最終的にはお寺を作る!? 笑い飯・哲夫が“人間の煩悩”をひも解く

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“仏教好き”としても知られる笑い飯・哲夫の著書『ザ煩悩』(KADOKAWA)が全国の書店やネット書店で発売中です。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

哲夫がパーソナリティーを務めるラジオ番組『仏教伝道協会 presents 笑い飯 哲夫のサタデー・ナイト仏教』(FM大阪)との連動企画で誕生した同書。番組のリスナーから寄せられた悩み(煩悩)を、哲夫が仏教的な解釈で解決策を提示するというものです。今回、『ザ煩悩』発売を記念して、哲夫に話を聞きました。

執筆中は「時給が発生している」と思う

――本著に収録された内容は、10代から60代まで世代を問わず、「子どもをすぐ怒ってしまう」や「将来の夢や希望が持てない」など、とても興味深い煩悩ばかりでしたね。

そうですね。人にさらけ出すのには憚られるものも、皆さん赤裸々にお寄せくださって、本当にありがたいなって思います。“自分だけが悩んでいるのかな?”って思いきや、“(自分が思っている悩みも)みんな思ってるんや”って感じるようになりました。

――ひとつの煩悩に対し、どれくらいの時間をかけて回答をまとめるのでしょうか?

だいたい50個くらいのお悩みやったんですけど、8月中旬から書き出して「年末まで」って細かく期日が設定されていたんですよ。日割り計算すると、3日に1個お悩みを解決せなアカン。で、ひとつの悩みに2,000文字以上は必要やと。“3日で2,000字はなかなかやなぁ”と思っていたんですけど、ピッタリ期日も守れまして(笑)。“俺スゴいわ! めっちゃ書けるわ”って思ってね。

基本的に移動中に書くことが多くて、(新幹線など)横で寝てる人を見て“コイツいま稼ぎゼロやな。俺は時給が発生しているからな〜”っていやらしいことを考えながら書いていました。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

――返答する際に気をつけていたことはありますか?

こうやって喋っていたら“僕”って一人称が言えるんですよ。ただ、字に書く時に、僕や俺っていう一人称を書けないんですね。なぜかって言うと、“ちゃんと当てはまる一人称ってないよな”って思うからなんですよ。“僕”やったらかしこまりすぎていて、“俺”やったら悪ぶっていて……。どれも当てはまらないなって思うんで、一人称を書いていないです。

あと、“程度を増す”って意味で“めちゃくちゃ”って言葉がありますが、そこは“めちゃめちゃ”に統一させていただきました。そこは間違いないと思います。

――細かい部分が気になるというか。

書けば書くほど細かいところが気になってきまして。“~している”じゃなくて“してる”とかの“い抜き言葉”ってあるじゃないですか。正式には“い”を抜いてはいけないんですけど、ただ喋っているような口調で書かしてもらったんで、ついつい“い抜き言葉”になるんですよ。

最後に見直している時に、“めっちゃ抜けてるやん”ってなって、そこに全部“い”を追加させてもらいました。ただ、3箇所だけ“い”を抜いているところがあります。“い”を入れることによって、堅苦しい表現になるなって思ったところは、抜かしていただきました(笑)。

――特に印象的だった投稿はありますか?

男性から“事業所のボーイッシュな女性に好意を持っており、壁ドンをして欲しい”という旨の投稿があったのですが、そもそも“事業所って何?”って思ったんですよ。“壁ドンとかどうでもええから、まずは事業所の説明してくれや”っていうのがあって(笑)。これは、すごくインパクトのある投稿でしたね。

“いつか悩みはなくなる”という考え方

――今回の著書では、他人の悩みを解決されていましたが、ご自身が悩みにぶつかった時はどう解決していくんですか?

要は“諸行無常”なんですけど、いつか悩みはなくなってしまうというか、その悩み自体は実体がないんだって思うと“別にええか”って。例えば“ええ歳してヤンキーに絡まれた”っていう悲しいことが起こったとします。ヤンキーに許してもらえて家に帰る時って、ものすごく凹むと思うんですよ。

でも“1年後これで悩んでないしな”って思ったら楽になる感じですね。財布を失くした時も、“誰かが得したな”って思うというかね。仏教って人の喜びは自分の喜びとして、人の悩みは自分の悩みとして、人と人との隔たりをなくすのが教えだったりもするので。財布をなくした時に、この教えを知っていて良かったなと思いました。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

――哲夫さんが先輩に相談されることもあるんですか?

飲んでいる時に、お笑いの話になったりとか、自分の進路の話になったりとか、真面目な話をする先輩もいらっしゃいますね。

――具体的にどんな話をされるんですか?

(若手時代に)テンダラーの浜本さんに「この前連れてきた女の子どう思います?」って悩み相談した時に「あの子、肉を焼く時に、“私が率先してやってますよ”っていうアピールがすごいタイプやったから、あんまりオススメできんわ」ってアドバイスを受けて、付き合おうかと思っていたんですけど、やめときました。

――(笑)。逆に後輩から相談されることも多いんじゃないですか?

言うて来てくれる子もいますね。後輩のお母さんが余命宣告された時に、後輩から「是非一緒に飲ませてください」って連絡をいただいた時があって。「死を目の前にした時に、仏教のことを知っている哲夫さんと飲みたくなりまして……」って言われたんですよ。“あ〜俺もうそんな存在になったんか”と(笑)。ただ、お母さんが亡くなられる時に、アドバイスなんてようせえへんって言うてね。そういうふうに見てくれる後輩がいるのはありがたいです。

哲夫がやりたいのは「地獄のお寺めぐり」!?

――仏教と出会ってから哲夫さんが一番変わったのはどんなところですか?

スベっていても、自分だけがスベっているんじゃなくて、みんなでスベっているんだって思える。そこですかね。僕、だからこそ前に出られるんですよ。自分だけがスベると思うから、みんな前に出られないんですよ。MCも、お客さんも、スタッフも、みんなでスベったと思ったら何も怖くない。

――若手芸人さんにも教えられることかもしれませんね。

これは教えていることですね。ただ、「嫌われんで」とは言うてます。(そう考えることは)ただの甘えですから(笑)。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

――今後、仏教関連でやってみたいことはありますか?

師匠方から、ちょいちょい冗談で「お前、お寺は作らへんの?」って言うてくれはることがあるんですよ。「お寺とか作ったらあきませんから」って返すんですけどね、でもよう考えたら“お寺作るのオモロイな”と思って。僕は「お寺はテーマパークだ」って言うてるんですけど、地獄めぐりの出来るお寺はいいかなって思います。

子どもの教育は大事だなって思っていて、僕が小さい頃、“地獄絵図”を見させられたんですよ。「悪いことをしたらバチが当たって、こういうところにいかなアカンねんで」って言われたからこそ、さほど悪いことをできなかった面もあるので、めっちゃ子どもが怖がるお寺もええかなと(笑)。

――最後に、本作の見どころを教えてください。

帯に「決して回し読みはしないでください」って書いてあるんですけど、回し読みしたら売れませんから、ぜひ一人ひとりが買って僕に印税をお願いします!……って僕が書いた冗談みたいになっていますが、これは編集者の方が勝手に書いたものなので、これで決して笑わないでください(笑)。

取材・文:浜瀬将樹