トヨタとNTTがスマートシティ事業で提携 東富士・品川で先行実装

トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)と日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、スマートシティ事業の推進を目指し、資本業務提携の締結を発表した。両社ともに2,000億円規模の出資を行い、お互いの株式を保有。スマートシティ構築のためのプラットフォームを共同で構築・運営する。まずはトヨタ自動車が2021年に着工する「Woven City(ウーブンシティ)」、NTTグループ企業が集中するJR品川駅前への先行実装に向けて動き出す。

【2020.04.30 更新 トップ画像を変更】

トヨタ自動車とNTTは3月24日に共同で記者会見を実施。トヨタ自動車からは豊田章男・代表取締役社長(以下、豊田氏)、NTTからは澤田純・代表取締役社長(以下、澤田氏)がそれぞれ登壇した。

両社は2017年にコネクテッドカー分野での協業を開始。その一方で自動車・情報通信の両分野の市場が目まぐるしい変化を続けており、これまでの事業基盤だけではなく新たな協力関係の構築を目指す必要が生じ、今回の提携へと至ったという。特に、スマートシティ事業を、「先進的技術の活用により都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種課題の解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する」ものと位置づけて、今後より取り組みを強化していく方針だ。

トヨタ自動車は今年1月に同社の東富士工場(静岡県裾野市)跡地を利用した「Woven City(ウーブンシティ)」構想を発表。「モビリティ・カンパニー」への変革を目指し、ソフトウェア・ファーストのクルマ、そして社会システムと深く結びついたクルマづくりを掲げている。他方、NTTは福岡、札幌、横浜や千葉などの自治体や企業等とスマートシティ実装に向けて協業、国外でもラスベガスやサイバージャヤ(マレーシア)で取り組みを進めていた。

豊田氏は今回の提携について、NTTがスマートシティ事業やIOWN(アイオン)構想

など、将来のまちづくりの実証や先端研究にいち早くに取り組んでいることなどを挙げ、トヨタ自動車が掲げるモビリティ・カンパニーへの変革を達成するために「NTT との提携は必要不可欠であり必然」と語った。

※1 Innovative Optical & Wireless Networkの略。NTTが推進する光(フォトニクス)ベースのネットワーク構想

両社はスマートシティ事業のコアとなる「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築・運営すると明かした。同プラットフォームは、「ヒト・クルマ・イエ、また住民・企業・自治体等に係る生活、ビジネス及びインフラ・公共サービス等の全ての領域への価値提供を行うもの」だとしており、発表された概要は下記の通り。

【スマートシティプラットフォームの概要】

・住民・企業・自治体等向け価値提供のセキュアな基盤として、スマートシティのデータマネジメントと情報流通

、これらに基づくデジタルツイン(まちづくりシミュレーション)

とその周辺機能

により構成される

・また、個々のスマートシティのプラットフォーム、及び他のスマートシティのプラットフォームとの連携基盤としてプラットフォーム・オブ・プラットフォームを擁する

「スマートシティプラットフォーム」の概要(再掲)

※2 データ収集・蓄積・加工、分析・可視化、サービス利用等のためのインターフェイス機能 等

※3 実在するまちをリアルタイムに仮想空間で再現し、試行結果をフィードバックする機能 等

※4 ネットワーク、各種デバイス・ハードウェアとの連携、各種サービス・他システム・他プラットフォームとの連携機能 等

このプラットフォームは、前述のWoven City(静岡県裾野市東富士エリア)と、東京都港区品川エリア(品川駅前のNTT街区の一部)で先行して実装するとのこと。両社はそれぞれが実施する第三者割当による自己株式の処分により、お互いの株式を2,000億円分保有する(株式取得日:2020年4月9日)。

澤田氏は会見において、基盤となるソフトウェアづくりと、その後ハード連携も進めて、将来的には「東富士から世界へ」と国内外の都市へと展開する狙いを明かした。今回相互に出資し合う形を採ったのは長期的な取り組みを見越してのことであるとし、さらに今後規模を拡大する含みを持たせた。

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