つみたてNISA初めての暴落…やってはいけないことは?長引いたときの対応

世界的な規模で感染が拡大している新型コロナウイルス。毎日のように感染者のニュースが報じられています。学校が休校になったり、仕事が減ったり、東京オリンピックまで延期されたりと、さまざまな変化が出てきています。

株式市場でも、コロナウイルスの拡大をきっかけに世界同時株安が発生し、底が見えなくなっています。

ですから、つみたてNISAに取り組んでいる方は特に、「このままで大丈夫だろうか」と思われるのも無理もないでしょう。そこで今回は、つみたてNISAの初めての暴落にあたり、やってはいけないこと・やるべきことを紹介します。


市場の雰囲気を一変させた「コロナショック」

つみたてNISAの投資信託の多くは株式に投資しています。ですから、ここでは日本の株式市場がどの程度下落しているのか、この約1年間の日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の動きから確認してみましょう。

日経平均株価は日本を代表する225銘柄の株価をもとに計算されます。2019年3月から10月ごろまでは20,000円から22,000円程度、11月から2020年2月ごろまでは22,000円から24,000円程度で推移していることがわかります。

しかし、2020年2月下旬からは新型コロナウイルスのリスクが表面化し、株価は一気に下落しました。24,000円近かった日経平均株価が、2月末には21,142円と22,000円を割り込み、3月19日の終値16,552円83銭まで、1か月程度で実に7,000円以上も下落したのです。

TOPIX(東証株価指数)も、おおよそ日経平均株価と同様の動きを見せています。

TOPIXは東証1部に上場しているすべての銘柄の時価総額をもとに計算される株価指数です。時価総額は「株価×発行済み株式数」ですので、株価が上がればTOPIXも上がります。日経平均株価と同様、2020年2月から3月にかけて一気に下落していますね。グラフの形も、日経平均株価と似ていることがわかると思います。

もうひとつ、アメリカのダウ平均株価もチェックしてみましょう。

アップル・マクドナルド・ディズニーなど、アメリカを代表する世界的企業30社の株価をもとに算出されるダウ平均株価(ダウ工業株30種)も2月下旬から急落。2020年2月12日の史上最高値29,551ドルから3月23日の18,591ドルまで、実に11,000ドル近くも下落したのです。

このように、「コロナショック」は市場の雰囲気を一変させてしまいました。
しかも、まだ下落がとどまる気配が見えません。

各国の政府や財務相などが景気刺激策を検討・実施しています。日本でも現金の給付や商品券の配布などが議論されていますが、それらが消費に反映されるのは時間がかかるかもしれませんし、景気刺激自体が一時的もしくは効果薄かもしれません。

なにより今回「パンデミック」と認定された以上、コロナウイルスを世界的に克服しなければ根本的な解決にはならないでしょう。経済への影響は長引くと考えられます。もう一段大きな下げ相場が来てもおかしくはありません。

今一番やってはいけないのは「つみたてNISAをやめること」

株式市場がこんな状態ですから、つみたてNISAで購入している投資信託も、一時的に大きく値下がりしているでしょう。つみたてNISAに取り組んでいる方の中には、値下がりが心配でしかたがない方もいるかもしれません。

だからといって、今つみたてNISAをやめるのは、一番やってはいけないことだと筆者は思います。「つみたてNISAをやめる」とは、積み立てている資産を売ることはもちろん、積み立てを止めたり、積立金額を減らしたりすることを指します。やめてはいけない理由は、いつまでも下がり続ける市場はないからです。

投資の利益や損失には、「含み益・含み損」と「実現益・実現損」があります。含み益・含み損は、持っている商品を売ったとしたら得られる利益・損失のこと。売ったら利益になるなら含み益、損失になるなら含み損といいます。含み益・含み損は、これからの値動き次第で増減します。また、含み益が含み損、含み損が含み益になることもあります。

対する実現益・実現損は、商品を売るなどして実際に出た利益や損失のこと。商品を売ってしまったら、その後でいくら値動きしようとも実現益・実現損は変わりません。

おそらく今、つみたてNISAで含み損を抱えている人がほとんどだと思います。だからといって、「やはり儲からないじゃないか」と、売って実現損にしてしまうと、大きくお金を減らすことになってしまいます。

