在宅医療のスケジュール 背負う命懸けのケア 【連載】大空といつまでも 医療的ケア児と家族の物語<7>

2週間の入院生活を終え自宅に戻ってきた大空君と家族=2016年8月27日、長崎市内(坂本肖美さん撮影)

 1枚の写真がある。
 生後5カ月を過ぎた18トリソミーの出口大空(おおぞら)君を母親の光都子(みつこ)さんが笑顔で抱きかかえ、父親の雄一さん、姉の心実(ここみ)さん、心晴(こはる)さんが囲むように立っている。この穏やかな家族写真は、光都子さんの友人でフリーカメラマンの坂本肖美(あゆみ)さんが、2016年8月27日に撮影した。実はこの前日まで2週間、大空君はてんかんのけいれん発作で長崎大学病院に入院。光都子さんは入院前から続いていた在宅での慣れないケアも重なり、写真の表情とは対照的に心身ともに疲弊していた。

 大空君は同年7月6日、生後初めて長崎大学病院を退院した。その際、病院側が在宅での1日の流れを作ってくれた。

<午前>
1時 搾乳、胃の残留物確認、たん吸引
2時 抗てんかん薬投与、母乳50ミリリットル
5時 起床、朝食準備、胃の残留物確認、搾乳、たん吸引
6時 母乳50ミリリットル、朝食
7時 家族送り出し
8時 掃除
9時 搾乳、胃の残留物確認、たん吸引
10時 母乳50ミリリットル
12時 昼食、搾乳、胃の残留物確認、たん吸引
<午後>
1時 抗てんかん薬投与、母乳50ミリリットル
~中略~
5時 夕食準備
6時 沐浴(もくよく)、搾乳、胃の残留物確認、たん吸引
7時 母乳50ミリリットル、夕食・片付け
8時 入浴、洗濯
9時 搾乳、胃の残留物確認、たん吸引
10時 母乳60ミリリットル
11時 就寝

 洗濯や風呂掃除などの家事は夫と娘2人が手分けしていたが、光都子さんしかいない日中は1人ですべてをこなさなければならない。「搾乳して飲ませてまた搾乳、をずっと繰り返していた」。けいれんも頻発し、酸素量を増やしたり座薬を入れたり。酸素飽和度の数値が急激に下がれば、人工呼吸器の酸素では足りなくなり、大空君の口元でアンビューバッグを手で何度も押して酸素を送った。
 退院から約1カ月後の8月12日は最もけいれんがひどく、大空君はぐったりしていた。「命にかかわるかもしれない」。光都子さんがかかりつけ医を通じて大学病院に相談。救急車をすぐ呼ぶよう言われた。近所の訪問看護ステーションにも連絡すると、看護師が駆けつけてくれた。退院後、初めての入院。慌てて着替えなどを準備して大空君と一緒に救急車に乗り込んだ。

【次回に続く】
※この連載は随時更新します。

 


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