高校演劇に懸けた半世紀 瓊浦高演劇部顧問 岩永義宣さん離任

卒業生や演劇部員と笑顔で話をする岩永さん(右から2人目)=長崎市、瓊浦高

 長崎県高校演劇界をけん引してきた瓊浦高(長崎市伊良林2丁目)の元副校長、岩永義宣さん(73)=同校就職指導専門員=が23日、半世紀にわたる教員生活に幕を下ろした。この日、同校であった離任式で、岩永さんは「すばらしい生徒たちのおかげで今がある。瓊浦での生活は楽しくて感動的だった。悔いはない」と感謝の言葉を述べた。

 長崎市出身。1970年、同校で国語教員として採用された。高校時代に部活で演劇をしていた経験を買われ、演劇部顧問に抜てき。あいさつ、礼儀を重んじ「明るく、楽しく、元気よく」を口癖に、生徒と全力投球してきた。部員数が多くても少なくても障害のある部員がいても、必ず全員を舞台に立たせた。「正直、レベルは落ちるかもしれないが、せっかく演劇部に入ったのだから経験させ、楽しんでもらいたい。一生懸命やる姿が観衆の心を動かす。それが私のやり方」
 同部は長崎県代表として九州大会に17回出場。県内最多で、九州でもトップクラスだ。2005年に九州代表として悲願の全国大会初出場。2013年には地元開催の全国高校総合文化祭(長崎しおかぜ総文祭)演劇部門大会で県代表として舞台に立った。同部の実力、実績が上がったことで、役者を目指して入部する生徒も出てきた。これまで同部から20人ほどのプロの俳優や演出家らを輩出している。
 長崎県全体の高校演劇にも貢献。1981年から県高校演劇連盟事務局長を務め、県内3地区に分かれていた高校演劇連盟を県高文連演劇専門部に1本化。プロの役者や照明、舞台制作の専門家らを招いた研究会も開き、県内部員に経験を積ませた。その後、同専門部委員長を18年間務め、演劇発表会県大会の運営を担うなど主導。校内外で「親分」「ボス」と呼ばれ、頼られてきた。
 離任式後、同部の稽古場に岩永さんや演劇部員、卒業生が集まり、別れを惜しんだ。1年の船津瑠美さん(16)は「芝居に悩んだときに岩永先生はとても優しく教えてくれた。先生から教わったことを生かしながらこれからも舞台に立ち続けていきたい」と話した。
 岩永さんは「演劇部の顧問を担当させてもらって本当に幸せだった。さみしさはあるが、やっと終わったという思いもある。これからは、一人の観客として全学校の作品をじっくり見て楽しみたい」としみじみ。「瓊浦以外の学校でも役に立つことがあれば進んで協力し、これからも高校演劇を支えていきたい」と続けた。岩永さんの新たな人生が始まる。

「明るく、楽しく、元気よく」を口癖に演技指導をする岩永さん(左)=2014年、瓊浦高

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