スナメリの子育て「貴重映像」 生態解明に期待 専門家 長崎の中村さん、藤岡さん

大村湾で撮影したスナメリの親子(中村拓朗さん提供)

 長崎市の水中ガイドの男性らが大村湾でスナメリの水中撮影に成功した。スナメリは警戒心が強いが、親子で寄り添う姿や魚を食べる様子も捉えた。専門家は「貴重な映像。まだ分からない部分が多い生態の解明につながる」と期待している。
 白っぽい体をくねらせ、サッと小魚をくわえていった。カメラとの距離はわずか1メートル程度。腹が大きく膨らんでいた。1週間後、尾びれの形が同じことを確認し“再会”を果たした。腹はへこみ、そばに子どもが寄り添っていた。
 撮影したのは長崎市滑石4丁目で「ダイビングサービス海だより」を経営する中村拓朗さん(35)と、長崎ケーブルメディア(ncm、同市)ディレクターの藤岡英嗣さん(42)。大村湾でスナメリを8年以上追ってきた中村さんは「習性を理解し、次の行動を読んで撮影した」と胸を張る。
 「水中でスナメリを捉えた映像は少ない。ましてや捕食や子育てのシーンは見たことがない」。スナメリを調査研究している長崎大の天野雅男教授(鯨類学)はこう目を見張る。
 スナメリは県レッドリスト絶滅危惧ⅠB類に位置付けられ、航空機の調査で大村湾には200~300頭生息すると推定されている。イルカと比べ小柄で警戒心が強く、群れをつくらない。背びれがないので個体識別も難しい。
 大村市出身の中村さんは大学生のころダイビングを始め、長崎ペンギン水族館就職後も趣味で海に潜ってきた。「水産県なのに海の中は人々に知られていない。魅力を伝えたい」。そんな思いで2011年に「海だより」を起業し水中ガイドに。そのうち、海岸から人が目視できる近さにいながら、生態は不明な点が多いスナメリに興味を抱き、ボートやカヤックで追い続けた。
 12年からはncmの番組「NAGASAKI水中散歩」に案内役として出演。自ら水中撮影も担う藤岡さんと協力し、昨年ようやく妊娠中のスナメリを映像で捉えた。中村さんはこの2年間、スナメリを撮影するために50日以上潜ったという。
 天野教授は、海の豊かさを示す指標としてもスナメリを継続して調査する意義を強調する。中村さんは「今後もっといい写真や映像を撮影し、皆さんが環境を考えるきっかけを提供したい」と話す。
 ncmは26日午後7時から、同番組総集編で今回の映像を再放送する。

スナメリの鮮明な水中映像を撮影した中村さん(左)と藤岡さん=長崎市、ダイビングサービス海だより

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