志村けんさん急逝

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 歌舞伎に由来するという。舞台上の建物がガラガラッと崩れ、コントはそこで幕となる。今は見ることもないが、お笑いに「屋台崩し」というオチがある。その昔、ザ・ドリフターズの番組で見たのを思い出す人もいるだろう▲笑いの世界でこんなにも長い間、屋台骨であり続けた人は他に思い浮かばない。タレントの志村けんさんが新型ウイルスによる肺炎のため、70歳で亡くなった。柱がいきなり崩れ落ち、悲しい終幕を迎えたような感じがする▲軽い身のこなし、テンポの良いせりふ、ころころ変わる表情に、子どもも大人も心をつかまれた。「変なおじさん」のような“規格外”のキャラクターは、常識をひっくり返してやれ、という思いの産物だったという▲人々の心に、笑いという軽やかなリズムを刻んできた。その軽妙な芸風と、心に重い悲報とが、今は頭の中でつながらない▲主演映画の撮影が近く始まる予定だった。東京五輪・パラリンピックの聖火ランナーに選ばれていた。70歳に達して、活躍の場がもっと広がるはずだったが、ウイルス禍はまったく非情というほかない▲別れってね、こうも不意に訪れるんだ。どこで感染するか分かんないから気を付けて…。“支柱の人”の急逝はこう告げるようでもある。数多い笑いの名作とともに胸に刻む。(徹)