幻の臨時収入

 朝からいきなりお金の話で申し訳ない。程度の差は否定しないが、「思わぬ臨時収入」は誰だってうれしい。だから「ぬか喜び」の落胆や「思わせぶり」の罪はそれなりに深い▲新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急経済対策の一環として、一時期有力に浮上していた国民への「一律現金給付」が、いつの間にかしぼんでしまった。消費を喚起し、景気を刺激するとの触れ込みだったと記憶するが、給付先はどうやら大幅収入減の家庭などに限定されそう▲仕事に出られなくなったり、客足がパタリと止まったり。切実な危機に直面している場所へ真っ先に目を配り、手を差し伸べることには何の異論もない▲ただ、それは大きく言えば「福祉」分野の仕事で、政策の目的が違う景気刺激策とは、必ずしも二者択一の関係にはない。事態は長期化しそうだ。どこまでがウイルスの影響なのか、線引きも難しい▲現金で配れば貯蓄に回り、クーポン券は時間がかかる、電子マネーは手法に限界が…と一律給付は確かに課題も多い。だが、それは壮大なぬか喜びを説明できるだろうか▲皆に配るんじゃなかったの、話が違う-と声高に主張しにくい案件ではある。それでも、マスクの下で、少しだけブツブツ言いたい気分の人は、少なからずいそうな気がする。(智)


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