新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応【最新情報】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、国境なき医師団(MSF)は各地で緊急医療援助活動を展開している。特に感染が広がっているイタリアでは、複数の病院で感染制御と患者の治療にあたっている。

感染を予防する方法を伝えるMSFスタッフ(香港) © Shuk Lim Cheung/MSF

感染を予防する方法を伝えるMSFスタッフ(香港) © Shuk Lim Cheung/MSF

新型コロナウイルス感染症に対応中

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各地でのMSFの主な活動

イタリア

© Lisa Veran/MSF

© Lisa Veran/MSF

新型コロナウイルスによる死亡者数が、ウイルスの発生源である中国を上回り、感染被害が深刻なイタリア。

集団発生が最初に起こった中心地域において、3つの病院で感染制御と患者の治療にあたっている。さらに、病院外の医療援助活動として、自宅隔離中の人びとを診察する医師や医療従事者、また、感染者が確認された高齢者介護施設で働くスタッフの支援も行っている。

関連情報:
新型コロナウイルス:医療者への感染拡大を防ぐ イタリア、緊急援助の現場から

香港(1月末~)

© Shuk Lim Cheung/MSF

© Shuk Lim Cheung/MSF

感染リスクの高い集団を対象に、感染予防の啓発講習を20回以上実施したほか、精神衛生面でのニーズに応じるため、ストレスや精神的不安に対処する講習も開始した。このほか、ストレスや不安に対処するため動画や、新型コロナウイルス関連で流布されている虚偽情報を打ち消す動画も制作している。

関連情報:
【動画】新型コロナウイルス MSFが香港で活動(2020年2月21日掲載) 

ギリシャ

🄫 Anna Pantelia/MSF

🄫 Anna Pantelia/MSF

 レスボス島のモリア難民キャンプでの感染流行に備えて、緊急時の対応を定めた。

関連記事:
「新型コロナウイルスまん延危機——ギリシャの難民キャンプから早急に人びとの退避を」(2020年03月13日掲載)

フランス

© Aurelie Baumel/MSF

© Aurelie Baumel/MSF

首都パリおよびその周辺地域において、特に感染リスクの高い集団に向けた感染確認および治療に向けた活動を準備中。また、感染リスクの高い集団への移動診療やスクリーニング検査のほか、シェルターでの診断・隔離・感染者対応などについて、協力関係にある医療社会団体やイル=ド=フランス地域圏保健当局と調整を進めている。 

ベルギー

ホームレスや非正規移民など、弱い立場の人びとを支援する団体に対して、感染者の選別や感染制御に関する支援を提供。また、患者の収容能力を超えた病院や、高齢者介護施設のような閉鎖的空間での感染制御と医療支援の計画を策定した。

スペイン

病院の患者収容能力拡大に向けた方策や、病院の開設場所の選定について、保健省への助言を行っている。また、保健省の危機管理広報活動にも協力し、感染症対応の専門的知見に基づいて戦略面での助言にもあたっている。医療防護具が不足しているため、現段階では、感染防御には直接対応していない。 

中国(2月)

© MSF

© MSF

新型コロナウイルス感染症が最初に報告された中国。医療用の保護具3.5トンを武漢の病院に提供し、最前線で重症・重篤患者の治療にあたる医療従事者を支援。

カンボジア(3月初旬~)

© MSF

© MSF

 医療従事者向けに感染予防や感染者対応に関する研修を実施。

関連記事:
新型コロナウイルス 医療体制が脆弱な国々での流行に備える(2020年3月6日掲載)

アフガニスタン

専門的助言に基づいて保健当局に協力中である。また、感染例が報告されたヘラート州の状況を調査中。 

シリア

紛争によって地元保健当局が機能不全に陥っている地域において、感染者への対応を準備中。 

リビア

トリポリ市内の複数の病院において、医師と看護師を対象に、感染制御と感染者への対応に関する研修を実施。 

パプアニューギニア(3月初旬~)

