相鉄・JR直通線に乗ってみた

(上)新宿に向かう相鉄線12000系電車、(下)直通線の路線概要図(相模鉄道ホームページから引用)

 【汐留鉄道倶楽部】横浜駅をターミナルに神奈川県央の住宅地へ路線を伸ばす相模鉄道が、直接東京の都心に乗り入れるという構想を聞いたのは15年ぐらい前だったと思う。昨年11月30日、その一部となる相鉄・JR直通線が開通した。新たな相互乗り入れである。

 開業した新線区間は、相鉄線の西谷から分岐して既存のJR貨物専用駅の羽沢(はざわ)に連絡する約2・7キロ。羽沢は旅客駅の羽沢横浜国大として整備され、新線開通と同時に開業した。同駅からは既存のJR貨物線に乗り入れて横須賀・新宿湘南ラインの武蔵小杉で合流、さらに同ラインで新宿に至るという新ルートである。

 これにより、相鉄線二俣川―新宿で比較すると、従来の横浜乗り換えで約1時間だったのが、乗り換えなしで約45分と15分も短縮された(料金はほぼ同じ)。

 開業後4カ月たった現在、新ルートにはまだ固有の名称、愛称がないので分かりにくい。これは試乗してみるほかないと、西谷から直通列車に乗ってみた。

 直通電車は日中1時間に2~3本と少ない。相鉄は直通用として新たに12000系電車を開発、投入したが、インパクトあるのはその色だ。雑誌などで紹介された画像では「黒?」に見えるが、実際見てみると光沢のある青みがかった黒という感じ。光線の具合で微妙に印象が変わる。

 相模鉄道によると「横浜ネイビーブルー」という色で「おしゃれだと女性にも評判いい」というが、一部鉄道ファンからは「風景の中では目立たず撮影が難しい」の声も聞かれる。私自身は「深みがあって、写真で見るより実物の方が断然魅力ある」と答えることにしている。

 10両編成の電車が2面4線に改築された西谷駅を出発すると、すぐにトンネルに入る。シールドトンネルをずんずん進んで約3分で今回唯一の新駅、羽沢横浜国大に到着だ。駅は巨大な貨物ターミナルの端に位置し、改札口を出るとターミナルの上を対岸まで横断できる歩道橋があって、貨物の交換作業がよく見えておもしろい。しかし駅前にほかに目立つものはない。横浜国大の西門まで徒歩15分というが、キャンパスは見えない。

(上)西谷方面から羽沢横浜国大に到着するJR東日本233系車両、(下)新駅の駅名標

 さて、ここからはJR線となり乗務員が交代する。停車時間が若干長くもったいない気もしたが、貨物線に入った電車は少し地上に出た後、すぐに地下へ潜る。暗闇のトンネルを疾走すること約5分で再び地上に顔を出すと、そこはJR京浜東北線の鶴見駅近くだった。

 東海道線と京浜急行線の間に挟まれた貨物線を北上、東海道線をまたいで武蔵小杉を目指す。やがて東海道新幹線と並走する高架に上ると武蔵小杉に到着だ。羽沢横浜国大からノンストップ、1駅だけで17分はすごい。この先は新宿まで新宿湘南ラインに乗り入れて走る。この先埼京線に入って川越まで行くことも可能だが、現在のダイヤでは相鉄の車両は新宿止まりとなっている。

 相鉄の都心直通線はもうひとつ建設中だ。羽沢横浜国大から分岐し新横浜を通って日吉から東急東横線に乗り入れる約10キロの「相鉄・東急直通線」が、2022年度下期の開業を目指している。現在のJR直通だけでは本数も少なく、まだ人の流れがそう大きくは変わっていないが、東急ともつながれば新幹線へのアクセスも便利になり、変化が加速しそうだ。

 ただ、横浜市にとっては試練にもなるだろう。東京都心へのアクセス向上は、人や物が東京に吸い上げられるストロー効果も生む両刃の剣だからだ。直通線をめぐる今後の話題から目を離せない。

 ☆共同通信・篠原啓一

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

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