医師が告げた胎児の“むくみ” よぎる可能性に募る不安 【連載】大空といつまでも 医療的ケア児と家族の物語<2>

2015年10月、産婦人科の医院のエコー検査で確認された大空君の画像(光都子さん提供)

 妊婦の出口光都子(みつこ)さんは、夫と小学生の娘2人の家族全員で産婦人科の医院を受診するようにしていた。
 2015年9月下旬、超音波(エコー)検査の画像を見た医師はいつものように心音を聞かせてくれながら「ちゃんと育っていますね」と告げた。だが、少し言いにくそうに「ちょっと首の辺りに浮腫(ふしゅ)のようなものがあるかもしれません。1週間後にまた見てみましょう」と付け加えた。
 首の後ろの浮腫、いわゆる「むくみ」は正常な胎児にも認められるが、これが厚くなると染色体異常の可能性が高くなるとされる。気になった光都子さんがスマートフォンで調べると、「ダウン症(21トリソミー)」「染色体異常の確率」「死産」などの文字が目に飛び込んできた。
 不安な気持ちで迎えた次の健診。夫と娘たちはドッジボールの試合があり、光都子さん1人だった。やはり浮腫のようなものが確認された。医師からは長崎大学病院での検査を勧められ、紹介状を書いてもらった。
 「まだ異常が確定したわけではない。食事にもすごく気をつけてきた。きっと大丈夫」。自分にそう言い聞かせても、不安は募るばかり。自宅に戻り、2階の寝室に1人こもって泣いていると、夫と娘たちが帰ってきた。涙が止まらず寝たふりをしていたが、娘たちが心配そうに寝室をのぞくので「何でもないよ」と平静を装った。
 大学病院の受診を知らされた夫の雄一さんは冷静だった。「染色体異常や死産が決まったわけではない。泣いても何も解決しない」。光都子さんをそう諭した。
 「どうか浮腫が消えていますように」。祈るような気持ちでエコー検査に臨むと「浮腫はないよ」と医師。その一言に安堵(あんど)感が胸に広がったが、医師からは42歳という高齢を理由に、確定診断のための羊水検査を勧められた。高齢出産は染色体異常の可能性が高くなるからだ。紹介状を書いてくれた産婦人科の医師も、今後の対応にかかわるため羊水検査を求めており、受けることにした。
 羊水検査は、おなかに針を刺して子宮内の羊水を採取する。わずかながら流産のリスクもある。光都子さんは破水して切迫流産となり、2週間の入院を余儀なくされた。
 11月初旬の夜。翌日に退院を控え、病室でくつろいでいると、2人の医師に呼ばれた。検査した染色体の画像を別室で示され、結果を告げられた。1~22番の染色体のほとんどが2本ずつあったが、18番だけが3本だった。「18トリソミーが認められました。生まれても短命になると思われます」

【次回に続く】
※この連載は随時更新します。

 


© 株式会社長崎新聞社