「マンガ」を楽しく学べるスクールに老若男女が集結! 大阪で注目を集める「堀江アートスクール」の戦略とは? 大手出版社で各賞受賞のクリエイターが本格レッスン。スクール塾長:伊藤曦琳(漫画家)が語る「マンガスクール」の幅広いニーズ

「絵画教室」でなく、マンガ・イラストを教える

「堀江アートスクール」の取り組み

大阪・堀江にここ最近、注目を集めている「スクール」がある。2016年7月に開校した「堀江アートスクール」。下は6歳から、上は70歳代まで、幅広い年齢層の生徒さん150名以上が通っている。

 名前は「アートスクール」だが、決して“絵画教室”ではない。実は「マンガ・イラスト」をメインで教えているスクールだ。

 運営は、株式会社コミックエージェント。サラリーマンを経て、起業した伊藤貴志代表取締役と、中国出身の伊藤曦琳(いとう しーりん)取締役。夫婦で経営する会社で、堀江アートスクール開校後の2019年4月に法人化した。

スクールで塾長・講師を務める伊藤曦琳(いとう しーりん)は、幼いころからマンガに取り組み、小学館や集英社などの大手出版社でも、数々の賞を受賞した、実績のあるクリエイター。「漫画を描くことの楽しさや喜びをもっと多くの人に伝えたい」という思いで夫の貴志社長と二人三脚でスクールを運営。

 「堀江アートスクール」では、指導スタッフの育成や生徒への指導はもちろん、外部の漫画家やイラストレーターなどとの連携を進め、将来的な組織化を目指す取り組みも進めている。

 今年2020年の夏で開校から4年を迎え、一定の実績を積み重ねてきた「堀江アートスクール」での取り組み。ここ最近は、手ごたえを感じることが多いものの当初は苦難の連続だったという。

「マンガスクール」の幅広いニーズを実感

~スクール塾長:伊藤曦琳(いとう しーりん)が語る

「マンガ・イラストのスクールを開校して、まず苦労したのは、やはり生徒集めでした。集客の告知を始めて気づいたことは、特に関西では、多くの方が、習い事の選択肢として“マンガ”という意識がまだまだない…ということでした。開校前にインターネットで検索すると、東京ではマンガスクールが何件もヒットしたのですが、大阪ではまだ少なかった。なので、“マンガスクールを大阪で始めればいける…”と思ったのですが、実際は、そうではありませんでした。絵を習うというと、やはり絵画教室のイメージが一般的で、子どもの親に理解してもらうのも苦労しました。」

今でも“マンガを習う”という意識は、まだまだ一般的とは言えないかも知れない。ただ、地道にスクール運営を続ける中で、マンガを描くこと、、描き方を習うこと、、、に対して、年齢や立場を越えた、幅広いニーズがあることにも気づいたという。

「マンガ・イラストのスクールとして認識してもらってからは一気に広がった感じがして、子どもから大人まで、遠方からも通ってもらえて、ニーズはあると実感しています。孫と一緒に通う祖母、子どもと一緒に通う母親というパターンもあります。また、子どもの頃に親からマンガやイラストを反対されて描くことができず、大人になって自分のお金で通えるようになったから思い切り描いてみたくて通うという方もいます。」

専門学校や大学など、プロを意識した生徒がメインで学ぶ場所ではなく、もっと気軽にマンガを楽しんでもらいたい…という思いから、幅広いニーズへの対応を心がけている。このため生徒さんは、千差万別の想いを抱えて、スクールに通っているという。
 今や、下は6歳から上は70歳代まで、、、まさに老若男女が集結する。開校当初に想像していた以上に、生徒さんの年齢構成は幅広い。
 スクールの運営で大事にしていることは「楽しい」こと。そんなモットーも、注目を集め始めている要因かも知れない。

「マンガを描くこと」だけが大切ではない

~スクール塾長:伊藤曦琳(いとう しーりん)が語る

「堀江アートスクールは「楽しい」をモットーにしており、生徒さんがいかに楽しく描くことができるかを大切にしています。それぞれの生徒さんのやりたいことに合わせたレッスンをしているので、「絵を描くのが楽しい」気持ちや、「できた時の喜び」を実感してもらえます。また、思い通りにできない時こそ、講師に気軽に相談できて何でも話せるような人間関係が必要で、そんなコミュニケーションを日頃のレッスンでも大切にしています。そのために、生徒さんが学ぶ環境には気をつかっています。“机や椅子を常にきれいにする”“集中力を保てるよう静かすぎず適度な賑やかさにする”そして“明るい雰囲気を作る”などです。特に雰囲気作りでは、講師が生徒さんと元気に接して、ここに来たら元気をもらえると思ってもらえるようにしています。また子どもの生徒さんには、“使った物は元に戻すなどのお片付け”“帰る時は自分の使った机の上はきれいに掃除する”なども意識してもらいます。」マンガを楽しく描いて終わりではなく、マナーを伝えることも大切だと思います。」

マンガを楽しく描いて終わりではなく、マナーも大切。これまで、漫画家として活動してきたクリエイターだからこそ、技術以外の人間的な成長が必要だと実感しているのかも知れない。子どもの生徒さんには、マンガを通じて自己主張をできるようになって欲しいと願っている。どんな人材を育てたいかを聞いた。

「マンガ」を通じての人材育成が必要

~スクール塾長:伊藤曦琳(いとう しーりん)が語る

「子どもの場合、スクールに通ってもらいマンガやイラストを描くことを通して、自己主張できる、自分の意見や考えを言えるようになってほしい。そのために、良いことは褒めて、改善したほうが良いことははっきり伝え、本人に自分の得意なこととそうでないことをはっきり認識してもらうようにしている。また、簡単にめげない心も育てたいので、少し頑張れば達成できる小さな目標を作り、たくさんクリアしていくことで自信をつけてもらえるようにもしている。これは大人の生徒さんにもやっている。これらは、講師陣は絵のことだけでなく、生徒さんのプライベートなことまで話してもらえるような関係づくりをしていくからこそできることだと思います」

堀江アートスクール塾長 伊藤曦琳(しーりん)

(株式会社コミックエージェント 取締役)

中国上海生まれ。10歳で来日。兵庫県神戸市育ち。大阪アニメーター学院漫画家プロ養成コース、デジタルハリウッド Webデザイナー専攻コース卒業。ホテルブライダルスタッフ、上海世界博覧会の日本館でVIPアテンダント、広告会社の広告企画部勤務などを経験。フリーとして、イラストレーター、ライター、デザイナーなどの活動を経て、2016年堀江アートスクール開校。塾長に就任。2019年株式会社コミックエージェントとして法人化。取締役就任。

2017年4月からデジタルハリウッド講師。

主な受賞歴

集英社「りぼん」奨励賞(5回)、小学館「 Sho-Comi」準入選(4回)、小学館「新人コミック大賞」 佳作、小学館「Cheese!」努力賞(2回)

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