世界や地域に役立ちたい 絶滅危惧種保護へ研究 長崎南高のグループ 「SDGs 探求 AWARDS 2019」中高生部門で全国2位

八幡さん(後列左端)ら土橋教諭の研究グループのメンバー=長崎市上小島町4丁目、長崎南高

 長崎県立長崎南高の生徒が取り組んできた、植物のクローンを簡易な方法で作り絶滅危惧種を保護する研究が、「SDGs 探求 AWARDS 2019」(未来教育推進機構主催)の中高生部門で全国2位となる優秀賞を獲得した。世界の役に立ちたい、地域に貢献したいという思いで、生徒らは日々研究に励んでいる。

 同賞は、「持続可能な開発目標」(SDGs)達成のために、若者が自分たちにできる取り組みをポスターや論文、映像などで表現し、着眼点や具体性などを総合的に評価。中高生部門、学生部門の両部門に計945件の応募があった。同校からは受賞したクローン研究のほか、途上国での野菜工場の可能性や、薬草の健康効果、シジミによる水質改善、食材の摂取による体温変化といった研究をしている5チームがエントリーした。
 受賞した研究は、2年の八幡紗矢さん(17)を中心にした「簡易組織培養法による絶滅危惧種の救出活動」。身近な材料で組織培養と呼ばれる植物のクローンを作る方法を開発し、絶滅危惧種「ナガサキギボウシ」のクローン苗作成に成功した。
 文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校の同校では、生徒は授業の一環でそれぞれの問題意識に基づいて、課題解決のための研究活動に取り組んでいる。同研究は土橋敬一教諭の指導の下、2017年から生徒が代々引き継いで進めてきた。
 初めは入手が簡単なキクで実験を繰り返し、段ボールや100円ショップの除菌スプレーで作業に必要な無菌状態を実現するなど、高校の実験室でもできる方法を確立。八幡さんがナガサキギボウシでもチャレンジして成功し、現在は国内外の高校生らに対して研究を発信している。
 この研究で、18年のSSH全国大会では、生物部門2位となる奨励賞を受賞。19年11月にシンガポールであったアジア最大級の中高生の学会「サイエンスキャッスル」ではトップ5に入った。今回の受賞では、「学校が長年取り組んできたことを継続して行い、マイナーチェンジしながらより良い研究に取り組んだことは本当に素晴らしい」と評価を受けている。
 初期研究メンバーの岡山大医学部2年、前浜かんなさん(20)は「日々少しずつ変化するキクを観察し、加える試料やさまざまな条件などによる培養への影響や結果から、法則を導き出した。奥深い研究を続ける楽しさや達成感を知った」と振り返る。OBの関西学院大理工学部1年、嶋崎涼介さん(19)は「研究で感じた楽しさや悔しさ、喜びがつまった思い出が今、糧となっている。後輩たちが研究を引き継いでくれてうれしい。多くの場で受賞しているのは、研究を発展させ、正しく人に伝えられているからだと思う」と話す。
 八幡さんは受賞に、「この研究を知ってもらう機会が増えてうれしい。絶滅危惧種の保護や野菜の良質な苗の生産など、この研究は有効だと思う。誰にでもできるというのがポイント。もっと役立てられるよう、分かりやすく伝えていきたい」と話している。

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