ゴルゴ13でわかる武田薬品の血漿分画製剤TAK-888。新型コロナ(COVID-19)治療の切り札になるか?

製薬会社の友人からこのようなメールが届いた

「これが成功したら新型コロナウイルスに抜群に効くでしょうね。あと、この記事を読んで以前ゴルゴ13でエボラの時に感動的なストーリーがあったのを思い出しました。」

このニュースとは、武田薬品が発表した開発品TAK-888に関するもので、回復した患者の血漿から採取した病原体特異的な抗体を濃縮して作る新コロナウイルスの治療薬の開発品のニュースです。Insights4 Pharmaでは、製薬関連のニュースに特化したウエブメディアです。開発品、臨床試験には注目をしており、富士フィルム富山化学のアビガン、ギリアド・サイエンシズのレムデシビルをはじめとした開発のニュースが発表される中で、武田薬品のTAK-888も非常に興味があります。
しかし、気になったのが「ゴルゴ13」です。
通常はInsights4では記事としては取り上げない漫画の内容ですが、世界的なパンデミック、日本でも各地で外出自粛要請が出る中で、新型コロナウイルスの治療薬の開発の状況の理解にとても便利なことがわかりました。

クルーズ船でのパンデミックを治療薬で防いだ「ゴルゴ13」

さて、ゴルゴ13ですが、ご存知のように漫画の主人公で暗殺者、医者でも製薬関連の会社の人ではなりません。この感動的なストーリーとは、ゴルゴ13の、114巻「病原体・レベル4」で、エボラ出血熱に感染し、致死までの僅かな時間にゴルゴが治療薬である血清を作ったというストーリーで1995年の作品です。

アメリカ軍によって沖止めされたクルーズ船の中で猿のためにエボラに感染したゴルゴ13が、エボラ・ウイルスの抗体を持つ猿を見つけ、注射器で猿の血液を採取し、自動車のタイヤに猿の血液を入れた試験管をくくりつけ「遠心分離」により血清を作製。自らに投与することでボラ・ウイルスを押さえ込む。ゴルゴは血清をその場に残し、客船の乗員1240名の命を救ったというストーリーです。友人は続けます。

ゴルゴ13 114巻「病原体・レベル4」

「この遠心分離の発想がすごかった。今回のコロナにも参考になる部分があります。今回は、コロナに感染した人の血液を採取して、遠心分離して二層に分かれて得られる血清を採取すればいいはずです。ただ、不純物などを取り除く必要があるので、それを医薬品にするには認可も必要で大変です。」

そして、ゴルゴ13はフィクションですが、この「理論」と同じ方法「血清」で新型コロナウイルスの医薬品が作れるというのは理論的に可能です。
日本では武田薬品がこの新型コロナウイルスの治療薬を同じメカニズムで作り出すと名乗りを上げている。

武田薬品、治療薬としての「血漿分画製剤」の対策チーム立ち上げと開発を発表

さて、日本ではいち早くこの「血漿分画製剤」の治療薬の開発を武田薬品が名乗りを上げています。
この開発品がTAK-888です。

TAK-888は、新型コロナに感染して回復した人の血液の中にある血漿(けっしょう)成分から、抗体を含む「免疫グロブリン」と呼ばれる成分を抽出して精製します。抗体をほかの患者に投与することで、患者の免疫が活性化され、病状を軽減することが期待できる。
出典:産経新聞「武田薬品が新型コロナ回復者の血液収集、治療薬は最短9カ月で」より

武田薬品は3月4日に同社プレスリリースで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬としての血漿分画製剤である抗SARS-CoV-2ポリクローナル高免疫グロブリンTAK-888の開発を発表しています。

高免疫グロブリンは、これまでに重症急性ウイルス性呼吸器感染症の治療薬として有効であることが示されている血漿分画製剤であり、COVID-19の治療選択肢となる可能性があります。
出典:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬としての血漿分画製剤開発の開始について

この発表の中で武田薬品は、TAK-888は「新型コロナウイルスに感染したハイリスク患者」向けのものであることも発表しています。このことはとても重要だと思います。今回の新型コロナウイルスの特徴として、免疫力が低い高齢者の方の重症化が目立っております。このハイリスクの方に有効な治療薬が開発されることが「不安」を払拭する切り札になると思います。

治療薬としては最短で9ヶ月かかるとのことですが、期待したいと思います。

ネガティブなニュースばかりですっかり「コロナ疲れ」に。。。

さて、日々の報道では、新型コロナウイルスに関するネガティブな情報ばかりで私自身も、コロナ疲れになっています。
また一般のニュースではあまり医薬品の開発状況に関してのニュースは報道されていませんが、世界中の製薬会社や研究機関、大学が治療薬の開発に向けて動きを開始しています。

先日「アビガン」のニュースが報道されました。実際にすごいスピードで臨床開発も開始されたギリアド・サイエンシズのレムデシビルの臨床結果は4月には発表される予定で期待が集まっています。今後も多くの有効な治療方法や可能性に関して報道されると思います。

コロナ疲れの今日この頃であすが、製薬業界でどのような動きがあるのかをすこし追いかけてみるのもいいかもしれません。この新型コロナウイルスとの「戦争」の強力な武器となる「治療薬」を世の中に出すために世界の製薬関連企業がどのような試みをしているのかご覧になることですこしポジティブな気持ちになるかもしれません。Insights4ではこのような治療薬やワクチンに関する進捗もまとめています。ゴルゴ13の「病原体・レベル4」と併せてご活用ください。

世界の新型コロナウイルス治療薬の開発状況のニュースはこちらで>>>

投稿:Insights4 Pharma 前田静吾 @seigomaeda
監修:共二兼好

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