地元の旬の食材と車窓の絶景を堪能!「丹後くろまつ号」4月からの新コースをご紹介

福知山駅で出発を待つ丹後くろまつ号

京都丹後鉄道(丹鉄)が運行するレストラン列車「丹後くろまつ号」は、地元の食材を使った美味しい料理やスイーツと車窓から眺める奈具海岸や由良川橋梁などの絶景を楽しめることから、近畿地方を中心に多くの観光客に人気の観光列車です。

そんな丹後くろまつ号で2020年4~9月に提供される新コースの試乗会が3月半ばに行われました。今回はその試乗会の様子と、新しいメニューや車窓のみどころを紹介します。

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鉄道チャンネル編集部注:新型コロナウィルス感染拡大の影響により、令和2年4月4日、11日、12日、18日、19日は丹後くろまつ号大人のスイーツコース、地肴コースは運休となります。ご参加の際は京都丹後鉄道のウェブサイトで運行情報をご確認いただき、体調が優れない場合は参加を見送る、手指消毒を徹底するなどご配慮をお願いいたします。

地元産にこだわったメニューを車窓の景色と共に楽しむ

丹後くろまつ号のそれぞれのコースは、地元の人気店がプロデュースしています。料理に使う素材も地元産の旬のもの。さらにアテンダントによる沿線の案内などもあり、料理と車窓の景色の両方から丹後の自然を感じることができる内容です。

(1)森の朝食コース:爽やかな朝食を楽しみながら新緑の山を走る

森の朝食コースでは、地元の人気パティスリーカフェのPATTISERIE CAFÉ KATASHIMAが提供するメニューを楽しめます。提供されるデニッシュやクイニーアマンは、このコースでしか食べることができない限定メニュー。フルーツジュレには地元産の旬の果物が使われています。「これから向かう観光地で、観光だけでなく地元グルメも楽しんでいただけるように」と、あえて軽めのメニューになっています。

森の朝食コース。朝食にふさわしいあっさりしたコース 写真提供:京都丹後鉄道
人気店プロデュースのサクサクしたデニッシュや香ばしいクイニーアマンとジュレの組み合わせが絶妙
丹波特産の天滝ゆずと日向夏を使ったソースはとても爽やか!

森の朝食コースは、鬼伝説が残る大江山に近い山間地帯を抜け、天橋立へと至るコース。途中の大江山口内宮駅では約26分停車するため、下車して風景を楽しんだり、駅のすぐ近くにある観光センターで買い物したりすることもできます。

大江山口内宮駅停車中のくろまつ号
天橋立駅すぐ近くの知恩院・文殊堂。境内の松にぶら下がっている扇子はおみくじです

(2)お伽御膳コース:浦島伝説にちなんだユニークな料理と車窓の絶景を楽しむ

丹鉄が走る丹後地方には、日本最古の浦島太郎伝説が伝わっています。お伽御膳コースは、そんな浦島太郎伝説をモチーフにしたランチのコース。プロデュースしているのは地元のホテル、セントラーレ・ホテル京丹後。席で温める温野菜や白い煙があふれる玉手箱に入ったデザートなどに、若い料理長のアイデアが光ります。料理には地元の旬の海鮮や有機野菜を、提供されるワインには地元・天橋立ワイナリーで作られたものを使用。特にワインは好評で「これをお土産に買って帰りたい」というリクエストも多いそうです。

浦島太郎伝説モチーフのお伽御膳コース 提供:京都丹後鉄道
龍宮城へ向かう亀の器がかわいい
席で温めて食べるローストビーフと蒸し野菜。地元農家の有機野菜はやさしい味
デザートは玉手箱をイメージした箱に入って出てきます
玉手箱を開けると中には煙が。ドライアイスを使った、デザートの保冷も兼ねている技ありの工夫 写真提供:京都丹後鉄道

お伽御膳コースの車窓の見どころは、丹鉄随一の絶景を誇る由良川橋梁や日本海を見渡せる奈具海岸。由良川橋梁では徐行運転を、奈具海岸では15分停車を行うため、車窓の景色もじっくり楽しみながら食事をすることができます。

