MLB機構と選手会の合意内容 ESPNが詳細を報じる

日本時間3月28日、メジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会が今後の運営方針について合意に達したことが明らかになった。2020年レギュラーシーズン開幕に向けての動き、各選手のサービスタイムの扱いなど、様々な項目について議論が行われたと見られるが、まだ正式な発表が行われていないため、全貌は不明のままである。そんななか、ESPNのジェフ・パッサンとカイリー・マクダニエルが現時点で明らかになっている情報を整理して伝えている。

ロブ・マンフレッド・コミッショナーによると、2020年レギュラーシーズンは【1】多くの人々が集まることについて政府からの制限がなくなり、各球団がホームゲームを開催できるようになること、【2】アメリカとカナダのなかで渡航への規制がなくなること、【3】専門家との議論の結果、選手やスタッフ、ファンに健康上のリスクをもたらすことがないと確認されること、という3つの条件がクリアされた時点で開始される。中立地での開催や無観客試合など、通常の運営方法と異なる形も含め、柔軟に対応していく方針だ。

今後のスケジュールについては依然として不透明なままだが、レギュラーシーズン開幕の前に改めてキャンプとオープン戦が行われる予定だ。選手会はレギュラーシーズンの試合をできるだけ多く開催するためにダブルヘッダーを増やすことに同意しており、レギュラーシーズンが10月、ポストシーズンが11月まで行われる可能性もある。ワールドシリーズを温暖な中立地で開催したり、ポストシーズンのフォーマットを変更したり、こちらも柔軟な対応が検討されている。

理想の流れとしては、5月中旬にキャンプを再開して6月上旬にレギュラーシーズン開幕。この場合は、通常162試合のレギュラーシーズンを130試合前後のスケジュールで開催することも可能だろう。ただし、これはかなり楽観的な見方であり、80~100試合くらいの規模に収まると考えるのが現実的な見方といえる。

サービスタイムについては、試合数にかかわらず、1年を通してアクティブ・ロースターまたは故障者リストに登録されれば、1年分のサービスタイムが保証される。また、シーズンが完全に中止となった場合は、2019年シーズンと同じサービスタイムが各選手に与えられる。

選手のサラリーについては、試合数に応じた比率に基づいて支払われる。たとえば、81試合のレギュラーシーズンが開催されれば、選手は本来の50%にあたるサラリーを得ることになる。出来高の各項目についても、162試合との比率に基づいて計算されるようだ。また、4~5月分のサラリーとして、各チームは選手に対して総額1億7000万ドルを保証している。シーズンが始まれば、この1億7000万ドルはサラリーの一部として扱われるが、シーズンが中止となった場合、この1億7000万ドルの保有権は選手側にある。

この1億7000万ドルの分配方法についても詳細が報じられており、年俸調停権を持ち、メジャーリーガーであるかマイナーリーガーであるかにかかわらず、サラリーの額が確定している選手は、1日あたり5000ドル、1ヶ月あたり約15万ドルを得る。フアン・ソト(ナショナルズ)はメジャーリーガーなら年俸62万9400ドル、マイナーリーガーなら年俸28万9150ドルというように、いわゆる「スプリット契約」を結んでいるが、マイナーリーガーとしての年俸が15万ドル以上のスプリット契約の選手は、1日あたり1000ドル、2ヶ月間で約6万ドルを得る。ボー・ビシェット(ブルージェイズ)のように、マイナーリーガーとしての年俸が9万1800万ドル以上15万ドル未満のスプリット契約の選手は、1日あたり500万ドルを得る。また、クリスチャン・パチェ(ブレーブス)のように、マイナーリーガーとしての年俸が9万1800万ドル未満のスプリット契約の選手は、1日あたり275万ドルを得る。

40人ロースター外の招待選手としてスプリング・トレーニングに参加していた選手には、サラリーの保証はない。現在フリーエージェントの選手についても同様である。ただし、選手会は40人ロースター外の招待選手への経済的なサポートを行うことを検討しているようだ。また、シーズン終了後の年俸調停のシステムにも調整が加えられる予定であり、シーズンの開幕時期次第では、オールスター・ゲームの開催が中止となる可能性もある。

ドラフトについては、当初の開催予定日である6月10日(現地時間)から最大で7月20日(現地時間)まで延期される可能性がある。また、今年のドラフトは最少で5巡目まで、来年のドラフトは最少で20巡目までに縮小される可能性がある。指名された選手の契約金は、最大10万ドルが契約から30日以内に支払われ、残りのうちの50%が翌年の7月1日(現地時間)まで、さらにその残りがその翌年の7月1日(現地時間)までに支払われる。ドラフトで指名されなかった選手が得られる契約金は最大2万ドルに制限されている。ドラフト指名候補の選手たちの公開練習が開催される可能性もあるようだ。

国際フリーエージェント選手の扱いについては、通常であれば7月2日(現地時間)にスタートする契約可能期間が2021年1月15日(現地時間)スタートに変更される可能性がある。次の契約可能期間についても同様で、2022年1月15日(現地時間)スタートとなる可能性がある。なお、ドラフト指名権や国際フリーエージェント選手との契約金のボーナスプールをトレードすることは、今後2年間にわたって禁止されることになった。

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