イエナプラン教育を支える仕組み 〜イタリア・オランダ オルタナティブ教育視察レポート第4回〜

©株式会社SEKAISHA

イエナプラン教育を支える仕組み

それでは、実際に視察した2校の内容についてご紹介していきましょう。

冒険心をくすぐる校内特徴的なのは廊下と教室です。広々とした廊下には、ソファや机、作業台などが設置されており、子供たちが休み時間に使用するだけはなく、授業中にも教室を出てこの場所で勉強することもできます。

教室は、同じ学校内でも机の配置や家具、内装もバラバラ。それぞれ担任の先生が中心となってアレンジしているようで、中には子供の保護者と一緒に家具を選んだと話されている先生もいました。

校庭は小さいけれど、冒険心をくすぐる構造になっています。2校とも校庭が小さいので、クラスごとに休み時間をずらして使用しているそうです。

リビングのような廊下

授業中の様子

校庭

自律性を重視する授業

イエナプラン校での学びは対話、仕事、遊び、催しの4つの基本活動をリズミカルに回して行います。どうしてこの4つなのか先生に尋ねると、「人生(社会)においてもこの4つが大切だから」と話されていました。

■対話

活動とコミュニケーションの基本であり、この対話の時間を通して、 子供たちの好奇心に火をつけたり、信頼関係を構築したり、学びを深めたりします。

■仕事

学習や作業を行う時間で、時には集中して一人で学習を進め、また時にはグループで作業を進めたりします。

■遊び

仕事が「知識やスキルのインプットする時間」だとするならば、遊びは「アウトプットの過程を通しての経験や感覚の獲得する時間」です。カードやゲームを使って遊びながら学ぶことを通して、仕事の時間で扱っているテーマへの関心を広げたり、モチベーションを維持したりすることができます。

■催し

催しは適切な日本語に言い換えるのが難しいのですが、英語ではイベントやセレブレーションなどと訳されるものです。この時間には学習の発表を行ったり、誰かの誕生日を祝ったり、また悲しいことがあった時にそれを共有する催しを行ったりします。

これらの4つの活動を、子供たちはそれぞれ自分たちのリズムに合わせて自らサイクルを回していきます。もちろん、対話や催しは学校の時間割のなかであらかじめ決められているものもありますが、それらのコア活動以外の時間は、子供たちの自律性に委ねられており、一週間の学習計画・時間割も自ら作成し、それを行っていきます。

そのため、授業中の教室では全員が違うことに取り組んでいました。ある子は先生からレクチャーを受け、ある子はヘッドセットをつけて学習に集中し、そのすぐ横ではカードゲームをしている子たちがいて、廊下に出ると、そこでもまた異なる学習を進めている子がいました。これらが全て同じクラスの同じ時間に行われているということがとても衝撃的でしたし、これを成立させられる先生と、何より子供たちが素晴らしいと思いました。

授業中のサークル対話

集中して自学自習を進める男の子

カードゲームをする女の子たち

授業中の廊下

異年齢学級

前述のような自律学習を成立させることができる大きな要因の一つは、異年齢学級にあります。

イエナプラン校では3学年にわたる異年齢のクラス編成を行っており、これにより、子供たちは学ぶ立場だけでなく、支える/助ける立場を経験するようになります。そのため必然的にコミュニケーションスキルや、組織の中で自分の役割を認識する能力が発達していきます。

あるクラスの授業を見学に行った時、私たちは一人の女の子に授業に関しての質問をしました。その子は英語があまり得意ではなく、やりとりが少し難航していたところ、スッと上の学年の別の女の子がその場に来て、流暢な英語でコミュニケーションのサポートをしてくれました。私たちはその子にも質問をして、「下の学年の子たちに勉強を教えるのは難しくないのか」と訪ねたところ、「教えたことはない。学びをサポートしているだけで、また困ったことがあったら助けているだけで、勉強を教えたことはない」と話してくれました。

「”教える”ではなく”サポート”よ!」

また休み時間に廊下のソファで何やら談笑している子供たちを見かけたので、何をしているのかと訪ねたところ、「次の体育の時間に、どの学年の子たちもみな楽しめるように、ゲームのルールを考えている」と話してくれました。

体育の時間で遊ぶゲームのルール決めの様子

こういったことが、先生に指示されるでもなく、あまりにも自然と発生していました。それはやはり、同一学年だけではなく、クラスが異学年から編成されることで、上の学年の子たちが主体性を発揮した結果でした。そして下の学年の子たちも、このような環境の中で、学ぶ能力、支えられる能力を身につけていき、次の年には自分も同じように下の学年の子たちを支えられるようになっていくのです。

グループリーダー(教師)

先生は子供たちと上下関係にあるのではなく、グループリーダーと呼ばれ、教えるのではなく、学びをコーディネートする役割を担っていました。

あるクラスの、輪になってディスカッションをするサークル対話の時間では、子供たちのうちの2人が議長を努め、先生は一参加者として輪の中に加わっていました。そして先生すらも手を上げて、議長に指されないと発言できないという具合でした。この様子からも、いかに子供たちと先生がフラットな関係にあるかということが分かりました。

先生同士も活発にコミュニケーションを取っており、職員室ではカフェかバーのように、先生たち同士で雑談をしたり、ゲームをしたりして過ごしていました。

また先生たちは授業中、子供たちにどのようにしたいのかを聞いて、必要な助けが必要なところに行くように、常に観察していました。そして先生は子供たちをコントロールしようとはせず、彼らを心から信用していました。

放課後、職員室で談笑する先生達

学校と保護者の関係

学校と保護者の関係性は非常に良く、お互いを尊敬し協力して子供たちを育てていこうとする様子が見られました。双方がコミュニケーションを積極的に取っており、子供たちの様子や、活動の計画などを相談したりするそうです。また保護者の中には、ボランティアで学校の活動に関わる方もおり、先生の代わりに専門的な内容の授業を行ったり、行事運営のサポートを行ったり、時には催しに自ら参加したりするそうです。

職員室で先生と談笑する保護者

第4回では、イエナプラン実践校の理念や具体的な活動、そして学びの様子について紹介しました。第5回では、その活動を支えるユニークな取り組みを紹介し、全体の総括をしていきたいと思います。

イエナプラン校ならではのユニークな取り組み 〜イタリア・オランダ オルタナティブ教育視察レポート第5回〜