病気、介護、子育て…困ったとき申請すれば国や自治体からお金や手当がもらえる制度

年代とともに家族、子育て、仕事、健康について状況が変化していきます。そして、長い人生のうちには、大きなお金がかかるイベントや、病気やケガといった困ったことも起こります。しかし、残念なことに困ったときに助けてくれる制度は、大々的にアピールされていないものが多く、申請しないともらえないものがほとんどです。

そんな困ったときに申請だけでもらえる・戻ってくる制度を味方につけて、人生の荒波を乗り越えていきましょう。


育児と仕事の両立、子育て支援

急速に進む少子高齢化の問題は、日本の最重要課題ともいえます。そのため国や自治体では、育児と仕事の両立、出産や子育ての経済的な負担軽減、子育てしやすい環境づくりに力を注いでいます。子育てが安心してできるところなら、その自治体に住むことによって人口が増え、活力ある街になります。

特定不妊治療費助成制度

子どもがなかなか授からず、不妊治療をすることになると医療保険対象外なので、高額な治療費が必要になります。経済的な負担を軽減するために、治療費の一部を各都道府県で助成しています。

申請要件として、治療開始時に法律婚をしている夫婦で、妻の年齢が43歳未満であることが必要です(事実婚は対象外)。また、夫婦合算で730万円未満などの規定があります。

その他市区町村が実施する助成事業がある自治体もあります。
・申請先 都道府県の申請窓口

妊婦検診費用の公費助成

少子化対策の一つで、妊婦が経済的な事情から検診を受けられないことをなくすために、できた制度です。母子健康手帳の交付と妊婦検診費用の補助券の交付があり、保健師の相談やその他情報提供などのサービスを提供しています。14回程度の妊婦検診のうち数回の補助が行われていますが、自治体によって内容に差があり、完全無料化にはなっていません。

・時期 妊娠がわかったらすぐ
・申請先 市区町村の担当窓口

出産手当金

産休期間中に給与が受けられない場合の生活を支えるために、健康保険から「出産手当金」が支給されます。健康保険に加入している母親が対象で、パート、アルバイト、派遣社員も受給できますが、国民健康保険の加入者は対象外です。支給額は、支給開始前の平均給与額の3分の2相当額です。出産予定日以前42日、出産の翌日以後56日まで、実際に会社を休み給与を支給されなかった期間が対象です。
・申請先 医師等が必要事項を記入した申請用紙を会社へ提出する

乳幼児医療費助成

病気やケガの頻度の高い子育て世帯の経済的負担を軽減する制度です。一定年齢まで乳幼児の医療費、薬剤費の自己負担額を助成しています。

子どもが健康保険に加入していることが条件で、生活保護を受けている世帯、児童福祉施設等に入所している乳幼児は対象外になります。助成の対象となる年齢は自治体によって異なり、所得制限がある場合もあります。
・申請先 市区町村の担当窓口

子ども・若者育成支援、教育支援

「ニッポン一億総活躍プラン」においても、希望する教育を受けられるように制約をなくしていく取り組みや、子育てがしにくい家庭や子どもへの対策打ち出されています。

就学援助制度

雇用状況によっては、子どもの教育費や生活費に困ることもあります。学校生活で必要な学用品などをサポートする制度です。学用品をはじめ通学費、修学旅行費、校外活動費、学校の検診で治療の指示を受けた病気の医療費などに対して補助があります。自治体によって対象となる費用は異なります。
・時期 新学期開始後、申請書を配布後
・申請先 学校もしくは教育委員会

私立高等学校の授業料の実質無償化(2020年4月改正)

高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるために、高校教育にかかる授業料の経済的負担の軽減を行っています。

国公立高校は、授業料負担が実質0円です。2020年4月からは制度改正で、高等学校等就学支援金(返還不要の授業料支援)のうち、私立高校に通う生徒への支援額の上限が39万6000円に上がります。

