次第に確認される異常 心支えた周囲の言葉

【連載】大空といつまでも 医療的ケア児と家族の物語<4>

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1歳の大空君を自宅に訪ねてきた野間田さん=長崎市内(光都子さん提供)

 出口光都子(みつこ)さんは18トリソミーの赤ちゃんを生むと家族で決めた後、確認しておきたいことがあった。夫も心配していたように、不慮の事故などで夫と自分に万一のことがあったら、誰が育てていくのか。長崎こども・女性・障害者支援センター(長崎市)に電話で相談すると、重度の障害者を受け入れている諫早市小長井町の「みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家」を紹介された。
 その後、長崎大学病院に妊娠継続の意志を告げると、死産のケースも少なくないとの説明を受けた。だがしばらくは、胎児は順調に大きくなった。「18トリソミーはうそであってほしい」と願わずにはいられなかったが、次第に体重が増えなくなった。羊水過多や脳梁(のうりょう)欠損といった異常も確認された。
 生むからには前向きになろうと決心したはずなのに、1人になると涙がこみあげる。「この子とあとどのくらい一緒にいられるのだろう」。そんな心を癒やしてくれたのは、当初、出産を予定していた「プロジェクト・マム さくらの里助産院」(長崎市)の野間田真紀子さんだった。
 胎児の心音を聴診器で確認しながら「わあ、すごい元気だねえ。頑張ってるねえ」と語り掛け、おなかを触りながら「ほらお母さん、ここが頭で、こっちが足だよ」と教えてくれた。お灸などで体のケアをしてくれるだけでなく、新たな命を慈しむ姿に救われる思いだった。
 2016年3月22日。この日は4月に中学に入学する長女心実(ここみ)さんの物品購入日で、夫は付き添いのため仕事を休んでいた。ちょうど光都子さんに朝から出産の兆候があり、大学病院に電話するとすぐに来るよう言われた。心実さんを近所の同級生の保護者に頼み、夫の車で病院に向かった。
 夫妻は病院と事前に出産時の対応を話し合っていた。生命維持のためだけに医療機器に頼るのは自然に反するのか。定められた寿命に従うべきなのか。考えた末、数時間の命をつなぐだけなら機器は使わず、将来に希望が持てるようなら気管挿管などの処置を、とお願いした。
 病院の一室で胎児の心拍を測っていると、数値が何度か大きく下がり、そのたびに別室の看護師が走ってきた。帝王切開で赤ちゃんを取り出すことになり、手術室に運び込まれた。ライトに照らされた瞬間、全身から血の気が引いて震え出した。「これでもうこの子の命が終わってしまうのではないか」。付き添っていた看護師がぎゅっと左手を握ってくれた。「出口さん、大丈夫ですよ」。温かい手と言葉が心を落ち着かせてくれた。

【次回に続く】
※この連載は随時更新します。