メルセデス・ベンツは全モデルが電動化される「EQ」戦略詳細

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現在のクルマの課題には「CASE」という言葉が多用されている。「CASE」とはConnected:コネクテッド(インターネット常時接続)、Autonomous:オートノーマス(自動運転化)、Shared&Services:シェアード&サービス(カーシェアや移動サービス)、Electric(電動化)の頭文字で、これから自動車メーカーが取り組む課題を意味している。

ディエター・ツェッチェCEOと「EQC」

「CASE」と「EQ」戦略

実はこの「CASE」という言葉は、2016年秋に開催されたパリ・モーターショーで、ダイムラー社のディエター・ツェッチェCEOが、今後取り組む中長期戦略の中でのテーマとして使用した、いわばダイムラー社内での言葉なのだが、その後あっというまに自動車業界用語として定着してしまった。

ディエター・ツェッチェCEOは「CASEという4つのトレンドは、業界を大きく変える可能性を秘めています。本当の革新は、これらをインテリジェントにつなげたところに存在しています」と語っている。つまり、4つのキーワードを軸に革新を打ち出していくことで、クルマを再定義することがダイムラー社の戦略というわけだ。

もちろんダイムラー社がいうまでもなく、どの自動車メーカーもCASEという言葉が登場する以前から、こうした次世代戦略を策定し、それぞれに取り組んでいる。しかしこうした次世代戦略の中で最大の関門は電動化である。なぜなら、今後のヨーロッパ市場を始め、グローバルの主要な市場ではCO2排出量規制が待ち構えており、もし規制をパスできなければ、巨額のペナルティを支払うことになり、市場から撤退せざるを得ないからである。[(https://autoprove.net/mercedes-benz/181389/attachment/10_%e8%a6%8f%e5%88%b6/)

さらに2025年規制以降は電動化車両でなければ規制をパスできず、2025年に向けて、どれだけ電動化車両を市場に投入できるかということが自動車メーカーに問われている。もちろん電動化車両を開発、生産するという技術的課題と同時に、より大容量になる車載バッテリーに起因する大幅なコストアップも覚悟しなければならないのだ。

2017年フランクフルトショーで披露されたスマートEQとディエター・ツェッチェCEO

EQブランドを2022年までに10モデル発売

ダイムラー社のディエター・ツェッチェ会長は、迫り来るこうした電動化の課題に対して「EQ」と呼ぶ電動車ブランドを積極投入することを明らかにした。

その後のモーターショーで、EQC、EQA、EQスマート、さらには燃料電池とプラグインハイブリッドを組み合わせたゼロエミッション車「GLC F-CELL」もEQ戦略に組み込み、市販化を目指すコンセプトカーとして出展している。そして、メルセデス・ベンツ、スマートの各ブランドで、サブブランドとなる「EQ」ブランドを展開し、2022年までに10モデル以上のEVの発売を計画している。

EQC

その「EQ」としての10モデルの中のトップバッターが「EQC」だ。スマートEQを含む10車種でグローバル・マーケットの販売台数の約15%〜25%を電気自動車が担う計画で、この販売比率は自動車業界アナリストによる電気自動車のグローバルシェア予測を少し上回る計画となっている。

関連記事:メルセデス・ベンツ EQC 100%電気自動車【試乗記+動画】(4WD/EV)

超コンパクトなスマートは、都市型モビリティに最適で、都市型であればバッテリー搭載容量もそれほど大きくする必要がなく、電気自動車としての適合性に優れている。さらに都市部でのカーシェアリング・サービスにも使いやすいクルマだ。

2017年の東京モーターショーでは「スマート ビジョン EQ fortwo」を出展した。その後、2018年のパリ・モーターショーでは4人乗りの「スマート EQ forfour」を出展。「スマート EQ」は60kWのモーターで駆動され、航続距離は160kmほどとされている。

北欧で寒冷地テストを行なうEQC

注目の「EQC」は5ドアSUVスタイルで、既存のGLCと共通の2873mmのホイールベースとなっているが、もちろんプラットフォームはフロアにバッテリーパックを搭載した電気自動車用モジュラー・プラットフォームだ。ボデイサイズは全長4761mm、全幅1884mm、全高1624mmで、車両重量は2425kgだ。

このような電気自動車とプラグインハイブリッド・モデルのために、ダイムラー社は1255億円を投資し、リチウムイオン・バッテリーのグローバル量産体制を構築するとしている。

