神戸モトコーの老舗喫茶「ホワイト」74年の歩みに幕 27日閉店

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74年の歴史に幕を下ろすことになり、「お客さんに恵まれた」と話す安原初子さん=神戸市中央区元町高架通

 JR神戸線元町-神戸間の元町高架通商店街(通称・モトコー、神戸市中央区)で、終戦翌年に開業した喫茶店「ホワイト」が、27日の営業を最後に閉店する。店主の安原由明さん(84)、初子さん(84)夫妻にとって、2人の出会いの場でもあった店は人生そのもの。閉店を惜しむ常連客が絶えない中、長年抱いてきた思いをあらためて強くした。「生まれ変わってもモトコーで喫茶店をやりたい」(長尾亮太)

 「ぼくはあと5年は生きるで。またね」。70代後半の男性客が店を去り際、初子さんに声を掛けた。「私たち夫婦が年配だから、来てくれる人も年配なのよ。本当にお客さんに恵まれた」と感慨深げに話す。

 ホワイトは1946(昭和21)年、初子さんの叔母夫婦が開業した。この年、10歳だった初子さんは旧満州(中国東北部)から引き揚げてきた。夏休みには、ホワイトの店頭で1本5円のアイスキャンデーを売ったことを、今も懐かしく思い出す。中学を卒業後も、洋裁学校に通いながら店を手伝った。

 その後、叔父の親戚の由明さんと27歳で結婚し、店を譲り受けた。「(一帯は)今では信じられないほど人通りが多く、営業を終えるのは深夜の11時。大みそかは『NHK紅白歌合戦』が終わるまで開けていた」と、往時のにぎわいを振り返る。

 95年1月の阪神・淡路大震災では自宅が半壊する被害を受けたが、ほぼ無傷だった店は翌月に再開。2011年3月の東日本大震災では発生の数カ月後、神戸市商店街婦人連合会の副会長として、岩手県の釜石、宮古両市を訪問。現地の商店関係者らを励ました。その後は、同連合会の会長も6年間担った。

 1~7番街で構成されるモトコー。店は6番街の一角で74年間、のれんを守ってきた。ホットコーヒー230円、トースト70円…。長年のたばこの煙や日焼けのためか、壁に貼られたメニューは茶色くなっている。

 昔ながらの雰囲気と値段は純喫茶ファンから愛されてきたが、JR西日本が耐震補強などを理由に高架下の再整備を開始。6番街の店舗は、今月末までの退去を求められていた。

 「モトコーで長く商売させてもらったので、よそへ移ろうとは思わなかった」と閉店を決断した初子さん。「これまで人に負けないくらい働いたので、第二の人生を謳歌(おうか)したい」と目を輝かせる。