社説:再審で無罪 指弾された「自白偏重」

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 「真っ白な無罪」判決である。

 東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして殺人罪で懲役12年が確定、服役した元看護助手西山美香さん(40)に、再審の大津地裁が無罪を言い渡した。

 判決は、男性患者の死亡は事件性がなく、自白も自発的になされたものとはいえず、内容も信用できない-と認定した。

 滋賀県警と大津地検のこれまでの主張を根底から否定し、西山さんの「冤罪(えんざい)」の払拭(ふっしょく)へ大きく踏み込んだ判断である。県警と地検は捜査や立証の在り方を深く反省し、経過を検証すべきだ。

 ただ、裁判所も再審請求を含め7回も西山さんの無実の訴えを退けている。誤った判断を示してきた理由を省みる必要があろう。

 判決は、捜査や訴追の在り方に改めて疑問を突きつけた。

 取り調べについては、県警が西山さんの刑事への好意を利用して不当に供述を誘導したとした。

 公判では、県警が規則に反して勾留中に飲食の提供をしていたことも明らかになった。迎合的な供述をする傾向がある西山さんから有罪の立証に有利な発言を引き出そうとしていた可能性がある。

 「自白偏重」捜査の不当性を指弾したといえる。取り調べ可視化や弁護士の立ち会いなどの制度化論議を加速させねばならない。

 いったん起訴すれば、新証拠が出ても方針を変えない検察の硬直した組織体質も浮かび上がった。

 再審公判で、地検は当初の起訴内容を維持する一方、求刑を放棄した。無罪判決も想定される状況で「有罪」の姿勢を崩さなかった態度は、西山さんの人権よりメンツを優先させたようにみえる。

 無罪判決が出た以上、確定を長引かせてはならない。控訴権を放棄し、西山さんに謝罪すべきだ。

 再審に至る過程では、県警が西山さんを逮捕する以前に他殺以外の死因に言及した医師の所見を記した報告書を作成しながら、昨年7月まで地検に送致していなかったことも判明した。

 早期に見つかっていれば、起訴されなかった可能性もある。

 刑事訴訟法は、検察側証拠のリストを弁護側に提示するよう求めているが、再審は請求審も含めて証拠開示に関する規定がない。

 無罪をうかがわせる証拠が出ても、元の裁判に提出されていなければ再審でも開示されない、との懸念を裏打ちする出来事だった。

 再審における証拠の扱い方についても議論を深める必要がある。