『猿の惑星:創世記』の監督が描くディストピアSF! エイリアンの支配下、権力に従うか? 抵抗するか⁉『囚われた国家』

『囚われた国家』© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

敵は宇宙人!……ではなく同じ人類=公権力、つまり支配者層!?

『囚われた国家』は、『猿の惑星:創世記』を撮ったルパート・ワイアット監督の最新作である。前作はマーク・ウォールバーグ主演の『ザ・ギャンブラー/熱い賭け』(2014年)。骨太なフィルモグラフィーと言っていいだろう。

『囚われた国家』ルパート・ワイアット監督© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

この『囚われた国家』も、超大作ではないが気骨のある一本だ。舞台は地球外生命体に支配されたアメリカ。追い詰められながらも決死の抵抗を試みるレジスタンスと、支配者側の闘いが描かれる。といっても、人類とエイリアンの直接対決ではない。レジスタンスがエイリアンを狙うのだが、そのレジスタンスを狩るのは同じ人類=警察(公権力)だ。

『囚われた国家』© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

この構図が、本作を人間くさい群像劇にしている。ムードとしては20世紀に作られたレジスタンスもののようでもある(ワイアットは『影の軍隊』[1969年]や『アルジェの戦い』[1966年]を参考にしたそうだ)。シカゴの曇天の下で繰り広げられる強大な敵との闘い。それは必然的にダークなものにならざるをえない。

『囚われた国家』© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

「抵抗する限り、チャンスはある」ダークな物語に込められたメッセージ

レジスタンスの闘い自体が先の見えないものであり、そこに“謎”や“裏切り”が絡むから、単純に見ていて楽しいという映画ではないと断っておこう。主人公兄弟の闘いは手探りであり、ストーリーの核心を握る刑事(ジョン・グッドマン)の真意も見えにくい。だから、見ていてちょっとストレスがたまる。だが、そのストレスはディストピアの空気そのものでもあるようで、簡単に“減点”とも言えないところ。

『囚われた国家』© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

ストーリーが進む中で見えてくるのは、エイリアンに支配されたアメリカが何かの比喩であることだ。敵は支配者だけでなく“支配層”だというのも、つまりはそういうことだろう。ワイアットは、この映画には2種類の登場人物がいると説明している。「支配者に協力することを選んだ人々」と「それに対して戦うことを選んだ人々」だ。

『囚われた国家』© 2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

そして先が見えない闘いの中でも、絶対にあきらめてはいけないのだというストレートなメッセージ。「抵抗する限り、チャンスはある」――そんなセリフもある『囚われた国家』は、はっきり言ってしまえば暗い映画だ。万人受けするものではないだろう。でも、この時代だからこそ生まれた映画だし、その志は映画ファンとしてしっかり受け止めておきたい。ルパート・ワイアットには、この調子で撮り続けてほしい。

文:橋本宗洋

『囚われた国家』は2020年4月3日(金)よりイオンシネマほか全国公開

© ディスカバリー・ジャパン株式会社