羊毛のような渦巻銀河「NGC 4237」

これはハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「NGC 4237」と呼ばれる銀河の画像です。NGC 4237は「かみのけ座」という星座の方向、約6000万光年の距離に位置しています。見た目の通り渦巻銀河ではあるのですが、よく見てみると渦巻の「腕」はそれほどくっきりとは見えておらず、腕どうしの区別もはっきりしないように見えます。このような銀河は「羊毛のような」と形容されており、腕がはっきりした「グランドデザイン渦巻銀河」とは対照的です。

ただ、NGC 4237を研究する天文学者たちは腕ではなく中心部で明るく輝く「バルジ」のほうに興味を持っていました。バルジを研究することにより、渦巻銀河がどのように進化してきたのか、ほとんどの渦巻銀河の中心に潜む超大質量ブラックホールがどのように成長してきたのかを知ることができるためです。実際、銀河中心のブラックホールの質量がバルジの質量に関係しているとも言われています。しかしなぜそのような関係になるのかはまだ解明されておらず、天文学者たちはNGC 4237のような渦巻銀河を研究することでその謎を解こうとしています。

一方で羊毛状の渦巻銀河がなぜこのような腕の形になるのかについては、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線観測やコンピューターシミュレーションによる再現の試みなどが行われ、研究が進められています。

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Credit: ESA/Hubble & NASA, P. Erwin et al.
Source: ESA/Hubble
文/北越康敬

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