【新型コロナ】前例なき就活 会社説明会、面接もウェブで

マスク姿で就職相談をする学生(手前)=横浜市金沢区の関東学院大就職支援センター

 2021年春の卒業予定者を対象に企業の採用説明会が解禁され約3週間、本格化する就職活動にも新型コロナウイルスが影を落とす。濃厚接触を避けるため説明会や面接をウェブに切り替える企業が続出。「直接会って雰囲気を感じ取りたいけれど…」「通信環境などを心配する学生から相談を受けている」―。学生や大学の就職支援担当者からは、普段とは勝手が違う就活戦線に戸惑いの声も上がる。

 「参加予定だった説明会の3分の2が中止になった」。そう残念がるのは関東学院大(横浜市金沢区)3年の男子学生(21)。今月に入り、企業から中止のメールが相次いで送られてきた。その後、就活情報サイトを通じて予約するウェブ説明会に参加。時間の制約もあり、企業の担当者への質問が十分にできない場合もあるという。

 「感染が落ち着いたころに面接などが集中したら困る。何より自分が感染しないか心配」と先行きの不透明さに不安を募らせる。

 同大の野中康生就職支援センター長は「学内で予定されていた合同説明会が全て中止になった影響が大きい」と話す。例年、動き出しの遅い学生ほど合同説明会を重宝する傾向にあり、その機会を失った戸惑いが見られるという。合同説明会は学生と地元の中小企業の接点にもなっており、野中センター長は「中小企業にも目を向けてもらえる方策を今後、考えたい」と課題を挙げる。

 ウェブ面接を心配する声も多い。専修大(川崎市多摩区)3年の女子学生(21)は「やったことがないので不安」と明かす。

 大学側は、自宅の通信環境や部屋の散らかり具合に不安を抱く学生からの相談を受け、学内のスペースをウェブ面接の場所として提供している。渡辺正志就職課長は「ただでさえ、面接は緊張する。そこに通信が切れないかといった心配が加わる」と学生の心情をおもんぱかる。一方で、説明会や面接のオンライン化に前向きな学生もいる。「交通費を削減でき、周囲の学生の様子を気にしなくて済む」と語るのは、関東学院大3年の男子学生(21)。「やはり会社の雰囲気はつかみにくい」と指摘しつつも、「昨年6月から情報収集を進めてきたので、過剰に不安になる必要はない」といたって冷静だ。

 東海大キャリア就職センター(平塚市)の水島久光所長は「学生は想像する以上にデジタルネーティブ。学生が自分自身を発揮する場として、私たちもウェブ説明会などの流れをポジティブに捉えている」と受け止め、こう呼び掛ける。「落ち着いて世の中の動きを見る目を持ち、判断に困ることがあれば相談に来てほしい」

© 株式会社神奈川新聞社