窮余の策?

 十五夜を過ぎると月の出はだんだん遅くなり、十七夜は立って待つうちに月が出るので「立待月(たちまちづき)」という。江戸の川柳に〈はやり風十七屋(じゅうしちや)からひきはじめ〉とある。十七屋とは飛脚のことで、十七夜はたちまち月、十七屋は「たちまち着く」というしゃれらしい▲郵便物をたちまち運ぶ飛脚たちは、はやりの風邪も時に運んだのだろう。ある場所から全く別の所へ、すぐさま疫病が広がる怖さを表すようでもある▲新型ウイルス感染は止めどないが、人の動きは止まり、経済の動きも止まっている。中小企業に支援をするのも、所得が減った世帯に現金を給付するのも、急を要するに違いない▲全ての世帯に及ぶ策もある。再利用できる布マスクが順次、郵送されるという。20回ほど洗えるが「4人家族でも2枚?」「郵送の手間と費用をほかに回せばいいのに」と首をかしげる向きもある▲マスクの品薄状態が続く。医療現場に不織布(ふしょくふ)の使い捨てマスクを回すには仕方ないともされるが、目の粗い布マスクの効果はさて、どれほどだろう▲たちまち広がる感染には、打てる手をたちどころに打つしかないが、妙案のない「窮余の策」という言葉ばかりが頭に浮かぶ。そもそも小まめな性分ではないにしても、日ごと布マスクを洗っては乾かす自分がどうも想像できずにいる。(徹)

 


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