『ポップスター』 ナタリー・ポートマン圧巻のパフォーマンス

(C)2018 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC

 初監督作『シークレット・オブ・モンスター』が高く評価されたブラディ・コーベットの2作目だ。同級生が起こした銃乱射事件の追悼で歌った曲が話題となりスターダムを駆け上がったポップスターの成功(第1部)と、17年後の再起を懸けたツアー(第2部)が描かれる。

 コーベットは、俳優としてミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアーら超一流の監督たちの仕事を間近で見てきただけに、演出力は最初から並外れていた。だが、今回はそれがアダとなったように思う。というのも、乱射事件を描く冒頭が本当に素晴らしいのだが、ここでの主人公を際立たせる巧妙な演出が、犯人との同級生以上の関係性を匂わせるから。当然、我々は重要な伏線だと捉える。そして、それを補完するように第2部でも銃乱射テロが起きる。ところが、この伏線は最後まで回収されない。伏線ではなかったわけだ。

 そこで気になるのが、主演のナタリー・ポートマンが製作総指揮を兼ねている点。本作は第2部で一転し、彼女の圧巻のパフォーマンスを見るための映画へと変貌してしまう。だから、脚本の時点では回収されていたのでは? 編集で削られたのかも…と勘繰りたくなる。監督の意図では主人公には裏の顔があったのだが、ポートマンがそれを許さなかったのではないかと。仮にそうだとしても、冒頭の乱射事件のシーンと後半のポートマンのパフォーマンスだけでも、本作を観る価値は十分にあるのだが。★★★☆☆(外山真也)

監督・脚本:ブラディ・コーベット

出演:ナタリー・ポートマン、ラフィー・キャシディ

近日公開予定

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