川崎市臨海部や東京都心の上空を通過する羽田空港の新たなル-トで3日、初めての飛行が確認された。3月29日の運用後、使用条件の南風が吹かず、飛行が見送られていた。新型コロナウイルスの影響で減便が続く状況にもかかわらず、午後3~5時台に計36便が川崎市内を低空で飛び去り、騒音や部品落下を危惧する地元住民らは眉をひそめた。
「うわ、でっか!」「すごく近いね」─。
同市川崎区の殿町地区。多摩川沿いの公園で、友達と夢中になって遊んでいた子どもが思わず足を止め、空を見上げた。対岸からは、ごう音を響かせて巨大な旅客機が迫る。機影は、子どもたちの真上を次から次へと飛んでいった。
川崎上空を飛ぶル-トは、南風が吹いた際にB滑走路から離陸するケ-スで使用される。午後3~7時のうち3時間程度、1時間当たり20便ほどのペ-スを予定。運用開始後は北風が続いたため、川崎や都心上空は飛んでいなかった。
ウイルス禍を受け、羽田の国際線は8割が欠航している。それでも、3日は午後3時10分ごろに最初の機体が川崎上空を通過。早いときには1、2分後に次の便が姿を見せ、高度約300メートルで住宅街やコンビナ-トの真上を飛び去った。
公園で犬の散歩をしていた近くに住む無職男性(85)は「こんなにうるさいとは。できればやめてほしいが、もう始まってしまったので我慢するしかないのかな」と肩を落とした。
新飛行ル-トを巡っては、地域住民が騒音と部品落下の危険性を指摘するなど反対の声が根強い。2月に行われた実機飛行確認では、殿町地区が電車のガ-ド下とほぼ同等の最大94デシベルを記録。都内を中心とした全19カ所の騒音測定地点で最も高い数値だった。
新ル-トの反対運動を続けている市民団体の橘孝さん(70)は「欠航が多くてもかなりの数が飛んでいて驚いた。今後、通常通りの便数になれば、地域への騒音被害はどれほどひどくなるだろうか」と不安を口にした。