欧州で5倍増 「オールシーズンタイヤ」はスタッドレスと何が違う?

急な降雪に対して、首都圏周辺のドライバーは非常に難しい選択を迫られます。今シーズンは大方の予想通り「暖冬」でしたが、大丈夫と高を括っていたら3月14日に関東地方は降雪に見舞われました。こんな時こそ「転ばぬ先の知恵」、欧州で人気のオールシーズンタイヤのお得度を紹介します。


オールシーズンタイヤとは

オールシーズンタイヤとは、まさに「読んで字のごとく」このタイヤは日本で言えば四季を通じて乗ることができる「全天候型」タイヤのことです。

タイヤ自体は販売されていたのですがこれまでの「M+S(マッド&スノーの略)」という規格は北米では「サマータイヤよりは積雪路を走れる」というレベルでした。

しかし昨今では「積雪路を安心して走れる」という欧州型のオールシーズンタイヤがトレンドとなっています。これ自体はEUの規制に伴って「スノーフレークマーク」と呼ばれるものが付いており、欧州では2010年に対し2017年の段階での本数は500%増と、需要も増えています。

欧州ではオールシーズンタイヤへの切り替えが顕著、新しいトレンドが生まれています

メリットは?

オールシーズンタイヤのメリットは、急な降雪でもタイヤの交換が不要なことです。過去のデータを見るとここ数年間でも3回(2014年、2016年、2018年)、首都圏は大雪を経験しています。天気予報を見てあわててカー用品店に駆け込む、しかし予約しなければ取り付けができない。そもそも在庫が無い。余計な出費がかさむ。さらに言えばシーズンが終わったらまた元のタイヤに戻る際にも交換工賃がかかる、など意外とコストは発生します。

しかしオールシーズンタイヤの場合はこれらが不要になることで

1. 急な降雪にも慌てずに済む

2. カー用品店に行く時間も不要

3. 交換したタイヤの保管場所も不要

4. 何よりも出費が抑えられる

などのメリットがあります。

横浜ゴムの新製品「BlueEarth-4S」とは?

「BlueEarth-4S」は東京地区での試験販売を経て今年の1月19日から発売を開始しました

今回、北海道旭川市にある横浜ゴムのTTCH(タイヤテストセンター北海道)」にて冬用タイヤの試乗会が行われました。新製品の正式名称は「BlueEarth-4S AW21」、事前の勉強会によればこのタイヤは同社のスタッドレスタイヤである「iceGUARD」のスノー技術と、エコタイヤである「BlueEarth」のサマー技術を投入することで雪道から高速道路までオールラウンドに使えるタイヤを目指しました。

高性能スタッドレスと比較

最初はテストコース内にある「氷盤試験路」。わかりやすく言えばスケートリンクのような環境でさらに水分も多く、人間が歩くことすら厳しいツルツルの「低μ路」です。ここを時速20km/hで走行して指定場所でブレーキをかけます。

元々横浜ゴムではオールシーズンタイヤの氷上使用はNGとしていますが、あえてスタッドレスタイヤと比較することでその能力差を体感してもらおうというのが狙いです。

両方のタイヤに共通しているのは車両の挙動が少なく安心してブレーキが踏めることです

写真で見てもわかる通り、スタッドレスタイヤの「iceGUARD6」とオールシーズンタイヤの「BlueEarth-4S」との制動距離には大きな差が発生します。スタッドレスタイヤの性能の高さはもちろんですが、一方でブレーキをかけた際の車両の挙動の変化などは「BlueEarth-4S」もかなり安定しており真っすぐ停まります。

雪上性能の高さに驚きを隠せない

続いては屋外に出て、スラローム走行をすることでタイヤの性能を体感してもらおうというテストです。

屋外では約40~50km/hでカラーコーンの間をスラローム走行してその性能を試しました

ここでは「BlueEarth-4S」の性能に正直驚きました。何度も言いますが、絶対性能はスタッドレスタイヤの方が優れています。しかし「BlueEarth-4S」の場合は高速道路も走れるオールラウンド性能を持つタイヤです。雪をグリップするフィーリング、言い換えるとコーナリング時にステアリングを切ってからタイヤのグリップが発生し、車両が方向を変えるまでのほんの短い時間の差というものは発生しますが、安定して走れることは間違いありません。

また雪上性能に影響する要素としてはタイヤのブロックなどにある縁(エッジ)の量が重要となってきますが、サマータイヤを100%とした場合「BlueEarth-4S」は167%、「iceGUARD6」は197%になっています。通常エッジを増やすと雪上では優れていてもドライ(オンロード)性能は低下してしまうのですが、「BlueEarth-4S」はその辺のバランスを両立させたタイヤなのです。

2種類のタイヤのトレッドパターンの違いがタイヤの性能や特性に表れています

今回は両方のタイヤを同じ速度で比較しましたが、「BlueEarth-4S」の場合は少し速度を落とせばスタッドレスタイヤに近い性能を導き出すことができます。この性能の高さには驚くばかりです。

どんな人にオススメか?

新しく作られたハンドリングコースではSUV向けのスタッドレスタイヤを体験しました

冒頭でお伝えしたとおり、普段はほとんど雪が降らない「非降雪圏」に住んでいる人は急な降雪には対応するのが大変です。ウインタースポーツを頻繁に行う、そのようなエリアにドライブするならばスタッドレスタイヤへの交換は必要ですが、普段高速道路も利用する人などにとってオールシーズンタイヤは最適といえます。

さらに言えば、都道府県ごとに微妙に規準は異なりますが、「冬用タイヤ規制」により急な降雪で高速道路に乗れなくなった場合でも「BlueEarth-4S」の場合は通行が可能です。

また逆に「降雪圏」に住んでいる人にとってはスタッドレスタイヤを外した春先に発生した急な降雪や、次のシーズンまでのサマータイヤの代わりとして装着するという考えもあります。

今後各タイヤメーカーからこのオールシーズンタイヤは数多く発表されることが予想されます。スタッドレスタイヤの場合は冬前に購入し装着というのがパターンですが、オールシーズンタイヤの場合はいつ装着してもOKです。「BlueEarth-4S」の場合、現在は19タイプが設定されていますが、今後は対応するタイヤサイズも増えていくはずです。冬が終わった今だからこそ、オールシーズンタイヤは旬ともいえるのです。

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