車内から見た奈具海岸の様子。海の青さが美しい
車両から見た由良川橋梁

また、途中の丹後由良駅では約58分停車。車内でゆっくり料理を楽しんだり、下車して駅前の足湯を楽しんだりなどして過ごすことができます。

丹後由良駅停車中のくろまつ号。1時間近く停車するため、下車して駅や周辺の景色を楽しむこともできます

ランチのコースは丹後くろまつ号の中でももっとも人気が高いコースで、結婚記念日などの特別な日のために予約を入れる人も多いそうです。

(3)大人のスイーツコース:観光で疲れた体を癒やす人気店のコラボスイーツ

「大人のスイーツコース」は、西舞鶴の人気店アメイロビストロアルルと、東舞鶴の人気店ブーランジェリーモンクールがプロデュースするコース。2つの人気店がコラボレーションして生まれたスイーツは、リキュールを使ったちょっと大人の味が特徴です。ビターな味のミルフィーユと、グランマニエが染み込んだしっとりしたサヴァランで、1日の観光の疲れを癒やしてほしいという気持ちが込められています。

乗車すると、乗車証とお土産がすでにセッティングされていました(他のコースではコース終盤に配られます)
リキュールがきいたスイーツは甘さ控えめで、丹鉄オリジナルコーヒーとの相性もばっちり

大人のスイーツコースで走るのは、西舞鶴から天橋立駅までの区間。お伽御膳コースで走ったルートを逆方向に走ります。由良川橋梁では徐行運転を、奈具海岸では約2分間の停車を行います。途中の停車駅はありません。

丹後くろまつ号の鉄道ファン的注目ポイント

(1)1日フリーきっぷを活用することで、丹鉄の水戸岡鋭治デザイン車両を堪能できる

丹後くろまつ号の車両は、鉄道ファンにはおなじみの水戸岡鋭治氏によるデザインです。外観のデザインはもちろん、木をふんだんに使った内装、モダンな車内灯、沿線の特産品を飾った棚など、みどころはたくさんあります。また、二人がけの座席は車窓の景色を楽しみやすいようやや窓側に向けて斜めに配置されていて、細やかな気遣いを感じます。

くろまつ号内装。落ち着いた色と木のぬくもりがモダンな雰囲気 写真提供:京都丹後鉄道
二人がけの席は、窓の外が見やすいようにやや外を向いています

丹鉄には丹後くろまつ号のほか、丹後あおまつ号、丹後あかまつ号といった水戸岡デザインの観光列車が走っています。このほか、観光列車ではありませんがKTR700形車両を水戸岡氏のデザインでリニューアルしたコミューター車両も走っています。

コミューター車両。車体カラーにちなみ「しろまつ」と呼ぶ人もいるのだそう

さらに、「丹後の海」というやはり水戸岡氏がデザインした特急車両も運行中。丹後の海は特急はしだて・まいづる号としてJR西日本に乗り入れていて、京都駅と福知山・舞鶴・豊岡方面を結んでいます。

京都と丹後を結ぶ「丹後の海」も水戸岡鋭治氏デザイン 写真:鉄道チャンネル編集部

丹鉄では、丹後くろまつ号の利用者限定の丹鉄1日フリーきっぷ(大人750円、小児380円)を販売。このフリーきっぷを利用して、丹後くろまつ号と合わせて丹鉄の水戸岡デザインの列車を1日かけて乗り尽くす鉄道ファンもいるそうです。

(2)落ち着いて食事を頼むための心遣いや行き違う車両にも注目

ディーゼル車は電車に比べると、車両は揺れがち。ところが、実際に丹後くろまつ号に乗っていると揺れはあまり気になりません。実は、丹後くろまつ号の運転を担当するのは経験を積んだ熟練の運転士に限られているそうです。また、特に揺れやすい区間に差し掛かる前には料理を出し終えるなどの工夫もしているそうで、走行する車内であるにもかかわらずかなり落ち着いて食事をすることができます。

途中駅で停車している間などに行き違う車両にも注目です。特に2019年に導入されたばかりのKTR300形は、大江山の鬼伝説をイメージした正面のデザインが特徴。また、沿線のイメージを詰め込んだラッピング列車、丹後ゆめ列車もその明るいデザインで目を引きます。

カニをはじめとした丹後の海の幸が描かれた丹後ゆめ列車。別デザインの「丹後ゆめ列車Ⅱ」もあります
KTR300形。赤鬼のような顔が特徴
同じくKTR300形。こちらは青鬼っぽい色が特徴

地元産の旬の食材を活かした美味しい料理、車窓の絶景、モダンなデザインの車両と運行している鉄道会社の気配りを感じられる観光列車、丹後くろまつ号。京都の山々や海の魅力を楽しみたいとき、ローカル線の個性的な車両を楽しみたいときに足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

文/写真:鶴原早恵子

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