中日ドアラのYouTubeバズらせ戦略とは? チャンネル登録者“最下位”からの逆襲劇

中日のマスコット・ドアラ【写真:荒川祐史】

中日のマスコット・ドアラがYouTuberとして人気の兆しを見せる

 中日のマスコット・ドアラが、YouTuberとして人気の兆しを見せている。球団の公式チャンネルで配信する動画シリーズ「マスコットチャンネル」。春季キャンプから本格的に投稿を始め、中には20万回再生を数えた動画も。他球団と比べた公式チャンネルの登録者数でも“最下位”から脱出し、関係者は「チームと一緒にAクラス入りを」と意気込んでいる。

 話さない? いや、話せないドアラが、閑散としたドーム内をてくてく歩く。選手たちがグラウンドで試合前練習に汗を流す中、観客のいないスタンドにポツンと座った背中を映した“エモい”シーンも。「ナゴヤドーム初! 無観客試合! でも…ドアラがいる!」と題した動画が投稿されたのが3月1日。選手らのメッセージ動画の再生回数が1万回前後なのに対し、あれよと言う間に20万回を突破した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ナゴヤドームでのオープン戦が無観客で開催された日。少しでもファンに現場感を届けようとカメラを回したというが、球団イベント推進部の村山順治さんは「ここまでバズるとは」と驚く。動画では、関係者用のエレベーターの中なども映されており、普段見ることのできないドームの様子を知ることができる。コメント欄には、エレベーターのアナウンス音「ドアが閉まります」が、「ドアラ閉まります」に聞こえたと面白がる声も目立った。

 7年連続Bクラスにあえぐチームと同様に、公式チャンネルもこれまで地の底を這っていた。村山さんによると、昨年時点での登録者数は4500人余り。ほとんど稼働していなかった広島を除き、各球団の公式チャンネルと比べてもダントツの最下位だった。動画コンテンツがより重要になってくる令和の時代。適役なのがドアラだった。シュールな動きと発言には定評があり、「ネットとの親和性もある」(村山さん)。昨オフの契約更改でYouTuberデビューを宣言し、春季キャンプから本格的な投稿を始めた。

ドアラ効果で登録者は一気に2万8500人にまで到達「こんな時だからこそ、少しでも楽しい気持ちに」

「ガチガチの企画というより、ドキュメンタリーというか、自然体の姿を撮りたいなと思っています」。そう村山さんはコンセプトを説明する。動画には、撮影者がドアラの姿に思わずクスリと笑う声も入るなど、適度な“ユルさ”が心地いい。「イメージとしてはネコ動画ですかね。寝る前にちょっと見てほっこりしてもらえれば」。当初、登録者数の男女比は7:3だったが、現在はきれいに逆転したという。

 懸案だった登録者数は、ドアラ効果で一気に2万8500人にまで到達(4月4日時点)。ついにオリックスの2万1500人を抜いた。年内目標に設定していた3万人をすでに達成しそうな勢いだ。トップの顔ぶれを見ると、巨人が14万7000人、DeNAが10万1000人、日本ハムが9万3800人と上には上がいるが、村山さんは「まずは公式チャンネルだけでもAクラス入りして、チームの追い風になれば」と力を込める。

 マスコットチャンネルでは、ドアラ以外の球団マスコット「シャオロン」と「パオロン」も登場。この2体の知名度アップも密かに狙っている。現状、ドアラが一人勝ちの状況だが、その動きから溢れ出る“人間味”から泣いてしまうちびっ子もいるとか。その点、シャオロンとパオロンは子どもウケがよく、バズるチャンスをうかがおうと企画を練っている。

 新型コロナに対する危機感は増し、広がる外出自粛ムード。「こんな時だからこそ、少しでも楽しい気持ちになっていただけるように、ドアラさんの力を借りて動画を投稿できたら」と村山さん。プロ野球開幕を待ちわびているファンに、思いも一緒に届けたい。(小西亮 / Ryo Konishi)

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