大成建設・ドコモ・名大・シスコなど、次世代型病院の実現に向けた運用管理システムの実証実験を開始

少子高齢化が進み、医療現場では高齢患者が増加する中、医療従事者不足が深刻化している。特に夜間は、限られた人数で対応せざるを得ない状況であり、患者の無断外出や、目の届かない場所での転倒といった重大事故につながるリスクを、未然に防止する施策が必要となっている。医療従事者不足に対しては、医療現場における業務効率化、医療の安全や患者へのサービス向上が急務となっている。こうした状況を受け、大成建設株式会社、名古屋大学医学部付属病院メディカルITセンター、新城市民病院、シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は共同で、次世代型病院の実現に向けた新たな運用管理システムの実証実験を開始した。同実証実験は、病院内の業務効率化と医療の安全・サービス向上を目的とし、IoTを活用して病院スタッフや患者の位置情報、患者の身体状況などを可視化・閲覧するための取り組みである。実証期間は、2019年12月から2020年9月までを予定しており、愛知県新城市の新城市民病院の一部病棟特定フロア及び1階出入口付近で実施される。実証項目は下記の2点である。

  • 病院内にシスコ提供のメッシュWi-Fiネットワーク、IoTゲートウェイ機器を設置する。病院スタッフ及び患者に装着したリストバンド型ウェアラブル端末やICタグなどから送信されるBLE通信電波を、ネットワークルータを介してドコモの携帯電話回線によりクラウド上のプラットフォームなどに各種データを集約・蓄積する環境を構築する。
  • 集約・蓄積した病院スタッフ及び患者の位置情報、心拍数・歩数等のバイタルデータ、転倒検知など患者の身体状況などを基に、各機能の検証を行い、その有効性を確認する。

検証を行う主な機能は以下の3点だ。

1. 病院スタッフ、患者の位置情報から所在や動線を可視化

    • ウェアラブルデバイスから受信した電波を演算し、より正確な現在位置の推定
    • 指定した日付や時間帯での移動軌跡の表示
    • 滞在場所や時間を対象者ごとに区分した色のグラデーションで表示

2. 患者のバイタルデータから身体状態を可視化

    • 心拍数、歩数、活動量、転倒、歩行、睡眠等の活動状態の履歴の表示
    • 指定時間・日付・期間単位での表示
    • 他者との活動状態の比較表示

3. 端末を問わず、いつ、どこからでも情報の閲覧・通知が可能

    • WEBアプリケーションによりインターネットから閲覧可能
    • PCほか、スマートフォン、タブレットで閲覧可能
    • 患者の転倒、外出、心拍異常などの情報を病院スタッフに通知

このシステムの導入により、患者側には入院生活の質の向上や安全確保の効果が期待される。病院側には、患者捜索時の早期発見や患者の経時的身体データの所得可能などの効果が期待される。同実証実験で得られたノウハウを基により実用的なシステムの構築を目指すとしている。

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