助けを求める悲痛な声に世界が仰天! 中国強制労働施設の実態を映し出す衝撃ドキュメンタリー『馬三家からの手紙』

『馬三家からの手紙』©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

当局の弾圧を告発! 全人類必見ドキュメンタリーが劇場公開

もし、あなたが何気なく買った雑貨やお土産品の中に「助けて」と書かれた手紙を見つけたら、どう思うだろうか? 少なくともギョっとして、怪しんでゴミ箱に放り込むか、ネットで真偽を調べたりするかもしれない。映画『馬三家からの手紙』は、あるアメリカ人がその後者を選択したことから生まれた、かの国の現状を訴える超深刻なドキュメンタリー作品だ。

本作は、子どものためにハロウィン用の飾りを買った米オレゴン州の女性がその箱の中に、中国の強制労働施設で働かされている人物が書いた手紙を発見したところから始まる。中国遼寧省・馬三家(マサンジア)の強制労働施設(労働教養所と呼ばれている)からこっそり届けられたその手紙は、施設での過酷な体験を切々と綴った、あまりにも衝撃的なものだった……。

『馬三家からの手紙』©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

法輪功とは? その影響力を恐れた中国共産党による陰惨な弾圧

自身が作業を担当していた製品の中に“助けを求める手紙”を忍び込ませたのが、このドキュメンタリーの中心人物となる孫毅(スン・イ)という男性である。彼は新進の気功術<法輪功(ファルンゴン)>の実践者なのだが、中国共産党は同団体を“邪教”と断罪し、長年にわたって数々の迫害を行ってきた(この問題については、これまで米FOXニュースなどでもスクープとして大々的に報じられている)。

『馬三家からの手紙』©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

日本ではそこまでメジャーではないが法輪功は巨大な団体でもあり、中国国内だけでも数千万人、世界数十カ国に実践者がいるというからかなりの規模だ。この映画の公開に合わせてか、日本でも都内で江沢民(弾圧を指示した元国家主席)告発の支持を求める署名活動が行われていて、その中には流暢な日本語を操るマレーシア人男性もいた。まさに中国当局は、こういった法輪功の幅広い影響力とグローバルな拡散力を恐れ、本来は刑務所等で行われていた“更生のための労働”が、いつしか反政府分子を“弾圧するための拷問”に発展していったのだ。

※編集部撮影

そんな被迫害者の一人が孫さんだったわけだが、いわゆる強制労働などとは無縁そうな、いかにも理知的な雰囲気に驚かされる。孫さんは石油企業に勤めていたエリートで、そもそも英語で手紙を書ける時点でかなりの教養の持ち主であることは明らかだ。くだんの手紙の存在が世界中で報道されたとき、孫さんはすでに施設から解放されていた。しかし彼は、再び中国当局に目をつけられる危険を顧みず、数々のドキュメンタリー作品を手掛けるレオン・リー監督にコンタクトをとり、強制労働施設を告発するドキュメンタリー映画(=本作)の製作に着手するのだった。

『馬三家からの手紙』©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

まだ問題は何も解決していない……闇の深さを示す衝撃のラスト

孫さんの毅然とした雰囲気もあって、ドキュメンタリー映画としては淡々としたトーンではあるが、オルタナ・コミック風のアニメーションで再現される施設の惨状、看守たちによる拷問は、あまりの非道さに暗澹たる気持ちになる。

『馬三家からの手紙』©2018 Flying Cloud Productions, Inc.

強制労働施設と聞くと、あのバンクシーが担当した「ザ・シンプソンズ」のオープニング映像で揶揄されたような、信じられないほど劣悪な環境で貧民がこき使われていて……みたいな様子を想像してしまうが、本作を観ると、あれがそれほど極端なデフォルメ描写ではなかったということがわかり、ますます絶望してしまう。

当然ながら、強制労働施設の内情が漏れ出たのは初めてのことではなく、6~7年ほど前にも中国の雑誌で施設の実態が報じられたことがあったが、形式的な報告がなされただけで告発はフェードアウトし、その雑誌は休刊に追いやられてしまったというから恐ろしい。そして本作も、深い深いため息が漏れてしまうほど衝撃的な結末で幕を閉じるのだった……。ともあれ、できるだけ多くの人に観ていただきたい、中国の現状を捉えた意義あるドキュメンタリー作品である。

『馬三家からの手紙』は2020年3月21日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

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