医療従事者向けに感染予防や感染者対応に関する研修を実施。 

世界70カ国での活動を維持することが最重要課題

MSFは現在、世界約70の国と地域で440あまりの医療人道援助プログラムを行っている。今回のような新たな感染症の世界的な流行の中でも、すでに何らかの人道危機の下に生きる人びとに対する通常の活動を維持することは非常に重要だ。しかしながら、世界各国における入国・渡航制限によりMSFスタッフの国家間の移動が難しくなっていること、また、医療用消耗品、特に医療スタッフ用保護具の世界的な不足が、医療援助活動の継続に大きな障害となっている。

MSFは現在の継続中の活動地でも、感染予防を中心に、新型コロナウイルスの流行への対策を進めている。今後感染者が出る可能性が高いと思われる場所では、感染予防策を導入し、患者のスクリーニングとトリアージ態勢の確立、隔離区画の確保と維持管理、保健教育の徹底が必要だ。MSFは、世界保健機関(WHO)および各国保健省と連携し、感染者が増えた場合どのような援助ができるか検討を重ねている。

今求められるのは

医療従事者の安全確保は、あらゆる医療機関で最優先事項とみなすべきだ。大勢の患者によって機能が麻痺した病院や診療所では、保護具の供給不足や、医療従事者の感染によりスタッフが減る事態にも対処していく必要がある。

MSFは、新型コロナウイルス感染症への対応に緊急に必要な医療ツールが、必要とする人にとって利用しやすく、購入しやすく、入手できる状態になるよう求めている。政府、製薬会社、そして、治療薬や検査ツール、ワクチンを開発している研究機関は、下記のために必要な措置を講じる必要がある。

■医薬品の生産と手頃な価格での販売が、特許と独占によって妨げられないようにする。
■既存の医薬品を新型コロナウイルス感染症に転用する際は、これまでその医薬品を使ってきた患者が治療を続けられるようにする。
■感染防護と治療のための医療物資は、最前線の医療従事者を優先する。 
■必須医薬品の供給が脅かされるリスクがないか監視し、必要に応じて国際協調を通した 影響緩和策を調整できるよう、透明性と連携において改善を図り、エビデンスに基づいたアプローチを徹底する。 

これまでの情報

・2020年02月05日掲載 新型コロナウイルス感染拡大への国境なき医師団の対応について
・2020年02月14日掲載 新型コロナウイルス感染拡大への国境なき医師団の対応について
・2020年02月21日掲載 【動画】新型コロナウイルス MSFが香港で活動
・2020年03月06日掲載 新型コロナウイルス 医療体制が脆弱な国々での流行に備える
・2020年03月13日掲載 新型コロナウイルスまん延危機——ギリシャの難民キャンプから早急に人びとの退避を
・2020年03月18日掲載 新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応
・2020年03月19日掲載 新型コロナウイルスが突きつけるMSF医療援助活動の課題
・2020年03月19日掲載 新型コロナウイルス感染拡大:MSF、欧州やイランなどで活動開始
・2020年03月23日掲載 新型コロナウイルス緊急医療援助:エアーテント式治療ユニットと共に医療チームをイランへ派遣 

イタリアの病院で感染制御と患者の治療を支援 © Lisa Veran/MSF

イタリアの病院で感染制御と患者の治療を支援 © Lisa Veran/MSF

国境なき医師団(MSF)とは

国境なき医師団は、紛争や災害、貧困などによって命の危機に直面している人びとに医療を届ける国際的な民間の医療・人道援助団体です。

・医療援助活動
活動地は、シリアやアフガニスタンなどの紛争地や、貧困により医療が不足している地域、自然災害の被災地、感染症が流行する地域など。医療を受けられない人々のために、約4万7000人のスタッフが世界70カ国以上で活動を行っています。

・「独立・中立・公平」な立場
活動資金の9割以上が民間からの寄付に支えられていることにより、中立な立場での援助活動を実現。政治などの干渉を受けることなく医療を提供します。寄付収入や配分先などを掲載した、年間の活動報告書はこちら

・証言活動
医療援助だけでは人道的危機が改善しない場合、その現状を国際社会に広く知らせる証言活動もします。こうした活動が認められ、1999年ノーベル平和賞を受賞しました。

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