「世界のカー・オブ・ザ・イヤー」ファイナリストに残った日本車

日本、北米、ヨーロッパ、そして中国やオーストラリアなど、世界には国や地域ごとに多くのカー・オブ・ザ・イヤーがあります。

1年に一度、もっとも優れたクルマを選出して、その栄誉をたたえる、言わばクルマ界の重要な祭典のひとつです。

中でも「世界カー・オブ・ザ・イヤー」は世界27カ国・地域で活動する86人の選考委員(日本からは8名)によってイヤーカーが選ばれるということで注目されていますが、今年は大賞候補に2台の日本車がファイナリストに残っています。


世界から専門家が集まってもっとも優れたクルマを選出します。

カー・オブ・ザ・イヤー、英語表記ならCar of the Yearですから、その頭文字より略称をCOTY(コティ)と呼ばれています。ちなみに日本国内でCOTYといえば一般的に日本カー・オブ・ザ・イヤーのことを指します。日本国内で市販される多くの乗用車の中から、年間を通じて、もっとも優れた1台を選出する自動車賞です。

世界を見れば、国の数だけ存在するのではないかと思えるほど、色々な賞があります。そんな中でワールド・カー・アワード(以下WCA)という賞があります。

今回で15回目を迎えるのですが、いかなる出版社、オートショー、自動車メーカーや企業の影響も受けない、独立した非営利プログラム「ワールド・カー・アワード」が主催する世界最高クラスの栄誉となるアワード・プログラムといわれています。

少しばかりややこしいのですが「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー(以下ワールドCOTY)」の本賞の他、都市に似合う車を選ぶ「ワールド・アーバン・カー賞」や「ワールド・ラグジュアリー賞」、「ワールド・パフォーマンス賞」、「ワールド・カー・デザイン賞」、そして人物に与えられる「ワールド・カー・パーソン・オブ・ザ・イヤー賞」といった各部門賞によって構成されています。つまりWCAのひとつの部門賞として、大賞とも言えるワールドCOTYがあるわけです。

今回、その対象となったのは2018年秋から2019年秋にかけて登場、あるいはマイナーチェンジを受け、複数の大陸、5カ国以上で販売されているクルマです。もちろん欧州専用車、北米専用車、日本専用車といった地域や国、そしてひとつの大陸だけで販売されているクルマなどは選考対象から外れます。自動車に与えられる賞の中でもっとも広範囲にわたる人々が関係して選出される大賞とも言われるゆえんです。

こうした条件の下に最高の1台を選出するのですが、まずは1月にLAで行われた試乗会を経て、ノミネート車の絞り込みが行われます。その後、2回のインターネット投票と有名な会計事務所による厳正な集計を経て、ワールドCOTYを始めとした、6部門の最終発表、表彰式を2020年4月8日に「ニューヨーク国際オートショー」で行われる予定でした。

しかし、今回の新型コロナ渦によってショー自体の開催と、WCAの発表は秋まで延期となってしまいました。少し残念なのですが、実は今年の大賞レースでは興味深い展開が起きていました。

<写真/WCA>

2台のマツダ車がファイナルに

各部門の投票が進むにつれて絞り込みが行われていくのですが、去る3月5日にWCAがパーソンオブザイヤーを除く5部門のファイナリストをオンラインで発表しました。2月にトップ10の発表を経ての各部門のファイナリストを3台ずつ選出したことを発表しました。ちなみに3月10日に発表になった「2020ワールド・カー・パーソン・オブ・ザ・イヤー賞」はフランスのPSAグループ、カルロス・タバレスCEOに授与すると発表されました。さて部門ごとの車種ですが下記のとおりです。

(ワールドCOTY賞・大賞)
・キア・テルライド
・マツダCX-30
・マツダ3

(ワールド・アーバン・カー賞)
・キア・ソウルEV
・MINI エレクトリック
・フォルクスワーゲン・Tクロス

(ワールド・ラグジュアリー賞)
・メルセデス・ベンツEQC
・ポルシェ911
・ポルシェ・タイカン

(ワールド・パフォーマンス賞)
・ポルシェ・718スパイダー/ケイマン GT4
・ポルシェ・911
・ポルシェ・タイカン

(ワールド・カー・デザイン賞)
・マツダ・3
・プジョー・208
・ポルシェ・タイカン

という結果です。

パフォーマンス賞をポルシェが独占したことや韓国車のキアの健闘も目立ちます。それ以上に注目できるのが本賞であるワールドCOTYのファイナリストとしてマツダのCX-30と3の2台がエントリーされたことは日本人として嬉しい限り。

ポルシェのピュアEV、タイカンも3部門でファイナルに残る。

さらに驚いたのはファイナリストの3台がすべて内燃機関、つまりエンジン車ということです。とくにキア・テラルドは3.8LのV6エンジンを搭載した大型SUVです。時代の要求が大きいEVを抑えての3台のエントリーは注目点と言えます。一方でマツダ以外の日本車が見えないことは少しばかり寂しい結果となっています。ちなみにパフォーマンス部門で唯一健闘していたトヨタ・スープラはファイナリスト選出とはなりませんでした。

ではマツダの2台がファイナリストとなった理由はなんでしょうか?

創業100周年に花を添えて欲しいのですが……。

マツダ3がデザイン賞にもエントリーしていることでも分かりますが、CX-30も含めてデザインの良さにあるのだと思います。世界中のデザインの専門家からの評価も高く、車群の中で見てもすぐにそれと分かる存在感あるデザインが高く評価されたのは確実でしょう。もちろんこの2台のデザインは今後のマツダデザインを牽引していくことになるわけですが、世界の注目が高いことを証明したことになります。

セダン(左)とハッチバックのデザイン。

そして走りの性能です。ただ速いとかコーナリングが優れているとかという基準ではない基準で選ばれているはずです。例えば体をひねったりせず、自然な姿勢で運転できるという理想の運転姿勢を追求した構造の良さは、実際に運転してみるとしっかりと感じ取ることができます。さらに自然な加速感や状態の揺れの少ないコーナーでの走りなど、あまり派手ではなく、一見分かりにくい性能にこだわったマツダの走り。それは、長くドライブするほどジンワリと体に効いてきます。とにかくロングドライブでの疲労感が少ないのです。今回、ワールドCOTYに2台がエントリーしたのは、そんな人間の能力をしっかりと引き出すことで、自然でストレスの少ないドライビングフィールにも理由があったはずです。

以上のとおり、マツダ3は大賞を含めた2賞、そしてマツダ-30は大賞を獲得できるチャンスが残されています。このWCAが発表されるニューヨークモーターショーは120年の歴史を持つ伝統の国際モーターショーで3億3000万ドル以上の経済的効果を生むといわれています。当然のように多くの人たちが関わっていますから、無事に開催され、そして日本人とすれば、マツダにワールドCOTYのタイトルを獲得してほしいと願います。

今年で100周年に迎えたマツダにとって受賞できれば、そのエポックにまたひとつ華を添えることになります。そして心から受賞を祝うためにも、一日でも早くウイルスの感染が終息していることを祈るばかりです。

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