そうではなく、含み損を抱えながらも、つみたてNISAを利用して淡々と長期・積立・分散投資を続けることが大切です。ドルコスト平均法の効果により、少しずつ平均購入価格は下がっていきますので、値上がりに転じた際に利益を得られやすくなります。

それに元々余裕資金でつみたてNISAを始めている人が多いのではないでしょうか。焦って、つみたてNISAをやめたところで、今そのお金は必要ないはずです。10年後・20年後に必要な金額を貯めるために資産形成をしているという目的に立ち返って、コツコツと続けていきましょう。

市場は100年に1度の危機も乗り越えてきた

前回の大暴落、リーマン・ショックを振り返って考えてみましょう。2008年9月、アメリカの大手投資銀行のひとつ、リーマン・ブラザーズが破綻しました。この影響が世界各国に飛び火して発生した株安をリーマン・ショックといいます。100年に1度ともいわれた金融危機のインパクトは大きく、先に紹介した日経平均株価も一時7,000円を割り込むほどでした。

もちろん、アメリカの株価も大きく下落しました。しかし、その後どうなったでしょうか。以下はS&P500という、アメリカの大型株500社の株価で作る株価指数の推移です。

2008年9月に発生したリーマン・ショックの影響は半年ほど続き、アメリカの株価はリーマン・ショック前の半分ほどになったのです。しかしそこから数年でリーマン・ショック前の水準に回復し、さらに大きく株価を伸ばしてきたのです。100年に1度の金融危機も、市場は乗り越えてきたのです。

実際、リーマン・ショック時に慌てて資産を売ってしまった人もたくさんいるでしょう。そうした方々は、売った後の上昇の恩恵を受けられなかったことになります。しかしここで下落にも動じずに、淡々と投資を続けてきた人は、資産が倍増していることになります。

また、上図はリーマン・ショックが起こった2008年9月から、S&P500に毎月1万円積み立てた場合の推移を表します。本稿は3月26日に執筆していますので、2020年3月末のS&P500及びドル円の数値は、3月25日時点のもので代用しています。

これによると、2020年3月末時点で積立元本は139万円、これに対し資産総額は246万円となっており、運用益は107万円あります。なお、2020年1月末時点では積立元本は137万円、資産総額は312万円で運用益は175万円もありました。

リーマン・ショックが起こってから積み立てを開始していた場合、今回の下げ相場が来てもプラスを保てていることが凄いと思いませんか?
今回のコロナショックも同様に、きっと乗り越えられるはずです。

つみたてNISAでこれからすべきこと

以上を踏まえて、つみたてNISAを使ってこれからすべきことを3つ、まとめて紹介します。

1.下落に焦らず、淡々と積み立てを続ける
コロナウイルスの問題がいつ解決するかはわかりません。早く終息してもらいたいものですが、長引くことも十分考えられます。そして市場もこれからさらに下落するかもしれません。しかし、そうした下落があっても焦らずに、淡々と続けましょう。

そうすることで、安いときはたくさん、高いときは少ししか買わないようになるので、平均購入単価を下げる期待ができます(ドルコスト平均法)。すると、将来値上がりしたときに利益を得やすくなるでしょう。

2.国際分散投資を行う
コロナウイルスの影響で、世界中のどの市場もおおよそ下落しているでしょう。そこから、どれがいち早く回復するか、どれが大きく回復するかはわかりません。ですから、もし国内の資産にしか投資していない、ということであれば、国内だけでなく先進国・新興国に投資する投資信託も一緒に購入していくことをおすすめします。投資先の地域を分散すると、リスクを低減させ、堅実な運用に期待が持てます。

今回、株は国内も海外も全面安になっていますが、米国債の債券価格は急上昇しています(金利は急低下)。株と債券を組み合わせることで、値下がりリスクを低減することが改めて確認されました。

3.下がったら金額を増やすのもあり
コロナウイルスのせいで株価、さらには投資信託の基準価額が下がるのは仕方のない部分があります。しかし、見方を変えれば、本来は考えられない安値で投資信託を買う絶好の機会だということもできるでしょう。こうしたときにむしろたくさん購入しておけば、コロナウイルスの問題の解決後に大きく利益を伸ばす期待ができます。


コロナウイルスの広がりは想像以上で、まだ収束しそうにありません。しかし、つみたてNISAですべきなのは、淡々と続けることにつきます。不安な気持ちはわかりますが、コロナショックもきっと乗り越えられるはず。そう信じて、一緒に乗り切っていきましょう。

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