IDC、ITインフラのモダナイゼーションに対する最大の阻害要因は「予算の制約」であると発表

IDC Japan株式会社は、国内企業および団体の経営層、事業部門長、部課長を対象として2020年1月にアンケート調査を実施し、900の組織から得られた回答をもとに「2020年 国内企業のエンタープライズインフラのシステムタイプ別トレンド分析」を発表した。この調査によると、ITインフラのモダナイゼーションに対する最大の阻害要因としては「予算の制約」が突出していたが、次いで「ITスタッフの過負荷/不足」「最新テクノロジーに対するITスタッフの教育/知識不足」を指摘する回答も多く、両者を合計すると4割弱を占め、「予算の制約」を上回った。ITスタッフの過負荷とスキル陳腐化が大きな阻害要因として顕在化していると考えられる。これらの状況を反映してか、ITインフラの選定基準では「全般的な運用コストの抑制」「スタッフの生産性向上」「維持管理の効率化」といった、運用コスト抑制/生産性向上/効率化といった点が重視されていた。また、最もミッションクリティカルな基幹業務システムの導入形態では、現状ではオンプレミスが8割弱を占めるが、次期更新では 5割程度に低下している。メインフレームやビジネスサーバーなどのベンダー独自技術のサーバー採用も、次期更新では4割弱から 2割強に低下している。しかし、昨年の調査(2019年2月実施)との比較では、メインフレームやビジネスサーバーをオンプレミスで現在採用しているとの回答が2.3ポイント上昇し、次期更新においては4.0ポイント上昇した。

基幹業務システムのITインフラ導入状況と次期更新での採用意向今回実施したアンケート調査では、ハイブリッドクラウドの活用目的なども質問している。回答を見ると上位4項目は「クラウドをアプリケーションごとに使い分け」「開発/テスト/ステージング用環境と本番環境とでの使い分け」といった適材適所でのクラウドの使い分けと、「IaaSへの移行(オンプレミスからの移行)」「パブリッククラウドからプライベートクラウドへの移行(オンプレミスへの移行過程)」といった配備モデル間での双方向の移行だった。DXが「デジタル」重視から「トランスフォーメーション」重視へと向かう局面において、DXを支えるITインフラは、常にかつ継続的に最新のテクノロジーやサービスを活用できる環境を提供していく必要がある。つまり、一度そのような環境を整えれば完了するということではなく、将来登場する新たなテクノロジーやサービスを柔軟かつ迅速に取り入れつつ、ビジネスにおける変化に即応していくことが求められている。IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャのグループマネージャーである福冨 里志氏は「クラウドの適材適所によるハイブリッドクラウドの運用管理などによるITスタッフの作業負荷の高まりや、IT技術に対する知識の陳腐化などといった課題が、ITインフラのモダナイゼーションを阻害する要因になっている可能性がある」と述べている。続けて「ITインフラベンダーは、AIや機械学習を活用したITインフラの運用管理ソリューションの提供や導入効果の明示を通して、顧客におけるITインフラのモダナイゼーションに対する阻害要因を排除すべく支援すべきである」と述べた。

© 株式会社アールジーン