元B・A・R代表、F1開催延期などによる収益減が原因で「事業継続に行き詰まる危険性」を示唆

 新型コロナウイルスの影響でF1の開催が凍結されている現状に関連して、イギリスの四輪モータースポーツ組織『モータースポーツUK』の会長を務めるデビッド・リチャーズは、ふたつの具体的なチーム名を挙げながら、F1のオーナーであるリバティ・メディアは小規模チームを財政面で保護すべきだと語った。

 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、F1はすでに開幕からの8戦が中止ないし延期となっており、その後の数レースについても同様の措置を迫られる可能性が高い。

 F1全体として収益面での大打撃を受け、各チームは今後資金不足の影響に耐えなければならない。かつてB・A・Rやベネトンのチーム代表であったリチャーズは、今の状態が長引けば、比較的資金力の弱いチームにはその存続自体が脅威にさらされるかもしれないと述べている。

「今の危機が収束するまでの間、多くのことはF1がどういった行動をとるのかにかかっている」と、リチャーズは『PA通信』に語った。

「F1には、グリッド後方のチームを失う余裕などないはずだ。そうなれば悲惨な結果につながる」

「バーニー(・エクレストン)は、状況が厳しいときには小規模チームの面倒もみる、と約束していた。リバティ・メディアが彼と同じ感覚を持っていることを願う」

「メルセデスやルノーのような大きいマニュファクチャラーは大丈夫だろう。だが、たとえばウイリアムズやレーシングポイントなどのチームにとっては、たやすい状況ではない。事業の継続に行き詰まってしまう危険性もある」

「この困難な時期を乗り切れるだけの資金が調達できないモータースポーツ運営会社が出てくるかもしれない。かなり難しい挑戦になるだろう」

 ウイリアムズF1は、パフォーマンス低迷が続いた過去数シーズンにわたって財政難に苦しんできた。一方のレーシングポイントF1は、ランス・ストロールの父であるローレンス・ストロールが率いる資金豊富なコンソーシアムによってその財政的基盤が守られており、チーム存続という点では比較的優位に立っている。

かつてB・A・Rやベネトンでチーム代表を務めたデビッド・リチャーズ

■「オーストラリアGPは開催1週間前に中止できたはず」

 また開幕戦オーストラリアGPの中止決定が遅れた件について、リチャーズはF1にとっても判断の難しい局面だったと考えているが、それでも土壇場での判断については批判的だ。

「オーストラリアの件について、リバティの決断は非常に遅かった」

「非常に難しかっただろう。私も、簡単な決断などというつもりは毛頭ない。しかしヨーロッパ各国から多くの人間がオーストラリアへ移動したことを思えば、適切ではなかった」

「開催の1週間前には中止という決断ができたはずだ」

「新たなシーズンの開幕に向けては、盛り上がりも大きくなるし、期待感も高まる。後知恵で言うのはたしかに簡単ともいえるが、もっと良い行動がとれたはずだということに異論をさしはさむ人はいないだろう」

「ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、この件に関して多くの人の気持ちを代弁したと思う。彼は本当に成熟した大人になった。F1の良い面、意識の高さを表す存在だ。自分の正直な気持ちを声に出すことを恐れていない。そのことについて、私は称賛を送りたい」

2020年F1開幕戦オーストラリアGP ゲートのオープンを待つファン

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