【新型コロナ】卒業式もまた… 「はれのひ」被害22歳、成人式に続き 

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一昨年に地元の逗子市で成人式に参加した関本さん。「はれのひ」でレンタルした草履とかばんが届かず、親戚から借りて間に合わせた(本人提供)

◆記念ライブも縮小、「普通に祝いたかった」

 一昨年の成人式で「はれのひ」事件の被害に遭った大学生が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で災難に再び見舞われた。県内の私立大学を卒業した関本玲菜さん(22)は式典が中止となり、所属する音楽系部活動の記念ライブも大幅な縮小を強いられた。人生の節目となる晴れの舞台を台無しにする“三重苦”。仕方ないとは思いつつも、心は置いてきぼり。「特別でなくていい。当たり前に、普通にお祝いしたかった」。寂しさが募り、ため息が漏れる。

 卒業シーズンの3月半ば。街中ではかま姿の学生と擦れ違い、関本さんは視線を落とした。「いいなあ」。数週間前の試着でスマートフォンに収めた自身のはかま姿を切なげに眺める。鮮やかな白と紫色のはかまに合わせて髪の毛を明るく染め、学生最後の日に備えていた。

 2千人超の卒業生や親族が都内で集い、盛大に門出を祝うはずだった。16日の本番を前に胸躍らせながらレンタル着物店ではかまを選んだ。予約を入れるつもりだった2月27日、大学からウイルス禍を理由に卒業式の中止が発表された。

 「友達の晴れ着姿も見たかった」。卒業証書は郵送で自宅に届く。学生生活の区切りを迎えた実感は湧かず、「またか、という気持ち。呪われているのかな…」。2年前の「悪夢」をフラッシュバックさせた。

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 2018年1月5日。成人の日を3日後に控えた関本さんは、会員制交流サイト(SNS)で必死に情報を集めていた。成人式の1週間前までに自宅に届く予定だった草履、かばんが届かない。予約先は、後に破産する振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」だった。

 店舗に何度も電話するが、つながらない。すがる思いで店舗が入る商業施設の受付に連絡すると、「はれのひに従業員がいない。この電話も朝から鳴りっぱなしです」。母あすかさんと途方に暮れた。

 救いは、振り袖が手元にあったこと。撮影に臨んだ数カ月前、「お荷物になるのでいったん引き取ります」と繰り返す従業員に違和感を覚えつつも、持ち帰っていた。草履とかばんは親戚に借り、何とか成人式に間に合わせた。

 だが、前撮りの写真のアルバムは、手元に届かぬままだ。「高いお金を払ってくれたのに、親に申し訳ない」。喜びよりも、やりきれない思いが募った。

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 10年間明け暮れた「青春」の集大成にも水を差された。中学、高校に続き大学でも音楽系の部活動に所属し、卒業要件を満たした昨秋以降は残るキャンパスライフのすべてを注いだ。卒業ライブを計画していたが、新型コロナウイルスの影響で部活動は禁止された。

 学生生活を彩った音楽に区切りを付ける舞台。OBやOGも迎えて校内のホールで催す予定だった。中止も検討したが、「卒業ライブまではなくせない」。後ろめたさを感じつつも自由参加で開催に踏み切った。

 後輩が会場確保に駆け回ったが、感染拡大を恐れるライブハウスに断られ続けた。開催も5日間から2日間に縮め、出演バンドは110組から30組に減らした。「本音を言えば、物足りなさもある」

 3月に予定されていた入社前の研修も4月以降に先送りされた。「節目を感じられない。どんな気持ちで社会人になったらいいんだろう…」。戸惑い、こぼれ落ちた時間をいつか取り戻したいと思う。「どんな形でもいい。卒業式をきちんとできる機会がほしい。支えてくれた人たちに、感謝の思いを伝えたいから」