和田瞳(女優)- 『悲しき天使』 遊郭で繰り広げられる熱く悲しい人間模様

凄く刺激的で、思い入れ深い作品

——『悲しき天使』はどこか懐かしいノスタルジックな作品ですね。

和田:そうですね。少し昔が舞台になっています。

——どういった経緯でこの作品のお話が来たのですか。

和田:監督の森岡(利行)さんの舞台『夕凪の街 桜の国』に出させていただいたんです。そのお芝居の稽古初日にとつぜん呼び出されて、その日に口答えをしたので怒られると思ったら「映画の主演をやってみないか」と言われてびっくりしました。疑問がいっぱいのまま「ハイ」と答えました。

——森岡さんが舞台でご一緒された際に、和田さんしかいないと感じられたんですね。

和田:なにかを感じていただけたのは凄く嬉しいです。凄く刺激的で、思い入れ深い作品になりました。

——改めて脚本を読まれていかがでしたか。

和田:「こんなセリフを言うんだ、全部関西弁じゃん」というのが最初の感想でした。脚本を読んでいく中で自分の中に一美像を作ってからは、セリフをしっくり言えるように気持ちを持っていこう、と、すぐに受け入れられました。

——皆さん本当に生きているようで、ドキュメンタリーを見ているような感覚になりました。

和田:ノンフィクションの部分もあるので、よりリアルに感じられたのかもしれませんね。

——遊郭が舞台なので濡れ場もあるんですけど、エロいだけではなく綺麗でした。

和田:わかります。女の子でも見られる濡れ場になっているんじゃないかなと思っています。

安心して自分たちのペースで進めました

——本当に体当たりで演じられていますが、どのような現場だったのですか。

和田:私たちやスタッフのみなさんも舞台の宿に泊まり込みで撮影していたんです。そういう環境だったこともあってみんなとも仲良くなれたし、信頼関係も築くことがでました。信頼があったから濡れ場にもすんなり入っていけました。

——常に現場にいたからこそ、その場に居るのが自然になっていったのかもしれないですね。

和田:そうですね。キャストのみなさんは舞台『悲しき天使』からのかたも多く、チームが出来あがっていたというのもあると思います。私は映画からの参加ですけど、みなさんにすんなりと受け入れてもらえました。いまも共演した方と遊びに行くくらい仲良くしています。

——いいですね。監督の森岡さんはどのような方ですか。

和田:舞台と映画では正反対の方で、舞台だとめちゃくちゃ怒るんですけど、映画だと仏のようでした。そのギャップにびっくりしたくらいです。撮影現場では私や水野(勝)君の提案も取り入れながら進めてもらえて、本当にやりやすかったです。舞台でいっぱい怒られたからかもしれませんね。

——それは和田さんに対して期待があったからですよ。

和田:はい。愛だと思って受け止めます(笑)。

——お話をしていると、和田さんと一美は性格が違いますね。方言も含めて演じるのは大変だったのではと思いますが、どこに気を付けて演じられましたか。

和田:私より少し年上の人をイメージして書かれた脚本なので、話し方や動き方で落ち着いた感じを出せるように意識をしました。その方がセクシーにも見えるので。あとは笑顔を出さないようにしました。営業スマイルくらいで、無表情なことも多いです。

——確かに主役の二人は感情を表に出さないですね。そんな性格でも二人が何を感じているかをしっかりと受け止めながら観ることができました。

和田:そこは脚本に助けてもらえた部分です。周りの方が私たちの話題で話を進めてくださるので、安心して自分たちのペースで進めました。ただ今回、一美を演じて恥ずかしいことがあって。

——なんですか。

和田:ネットでの紹介記事で『美しき遊女役』と書かれていたんです。それがめちゃくちゃ恥ずかしくて。

——実際にそうですから、自信を持ってください。

和田:綺麗に見えるように努力はしましたけど、ビックリしました。

逆に楽しかったくらいの思い出

——美しい役を演じながら、キスシーンや濡れ場も体当たりで演じられていますが。挑戦されてどうですか。

和田:自分でも驚くほど緊張しなかったです。そこはスタッフのみなさんの配慮があったからこそです。実際に演じる私が躊躇をしていたら周りが気を使ってしまうじゃないですか。

——そうですね。

和田:「タオルいらないです」くらいで、一美でいるときはなにも恥ずかしくなかったです。周りからは心配されていたかもしれないんですけど、今回のオファーを受けると決めたときから全力で行くというのは決めていたので、逆に楽しかったくらいの思い出です。

——本当に現場を楽しまれていたんですね。作中でお気に入りのシーンはありますか。

和田:一美と茂が最初に車で帰るシーンです。リハでは窓を開けていたんですけど、本番では閉めて二人だけの空間になったんです。それでお芝居がリハと変わって、めちゃくちゃいい空気感でお芝居できたなと思います。そこの二人の表情をぜひ見て欲しいです。二人とも「好き」とは言ってないんですけど、お互いに意識していて。あのシーンは好きで何度も見返しています。

——じれったい二人がよかったですよね。立場的にも言うことができなくて。

和田:そうなんですよ。一美もまだ秘密にしていましたから。

——作中の茂は優男ですけど普段の水野さんはどんな方なんですか。

和田:一言でいうと“お兄ちゃん”です。悩み事があったら聞いてくれる素敵な方でした。作品に向かう気持ちが私と同じで、同じ熱量で望めたので凄くやりやすかったです。お互い事前に合わせをしたくなくて、当日の雰囲気・空気でお芝居をしたいという気持ちも一緒で、そこも楽しむことができましたし。

——伺っていると、この作品は映画ですけど、舞台・ライブに近い現場だったんですね。

和田:そうかもしれないです。計算をしすぎるよりもその場の雰囲気を大事にしていくのが一番よくなると思って現場に臨みました。森岡さんも1回目がいいと思っている方で、リハもまわしているタイプなんです。なので、撮影もすごくスムーズでした。

——そんな中でも大変なシーンはありましたか。

和田:一番大変だったのは最後の丸山虎雄のシーンですね。

——あそこで一気に物語が加速していきましたからね。

和田:二人がいい感じになったかと思えば、最後にどんどん物語が展開していって。そこも含めて1秒も見逃せないと思います。

いろいろな角度で楽しめる

——本当にそうでした。一美と茂の二人の物語もそうですけど、登場する全ての人のドラマがすごく丁寧に描かれていて。改めて見返してこんなにドラマがあるかというくらいでした。

和田:多いですよね。詰め込みすぎなくらいで。

——そこがストレスにならない監督の演出も素晴らしいなと感じました。

和田:見るごとに感じ方が変わると思うので何回も見て欲しいですね。舞台とそれこそ似ていると思います。それぞれいいシーンがいっぱいで。重いシーンも多いですけど、お宮の松さんや木下ほうかさんが和ませてくださる場面もあって、そんなシーンも素敵だと思います。

——そうですね。改めて和田さんがみた一美はどんな女の子ですか。

和田:一美は本当に繊細で自分に全然自信がなくて、でも自分の芯は強く持っている、孤独ですけど強い女性だなと思います。人のために体を張ることが多いので、もっと自分のために生きて欲しいなと思える子です。

——本当にそうですね。お話を伺って改めて映画を見返したいと思います。

和田:一度見ただけでも楽しめますけど、いろいろな角度で楽しめるので何回も観てください。多くの人にお勧めできる作品なので、観た方からも作品の良さをどんどん広めてもらえると嬉しいです。皆さんの心に残る作品になればいいなと思います。

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