ヒュンダイ代表、2020年WRCは序盤3戦時点で「すでに奇妙な形のシーズン」。現在は全社員がテレワーク

 WRC世界ラリー選手権にワークスチームとして参戦しているヒュンダイ・モータースポーツのアンドレア・アダモ代表は、2020年シーズンを「奇妙な形のシーズンになっている」と表現した。また現在はチームとしてリモートワーク/テレワークを導入しているとしたほか、レースファンに向けたコンテンツをSNSなどを通じて積極的に発信していくことも明らかにした。

 ヒュンダイがワークチームとして参戦しているWRCは、3月12~15日の第3戦メキシコまでは開催されたものの、第4戦アルゼンチン、第5戦ポルトガル、第6戦イタリアは新型コロナウイルスの影響で開催延期が決まっている。そのためWRCの次ラウンドは7月16~19日開催の第7戦ケニアとなる見込みだ。

 またカスタマーレーシングプログラムのひとつである、WTCR世界ツーリングカー・カップも新型コロナウイルスによるレース開催延期が発表されており、6月5~7日のスロバキアリンク大会でのシーズン開幕が予定されている。

 そしてヒュンダイ・モータースポーツが拠点を構えているドイツは急速に新型コロナウイルス感染者が増えている“パンデミック”状態にあることから、チームは政府方針に従い、リモートワークを積極導入しているという。

 ただ、アンドレア・アダモ代表は3月26日発表のリリースで「今の時点でもっとも重要なことは従業員全員が無事であること」としてチーム関係者に新型コロナウイルス感染者がいないことを明かしている。

「我々の会社がある(ドイツの)バイエルン州は先日からロックダウン状態に置かれている。しかし、我々はロックダウンが実行される前に対応策を講じてきた。なによりもスタッフの健康を安全が最優先だからだ」

「現在ヒュンダイ・モータースポーツには27の国から集まった250名以上の従業員がいる。最悪の事態に陥る前に彼らを安全に自宅へ返すことを念頭に行動してきた。自宅で仕事ができる状況を作っており、その状態で可能な限りのエンジニアリング作業を行っている」

「今この瞬間、世界ではモータースポーツよりも重要な対処すべき問題がある。だからそのことを考慮した上で、我々の優先順位を維持するようにしている」

 1月末に開幕したWRCは3月31日時点で第3戦メキシコまでが終了しているが、当初の予定どおりに行われたのは第1戦モンテカルロのみ。第2戦スウェーデンは暖冬の影響でスケジュールが大幅に短縮された上、例年のようなフルスノーイベントとは程遠いコンディションでの開催だった。

 また第3戦メキシコは新型コロナウイルスの影響で競技最終日の走行が行われず、当初の予定より3SS少ない全21SSで争われた。

 アダモ代表は、シーズン3戦目までが終わった2020年のWRCを「すでに奇妙な形のシーズンになっている」と表現する。

「正直に言わせてもらえば、まともに走行できたのは(第1戦の)モンテカルロだけだ。その次のスウェーデンは(深刻な雪不足で)言葉にできないほどひどいコンディションだった。そして(第3戦の)メキシコは新型コロナウイルスの影響で短縮を余儀なくされた」

「これらのイベントをふり返れば、満足しているとは言えない。たしかにモンテカルロでは勝利し、感情という観点では満足する戦いになった。ただパフォーマンスという観点ではある種の限界も感じた。スウェーデンの結果(オット・タナクの総合2位がベストリザルト)には満足していないし、メキシコでは3台中2台に信頼性の問題が出て、いらだちを覚えた」

「序盤3戦を終えて、我々は戦うために必要なモチベーションを手にすることができた。チャンピオンシップへの参戦を可能にしてくれた取締役会には敬意を払わねばならないし、プロフェッショナルとして戦い続けなければならない。どこを改善できるか、集中して取り組んでいく必要がある」

 アダモ代表は、この状況下でも各ドライバー、コドライバーとは連絡を取り続けているとしたほか、ロックダウンで活動に制限が課されている状況でも「自宅前の森を散歩したり、リビングにあるトレーニングマシンで運動することはできている。この時間を使って自分のケアをすることは重要だ」とも述べている。

 またチームは外出自粛要請などで自宅で過ごしているファンに向けたコンテンツとして、“ホームシェイクダウン”と題したドライバーへのQ&Aコンテンツや、“パワーステージライブ”と題したInstagram上のライブ配信などを行っていくと発表した。第1回目の“パワーステージライブ”は4月5日に配信予定でアダモ代表とチーム所属ドライバーが登場するという。

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