不便に寄り添う言葉を

 新型コロナウイルスの感染者は世界全体で60万人を超えた。各国首脳は感染拡大阻止に向けて国民に協力を求めるが、応じない人もいて焦りを募らせている▲ドイツや米国では若者らが公園などで「コロナパーティー」と呼ばれる騒ぎを繰り広げ、社会問題化。原則外出禁止となっているイタリアでは、ジョギングやレジャーに出掛ける人が後を絶たないという▲カナダでは、国民への自宅待機要請が守られていないとして、トルドー首相が「いいかげんにすべきだ」と不満をあらわにし、規制の強化も示唆している▲危機意識が低いように見える行動には「自分だけは大丈夫」と思い込む「正常性バイアス」が働いているとされるが、その根底には不安な現実から目をそらしたいとの意識もあるという▲抑圧された自粛生活の疲れから、行政の要請に反発してしまう傾向があるとも指摘される。それだけに自粛を求める側には、不便を被る市民に寄り添う言葉が求められる▲東京都などが週末の外出自粛を求めたことで、28日の都内の繁華街や観光地の人影はまばらだった。呼び掛けが奏功したと言えそうだが、新型コロナとの闘いは長期戦が予想される。政府や自治体には自粛生活の参考になるような、より具体的な対処法を示し、市民の不安解消に努めてもらいたい。(久)

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