地震で全壊の町屋よみがえる 熊本市「清永本店」

©株式会社熊本日日新聞社

修復工事を終えた「清永本店」の店先に座る8代目主人の清永幸男さん(左)と妻の佳子さん=熊本市中央区
復旧工事を終えた明治期の建築「清永本店」の主屋

 明治期に建てられ、2016年の熊本地震で全壊判定された商家「清永本店」(熊本市中央区西唐人町)の復旧工事が完了した。同市の新町・古町地区で最大級の町屋は多くの援助を受け、城下町の名残を伝えるたたずまいをよみがえらせた。

 貴重な部材を最大限に生かし、伝統工法で修復された清永本店の主屋と二つの蔵。真新しい白壁が、春の日差しに輝いている。「工事が終わりホッとした。ようやくここまでこられた」と話す8代目主人、清永幸男さん(79)の表情も晴れやかだ。

 4年前の地震では、店舗兼住宅の主屋など全ての建物が被災。屋根や土壁などが崩れ、ひどい雨漏りや土の処分に悩まされた。片付けや応急処置には、県内外から延べ約千人のボランティアが訪れたという。

 「できることなら残したい」。清永さんはそう考えたが、多額の復旧費を個人ではとても賄えない。将来の維持管理にも大きな負担が予想される。清永さんは、いったんは公費解体の申請に踏み切った。

 一方、被災文化遺産所有者等連絡協議会の代表として、清永さんは行政に助成拡充の要望を重ねた。17年、未指定文化財も対象にした新たな補助制度を県が創設。文化遺産保護に取り組む米財団の支援金も受けられることになった。

 それらに自己資金とグループ補助金を合わせ、多くの人的支援も得て「ようやく復旧へかじを切ることができた」。建物の一部は解体されたものの、「誰一人、何一つ欠けても再建はできなかった」と清永さんは感謝を込めて振り返る。

 5月ごろには乾物や日用品を扱う家業・荒物商の再開も考えている。妻の佳子さん(74)は「少しでも町のにぎわいにつなげたい」と楽しみにしている。(魚住有佳)

 ◆清永本店 旧薩摩街道に面し、町屋独特の空間構成や、江戸時代から続く「一町一寺」の町割りが分かる重要な建築物。江戸中期の1760年代に創業。西南戦争で焼けたが、翌1878(明治11)年に木造2階建て主屋を再建。その後、約660平方メートルの敷地に、二つの蔵、長屋、石場(台所・作業場)も建てられた。地震後、被災した長屋など一部を解体し、主屋(延べ床面積約330平方メートル)と蔵が復旧した。