支援の対象になる世帯の所得判定基準は、両親の働き方や子どもの人数によって異なります。申請手続きは、新入生は2020年4月、在校生は7月頃に学校から案内がされる予定です。
・申請先 就学している学校

病気やケガをしたときに知っておきたい制度

傷病手当金

会社勤めの人が長期間会社を休むと給料がもらえなくなります。業務外で病気やケガをしたために入院をしたり自宅療養をしたりして、会社で働けない状態であることが条件です。医師の診断書が必要です。連続して3日以上会社を休んだ場合、4日目から傷病手当金が支給されます。支給期間は、支給開始日から最長で1年6か月間です。
・申請先 申請書を作成し、会社の健康保険を担当する部署へ提出

高額療養費

手術が必要になる入院は、わずかな日数の入院でも高額な医療費になります。そうした場合に家計への影響を軽減できる制度です。

保険が適用される診察に対して、窓口で支払った自己負担額を対象として、一定の支払額を超えた部分が払い戻される制度です。一定の支払額(負担限度額)は、年齢や月収で異なります。70歳未満の場合、入院の前に「限度額適用認定書」の交付を受けておくと、窓口での支払いを自己負担限度額までにできます。申請の時効は、診察を受けた月の翌月の初日から2年です。
・申請先 加入している健康保険の窓口

超高齢社会の介護を助ける制度

介護が必要になると、家庭で介護するのもかなりの負担です。自宅のリフォーム、介護費用での支援、還付の制度があります。

老人福祉手当・老人介護手当

老人福祉手当は、65歳以上で在宅で認知症の人や寝たきりの人を対象に自治体が支給するもので、名称や支給内容は各自治体によってことなります。

老人介護手当は、在宅で介護をしている家族に対して、介護の負担を軽減する目的で支給するものです。こちらも、手当の名称や支給条件は自治体によってことなります。
・申請先 自治体の担当窓口

住宅改修費

介護が必要な人が住み慣れた自宅で暮らすために、手すりの取り付けや床を畳からフローリングに替える、トイレの改修などの工事に介護保険から支給される制度です。支給限度額の20万円のうちの9割が支給の上限になります。ケアマネジャーの住宅改修理由書や見積り、改修前の写真を添付して工事をする前に申請します。
・申請先 自治体の介護保険の担当窓口

災害と住環境の整備

超高齢社会の日本では、高齢者が元気で自立した生活ができれば、医療費や介護費用が削減できます。一方、近年の異常気象で災害が多発しており、地球温暖化防止も急務です。こうした背景から多くの自治体で住環境の整備に支援や助成を行っています。

高効率給湯器等補助金制度

電気やガスなど、既存のエネルギーによるエコタイプの給湯器(エコキュート・エネファーム・エコジョーズ等)、発電機など、地球温暖化対策につながる省エネ機器を設置する場合に、一定の金額を助成する制度です。設置工事をする前に申請書、見積もりなどを提出する必要があります。自治体によって金額は異なりますが、1~5万円程度になっています。
・申請先 市区町村の窓口

被災者生活再建支援制度の支援金

この数年、地震や水害の被害を受けることが多くなりました。自然災害により、自宅が壊れたり、長期間避難が必要だったりと生活基盤に大きな被害を受けた人に対して支給される支援金です。支援法の適用になる災害には都道府県が対応します。
支援金は被害の程度と再建の方法で金額が変わります。たとえば、自宅が全壊した場合に100万円、新しく建設・購入する場合には加算支援金として200万円がプラスされます。
申請期間は、基礎支援金は災害日から13か月以内に、加算支援金は37ヵ月以内に申請を行います。
・申請先 市区町村の窓口


困ったとき、多額の出費があるときに助けてもらえると本当に助かります。筆者も突然の解雇で、明日からの生活や教育費に不安を感じた時期がありました。すべての制度を把握しておくことはできないため、いつどのタイミングで申請するのか、要件がどうなのか、困ったことがあったら、調べる・たずねる姿勢が必要になります。特に日本の行政は、申請主義なので、こちらから聞かない限り、教えてくれないと心得ておきましょう。

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