ジェイムス・テイラー『アメリカン・スタンダード』 カバーを超え、まるでオリジナル曲のように再現

ジェイムス・テイラー『アメリカン・スタンダード』

 全米アルバム・チャート1位に輝いた『ビフォア・ディス・ワールド』以来5年ぶりのアルバムです。

 2002年にヒットしたロッド・スチュワートのスタンダード集がきっかけで、多くのアーティストが同様の作品を発表しました。ポール・マッカートニーのそれはダイアナ・クラールらをバックにした、ソフィスティケートされたジャズ作品。ボブ・ディランのそれはスタンダードの詞が持つ究極のロマンティシズムを語る作品集でした。

 さてジェイムスが挑戦した本作は、カバーという概念を超えたクリエイティヴな作品。スタンダードをカバーする場合オリジナルを尊重し、コードやキーをあまり変えないのですが、ここでは彼ならではのギター・コードでアレンジし、彼のオリジナル作品のように再現しているのです。「ティーチ・ミー・トゥナイト」などはまるで70年代の彼の作品のよう。定番曲だけでなく、メッセージ性を含んだ名曲を取り上げているところも彼らしいと言えます。

(ユニバーサル・2600円+税)=北澤孝

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