結婚したらキャリア形成をあきらめなくてはいけないのか?

子育て支援策は、かなり充実しつつありますが、依然として少子化が続いています。

その要因は未婚化、晩婚化、晩産化などが言われていますが、それらの背景の一つに、結婚・育児とキャリア形成との両立の難しさもあるようです。


若い人ほど「結婚とキャリア形成」両立の難しさを実感

図表は「結婚したため自分の望むキャリア形成ができなくなった」と回答した人の割合を性・年代別にみたものを夫婦の就労形態ごとに示したものです。いずれの就労形態でも、男女ともに若い年代ほど回答割合が高いです。若い人の方が、結婚とキャリア形成との両立の難しさを感じている人が多いようです。

また、就労形態別にみると、専業主婦やパートの20代女性では3割を超えています。結婚や夫の転勤を機に仕事を辞めて専業主婦になったり、夫の扶養枠内でパートとして働くなど、結婚によって働き方を調整せざるをえなかったために、キャリア形成をあきらめた女性たちの意識を反映しているのかもしれません。

若い男性も「家庭とキャリア形成」両立の難しさを感じる

さらに、男性に注目しますと、夫婦ともにフルタイムの共働き家庭では20代、30代の若い男性も、女性と同じくらいか、それ以上に「結婚したため自分の望むキャリア形成ができなくなった」と回答しています。

共働き家庭が増え、夫婦が協力して家事・育児をすることが求められています。男性の育児休業の取得義務化が議論されるなど、夫婦で協力して子育てをする社会へと移行しつつあります。こうした中で、若い男性の中には、子育てのために家庭を優先して働いて、転勤や転職、そしてもしかしたら昇進も諦めなくてはいけないと思っている人もいるのかもしれません。

どのように家事・育児をしながら、仕事面でも自分の能力を発揮して働くことができるのか、若い女性のみならず男性も、家庭とキャリア形成との両立の難しさを感じているようです。

結婚や出産がキャリア形成にマイナスに働かないように

少なからず若い世代は、キャリア形成に危機感をもっています。人生100年時代といわれる中、若い世代は、あまり公的年金を当てにしていません。技術の進歩に対応して、スキルを身につけないと働き続けることができないと思っています。

また、自分のキャリア形成の見通しが持てないと、子育てに踏み切れないという女性もいます。たとえば、大学院に行って修士号を取得してから結婚、出産をした方が、育児休業から復帰した後も自分のキャリアを活かして働けるのではないかと思い、出産を後回しにしている人もいます。

それから、転勤のある会社で働いている人は、転勤が自分だけでなく相手の仕事に影響を及ぼしてしまうことを考えると、結婚に踏み切れないという人もいます。男女問わず、結婚相手がやりがいをもって仕事をしているのに、自分の転勤が相手のキャリア形成の邪魔をするかもしれないと思うと、結婚を躊躇してしまうというのです。

本人の意向を配慮して転居の伴う異動を命じる会社が増えていますので、自分のライフイベントを優先することもできますが、キャリア形成のことを考えると、難しい決断を迫られることには違いありません。

ですから、男女ともに結婚や出産がキャリア形成にマイナスに働かないように、両立してもキャッチアップできる環境を用意することが必要です。そうしないと少子化も止まらないと思います。

子育て世代に学び直しの支援を

そのためには、男女とも子育て世代に学び直しの支援も重要です。

たとえば、育児のために一度会社を辞めて専業主婦になっても、納得のいくタイミングで再就職できるための「学び直し」。女性が再就職のために必要なスキルを習得するための講座が大学などで実施されています。

それから育児と両立して働きながらキャリアアップを目指すための「学び直し」。たとえば、育児休業中は、復帰後の自分の生き方や働き方を考え直す期間でもあります。男女ともに育児休業を、次のキャリアに向けての助走期間と捉えて準備ができるようなサポートがあれば、復帰後の仕事に対するモチベーションにもよい影響をもたらすと思います。

これからの人生100年時代、若い人の中には社会の変化に合わせて働き続けるために、自分も成長しなければならないという危機意識を持っている人は多いです。男女ともに結婚や子育てがキャリア形成を阻むものとならないよう、そして誰でも自分が望むライフデザインを描けるような社会の構築が望まれます。

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