F1が2020年シーズンのレースの中止や延期を余儀なくされている期間を利用して、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーは集中的な身体トレーニングを行っている。今年の夏に想定される、そして彼が期待する、過酷になるであろうレーススケジュールに備えるためだ。
3月23日には、世界的な新型コロナウイルス流行の影響により、アゼルバイジャンGPの開催延期も発表された。これで、今年予定されているF1世界選手権のうち、中止ないし延期が決まったグランプリは8戦となった。F1のCEOを務めるチェイス・キャリーは、レース開始時期について、願わくは「今夏のどこかの時点」と語っている。
一連の中止や延期などによって、F1とFIAは2020年カレンダーの再構築を迫られている。これまでに取り止めとなっているレースをすべて残された期間に収容することが難しい一方で、3週連続、場合によっては4週連続の開催が現実味を帯びている。
ガスリーは、予想外に生じた空白期間を利用して、体力維持だけでなく、筋力アップや持久力を高めるためのトレーニングを行っている。今後できれば再開を願うF1の、想定される過密日程に備えるためだ。
「オーストラリアに着いたときは、時差ぼけもほとんど感じなかったし、気分は最高だったよ。でもその後、レース中止が発表されたときはショックを受けた」と、ガスリーは『AFP』に語った。
「とてもワクワクしていたんだ。シーズンオフの間、チームと一緒にかなりの準備を積んでいたし、身体トレーニングも続けていた」
「そのときは、レースができないということにみんな少々不満だった。レースがしたかったし、それが僕のモチベーションの源泉でもあるからね。でもこの状況をみれば、イベントやスポーツなどの開催延期は避けようがないと思う」
メルボルンでの開催中止を受けて、ガスリーはフランスには戻らず、フィジカルトレーナーとともにドバイへ向かうことを選んだ。2週間にわたって、太陽の下で精力的にトレーニングを行うためだ。
「2週間分のプランがある。むしろ普段よりも多くのトレーニングを行っているよ」
「過去10年にわたって、シーズン再開までに身体的な準備を行う期間が2カ月もあったことはない。すでに準備は整っていたんだ。オフシーズンの間に十分なトレーニングを行っていたからね」
「けれど、さらに2カ月もの準備期間ができた。シーズンが始まるまでに自分の体をより強化しておけるチャンスだ」
フィジカルとスタミナがより強化されれば、7月と8月に想定される過酷なF1スケジュールをこなすうえで役に立つだろう。
同様のことは過去にもあった。2018年に史上初めて3週連続で開催されたときには、これを歓迎しない多くのチームからスタッフの疲労を訴える声があがっていた。
「レースウイーク中は、毎日朝から夜まで、激しい作業が絶えず続くものなんだ」
「でも、もし今年3週か4週連続で開催されることになれば、僕たちは最高のコンディションで戦えるよう準備しなければならない。毎回、体力がしっかり回復しているかどうかということに通常以上に気を配り、次戦に100%の力で臨めるようにする必要がある」
他の一部のF1ドライバーとは異なり、ガスリーは今後数週間から数カ月にわたって行われる予定のF1のEスポーツ・バーチャル・グランプリ・シリーズには参戦しないという。ただし、近いうちにシミュレーター作業を行うことになりそうだ。
「ドバイには『シム』がない。プレイステーションだけだから、F1以外のゲームで遊んでいるよ」
「ヨーロッパに戻ったら、ファクトリーでシミュレーターを担当する時間もできると思う。そのほうが実際の状態に近いしね」
「ドライバーとして、最も多くのことを学べる場所はシミュレーターだ」