2018年9月にスウェーデンでワールド・プレミアされ、2019年末には正式発売予定の「EQC400 4MATIC」は、前後にモーターを搭載、合計出力は408ps、最大トルクは765Nmと強力だ。前後にモーターを搭載しているため、前後の可変トルク配分も可能になっている。なお減速機は2段減速としている。バッテリー容量は80kWh(650kg)で航続距離はNEDCモードで450km。動力性能は0-100km/h加速が5.1秒、最高速は180km/hとされている。

「EQC」に続く第2弾がコンパクトクラスの「EQA」だ。2017年のフランクフルトモーターショーで発表された「コンセプトEQA」は、前後に電気モーターを備え、航続距離400kmとされ、EQCよりややバッテリー容量は少ないとみられる。このEQAには2種類の走行モードが設定され、走行時のモードによってフロントグリルのブラックパネルが変化する未来的なエクステリアデザインを採用している。この「EQA」の市販モデルは2020年に発売予定だ。

コンセプトEQA

「コンセプトEQV」は2019年のジュネーブショーで公開されたバンだ。100kWhの大容量バッテリーを搭載し、駆動モーターはフロントにレイアウト。航続距離は400kmとされる。このモデルも2020年に市販予定とされている。

コンセプトEQV

この他に、フルサイズのEQS(Sクラス・セダン)、EQE(Eクラス・セダン)、EQB(コンパクト・クロスオーバー)などが計画され、開発が着手されているという。

EQパワーとEQハイブリッド

その一方で、すでに発売しているプラグインハイブリッド・モデルを「EQパワー」の名称とし、「C350 e アバンギャルド」、「C350 e ステーションワゴン・アバンギャルド」、「E350 e アバンギャルド・スポーツ 」、「GLC350 e 4MATIC スポーツ」、「GLC350 e 4MATIC クーペ・スポーツ」の5モデルが該当し、EQブランド戦略に組み込んでいる。

さらに、EQパワー以外の車両は48Vマイルド・ハイブリッド・システムを搭載したモデルを「EQハイブリッド」と称している。つまり、全車両を電気自動車、エンジン+電気駆動で構成しようとしているわけだ。その結果、メルセデス・ベンツのクルマはすべて電動化していくということになる。

これらのモデルは、内燃エンジンとモーターを組み合わせており、トランスミッションのトルコン部にモーターを組み込み、モーターのみでの走行、エンジンのみでの走行、エンジン出力とモーター出力を合わせた走行の3パターンがある。バッテリーは6.2kWhのリチウムイオンバッテリーで、トランクルームの床下に搭載し、そのEV走行距離は約30kmだ。

走行モードは、Eモード(EV走行)、ハイブリッド・モード、チャージ・モード、Eセーブモードの4つがある。また「C350 e」から「インテリジェント・アクセルペダル」も採用されている。これはモーターだけで走っているとき、エンジンが始動するポイントを足で感じることができるもので、ペダルを踏み込む重さが変化するポイントがある。これ以上踏むとエンジンが始動するということをドライバーに伝達するための仕組みだ。

スーパーカーのEQパワープラスもある

メルセデス・ベンツは、EQパワーシリーズの延長線上に「EQパワー・プラス」も構想している。これは、ハイブリッド・スーパーカーと位置づけられ、F1の技術を受け継ぎ、ターボエンジン+モーター4基の超ハイパフォーマンス・ハイブリッドモデルだ。F1と同様の減速エネルギー回生を採用し、加速時にはエンジン出力とモーター駆動力を併用。規格では最高出力1000ps以上、最高速度は350㎞/h以上とされている。

1000psオーバーの「EQパワー・プラス」

また、電動車のEQ戦略として燃料電池+プラグインハイブリッドの「GLC F CELL EQパワー」も2018年秋から市場投入が決定している。ただし、現時点では水素補給のインフィラが存在する都市のみで、レンタル形式でユーザーに提供されている。搭載するリチウムイオン・バッテリーは13.5kWhで、バッテリーのみで約50km走行できる。700barの水素とバッテリーの両方で470km程度の航続距離を備えている。

GLC F CELL EQパワー

このように2025年のCO2排出量規制を目指し、ダイムラー社の電動化の行程は明確になっており、電気自動車のEQ、プラグインハイブリッドのEQパワー、48VマイルドハイブリッドのEQハイブリッドを組み合わせる戦略は極めて現実的と考えることができる。

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