路面電車の南部延伸計画 長崎港2バース化で、長崎県受け入れに条件 混雑解消へ「短絡ルート」、県は「分岐追加」案

松が枝地区への路面電車延伸構想

 長崎港松が枝埠頭(ふとう)が2バース化されれば、増加を見込むクルーズ船の上陸客をどうスムーズに市街地へ誘導するのか-。県は路面電車の南部延伸を計画しており、運行する長崎電気軌道(長崎市)は受け入れには条件があるとしている。
 現在の松が枝国際ターミナルが完成するまでに、県は大浦海岸通電停付近から5号系統の延伸を求めたが、同社は収益性を見込めず断った経緯がある。
 その後クルーズ船の来港が急増した。さらに県は背後地での複合交通ターミナルや、寄港日以外でも集客できる観光交流施設の整備も想定し、市と検討中。中国人団体客は貸し切りバスでの移動が主流だが、欧米客は路面電車も利用しており、県は「路面電車のニーズは高まる」とみる。
 一方、同社も沿線人口が減る中、観光利用を増やしたい。ただ、1号と5号の系統を乗り継ぐ新地中華街電停の混雑という長年の課題を抱える。クルーズ客が増えればこれに拍車をかけかねない。長崎駅など北部に直結させ流動性を高めるため、出島電停とメディカルセンター電停の間に短絡ルート新設を県に求める。
 だが県によると、これには地域高規格道路「長崎南北幹線道路」の事情が絡む。現在供用されているのは、ながさき出島道路と都市計画道路浦上川線。県は西彼時津町方面の渋滞解消に向け整備を優先し、短絡ルートは出島道路と浦上川線の間に位置し、道路と軌道を一体整備しなければならず「時間がかかる」という。
 そこで県は短期対策として新地近くの分岐追加を提案。現在、メディカルセンターから新地に向かう5号系統は左折できず、新地で1号系統に乗り換えるしかないが、出島方面へ左折できるようにする。ただ線路の交差が増えると電車の走行が不安定になるリスクがあり、同社は短絡ルートを求めていく構えだ。

 


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