要な保障を再度検討してみてもよいでしょう。
また食費や日用品、ほか変動費については、必要なのか、単に欲しくて買っているのかを振り返っていくようにすると、買うべきものの優先順位をつけられるようになってくるはずです。そうすると支出にメリハリがでて、必要なところにはお金をかけ、必要ではないところは支出を抑えながら、お金を残していくやりくりができるようになると思います。これは、クレジットカードの支払いが全部終わったとしても必要なことです。
貯金ゼロから1日も早く脱却を
貯金ゼロという状況は本当にキケンな状況です。今は大丈夫でも、家族が事故にあうかもしれないですし、思いがけない病気になることもあるでしょう。また、ご家族だけではなく、ご夫婦のご両親も、だんだんと健康が心配になるご年齢になることと思います。
いつ、何が起きても不思議はないのです。少しでも早く改善に向けて動きだして欲しいと思います。
下のお子さんはこの春、小学校に入学するのでしょうか。お子さんが小学生の時は俗にいう「貯め期」になります。公立校であれば、必要なのは若干の教材費と給食費程度になり、教育費の負担が減るからです。また、お母さんが自由になる時間が増え、収入を増やしやすいということもあります。
中学生、高校生になると、塾代や友達との交遊費でお金が今よりもかかるようになります。制服や鞄などにもお金がかかるようになりますね。教育費はこれから増えていくのです。貯め期というチャンスを逃さないようにしっかり貯めてください。
毎月しっかり余剰金が出せるようになり、貯金に回せる額が増えたら、一部をiDeCoやつみたてNISAに回して、ご夫婦の老後資金作りを意識してもよいでしょう。まとまったお金は急にはできません。必要額を見据えながら、少しずつコツコツと貯めていっていただきたいと思います。