自粛ムードでストレスは溜まる一方、あなたには相談する相手がいますか?

新型コロナウィルスが世界的に流行し、連日のように各地の患者の発生や死亡者数などを伝える報道が相次いでいます。

十分な準備もままならない中、私たちは働き方や子どもたちの過ごし方、余暇の過ごし方など、日常生活を大きく変えざるを得ない事態となりました。こうした状況は、まだしばらく続きそうです。

感染拡大や重症化を防ぐために、私たちにできることは続けていく必要があります。一方で、誤った情報によって特定の商品の買い占めなど、何が正しいのか、いつ終わるのか先行きの見えない状況から不安が助長され混乱も起こっています。

私たちは、こうした不安や不信にどのように向き合えばよいのでしょうか。


助けを求める相手、いますか?

家庭、隣近所、学校や職場などでの日常的なやり取りや、災害などの有事における情報発信・情報収集において、人と「つながること」や人だけでなく情報などへの「つながりやすさ」は助けを求めたりする上で欠かせません。

しかし、実際に助けを求められる相手がいるかと問われたとき、あなたは具体的な人物を思い浮かべることはできるでしょうか。

悩みを聞いてくれたり、アドバイスをしてくれたり、具体的な手段によって助けてくれるといった、自分の周囲の人からの有形無形の援助は「ソーシャルサポート(社会的な支援)」と呼ばれ、こうした人間関係は心身の健康にも影響を与えると言われています。

多方面にサポーターを持つ女性

第一生命経済研究所が2019年1月に実施した「今後の生活に関するアンケート」では、ソーシャルサポートを「情緒的つながり」(共感や傾聴などを通して相談にのったり、励ましてくれる人)、「手段・道具的つながり」(形あるものやサービスを提供してくれる人)、「助言・情報的つながり‘(問題の解決に必要なアドバイスや情報をくれる人)、「評価的つながり」(相手の能力や努力を評価してくれる人)の4つに分類して、それぞれに該当する人は誰かを尋ねました(このうち、今回は「情緒的サポート」と「手段・道具的サポート」を取り上げます)。

その結果、男女ともに「母親」と「配偶者」が高い傾向にありましたが、女性は母親、配偶者だけでなく、「子ども」「兄弟姉妹」そして「友人知人」となど多方面に支援をしてくれる相手がいることがわかりました。

一方、男性は、母親と配偶者といった身近な異性の親族以外に支援者がいると認識する割合が低い傾向があったのです。(図表1~2)

図1:情緒的サポート(左:男性、右:女性)

図2:手段道具的サポート(左:男性、右:女性)

サポーターがいない男性

さらに、男性はこうした支援を求める相手が「誰もいない」と回答した人が、女性よりも多い傾向にありました。特に、お金の援助や身辺トラブルの解決、自分を評価してくれるといった、具体的なことへの支援者がいない、と考えている割合が高くなっています。

対人関係が多様な人は、自分とは異なるモノの見方、興味関心や価値観、行動などに触れる機会を多くもっているということでもあり、状況に応じた支援を「選択できる」可能性をもっています。

一方、そうした選択肢が少なく偏っていると、支援者がいなくなった時(または、そもそもいない場合)、孤立や独居が重なることで精神的・肉体的な健康状態にも影響を及ぼしやすくなります。

図3:ソーシャルサポートを求める人が「誰もいない」人の割合(抜粋)

相談できる人の存在を確認する

つながりをもつことは、いざという時の具体的な助けになるだけでなく、精神面の安寧をもたらすともいわれています。女性はこうした環境を上手に活用しながら、多様なつながりをもっているようです。

一方、男性はつながりがないと考える人が女性よりも多いことが明らかになりました。特に高齢期になると、男性はつながりがないがゆえに社会から孤立してしまうこと(社会的孤立)が問題視されています。

人とのつきあいは、いつも心地よいとは限りません。ときに不快な思いをすることもありますが、やりとりの積み重ねによってお互いの信頼が生まれ、関係が築かれていきます。今は具体的な助けが必要ないとしても、長い人生でつき合い続けられそうな仲間はいるか、新たなつながりをつくるとしたらどうするか考えてみることも必要でしょう。

今や電話やメールだけでなく、SNS、そしてテレビ会議・Web会議システムなど、スマートフォンやPCがあってインターネットに接続できれば、簡単にやり取りができるツールが多数用意されています。

学校の一斉休校やテレワーク、各種イベントの中止など、活動範囲や行動が制限され自粛ムードが続けば、「当たり前」のことができないことへのストレスが知らず知らずのうちにたまっていきます。

そうした時、直接会うことができなくても、これらのツールをうまく活用しながら、信頼できる人たちと連絡を取り社会的なつながりを維持すること、そして日々変化する状況にも精神的な不調に陥らないよう、意識的になることが大切です。

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