「やっぱり肩は消耗品」 NPB通算180勝の斎藤雅樹氏が指導者に伝えたいこと

通算180勝を誇り“平成の大エース”と言われた斎藤雅樹氏【写真:荒川祐史】

「成長が止まる前に投げ過ぎるのは良くない、ある程度制限を」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今春の選抜高校野球は開催中止となった。もし開催されていれば、この大会から1人の投手の投球数が1週間で500球に達したら、それ以上投げることを認めない「投球制限」が初めて適用される予定だった。高校野球だけではなく、リトルリーグやポニーリーグ、ボーイズリーグなどでも積極的に取り入れている投球制限については、さまざまな声が飛び交っているが、「やっぱり肩は消耗品」と話すのは、元巨人で“平成の大エース”として知られる斎藤雅樹氏だ。

 斎藤氏は小学5年生でリトルリーグに入って以来、2001年を限りに36歳で引退するまで、現役選手として歩んだ。野手と兼務することもあったが、主に投手としてキャリアを全う。引退後は巨人の1、2軍投手コーチ、2軍監督として若手選手の指導にも当たった。プロとして19年を過ごしたが、1997年から肩に違和感を覚えはじめ、そこからは慢性的な痛みを抱えながらの登板だったという。

 史上4人しかいない沢村賞3度の名投手は、投球制限など子どもたちの体を守ろうという動きをどう見るのか。

「現役時代にちょっと肩が痛くなって病院に行った時、先生に『肩はボールを投げるためにあるんじゃないよ』って言われたんですよ。『あ、そうなんだ』と(笑)。そりゃそうですよね。でも、そう考えると、やっぱり酷使するのは良くないんだと思いました。だから、中には投げられる子もいるだろうけど、特に成長が止まる前に投げすぎるのは良くないと思いますよね。その頃はある程度制限してあげた方がいい。大人になってからは自分の野球を上手くするためにも、投げ込まなければいけない時は絶対にあります。でも、それは体が出来上がってからでいいと思います」

学生時代に肩を酷使した経験はなし「大きな故障もなくプロ野球に入れた」

 自身の学生時代を振り返ると、実はそこまで投げ込みすぎた思い出はないという。

「僕はそんなに酷使していないんですよ。ただ、高校生の時は最後、4連投しました。でも、それくらいだったので大きな故障もなくプロ野球には入れたんだと思います。今はそれこそ小学生の頃から、特に体が大きい子はガンガン投げてしまうけど、それはあまり良くないのかなと。試合に勝ちたいと上手い子に頼ってしまうんだろうけど、そこは大人が抑えてあげた方がいい。僕はリーグなり協会がしっかりルールを作ってあげた方が、監督さんも楽だと思います。全部を監督さんの責任にするのもかわいそうなので」

 2008年から2年間は巨人の2軍投手コーチ、2016年から17年途中まで2軍監督を務めた。プロ入りからまもない若手選手が怪我で離脱する姿を見るたびに、心を痛めていた。

「プロに入ってきてから、すぐに故障してしまうのは辛いですよね。そういう姿を2軍で見ていたから。だから、小さい子たちを大事にしてあげてほしいなと思います。故障をしたら早く治すように言うしかなくなってしまうし、故障によって今までできていたパフォーマンスができなくなることもある。痛みをかばっていると変な癖がついて、それが元に戻らないということはいくらでもあるので。だから、故障につながらないような練習をしてほしいと思いますね」

 1989年には30試合に先発し、21試合で完投、そのうち7試合を完封した斎藤氏。自身がプロ19年のキャリアを送れた経験を基に、今、プロ野球選手を目標とする子どもたちが故障なく夢を叶えることを願っている。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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